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雑多  作者: 莉猫。
~雑多の章~
89/170

四月莫迦


顔を洗う暇なく

カレンダーに向かい

背伸びして

朝食を作る母に言った


「今日、幼稚園休みだよ」


「えっ、そうだったの」


母が首を傾げると

口の端が自然に上がって

笑みが溢れそうになり

ぎゅっと唇を結んだ


すると母は火を止めて

私の目の高さに座り込むと

幸せそうに微笑み

柔和な唇を開いた


「嘘でした、今日エイプリルフールだよ」


母が言うよりも早く

そう口走ると

母は「な~んだ」と言って

私の頭をポンポンと撫でた



あれから何年か経った頃

私は高校生になり

母は四十代になった

待ちに待ったエイプリルフール


今年はどんな嘘を付こう








今夜は毛布をったくって

羽毛毛布だけで寝た

枕の下に手を入れて

暗闇の中 携帯をいじる


白い光に当てられて

突如 鈍色に澱んだ視界

目を擦ると携帯の画面は暗くなって

自分の顔が反射した


鼻の頭が赤くなっている

蚊に刺されたんだ

フラフラになりながらも

蚊取線香を焚いた


眠くなって敷き布団に

のめり込み

羽毛布団を肩まで被ると足が出た

冬が恋しくなってくる


キシリトールに溺れたような

肌寒い あの初冬に戻りたい

線香の匂いを幽かに感じ

虫の音と共に眠りについた


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