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雑多  作者: 莉猫。
~雑多の章~
88/170

おはよう、おめでとう

解説アリです


大海を不自由なく漂う

ここには何も不安はない

ここには何も危険はない


友の残響と共に

目覚ましの電子音が鳴った

淡い春の朝日が

ブラインダー付きの窓に反射して

鋭く瞳に映る


大海のてっぺんに穴が開いて

苦しみもがいて出てきたよう

もっと海に浸かっていたいと思いながら

鉛のような固い体を動かした


目覚ましを止めると

ほっとして再び布団を被る

海は大波を起こして深淵へと

いざな


静かに目を閉じれば夢の中

深い海の底へ沈んでいく

海の中から太陽の差す

赤い海面をじっと眺めると


ピピピピピピピピ


また電子音が鳴った

スイッチを切っていなかったことに

気が付いた


さっきまでの海は何処にもない

枕元に置いたスマートフォンに触れると

今日の日にちが現れた


好きだった人の誕生日だった













詩は色んな解釈がある方が豊かで楽しいのですが

この詩は個人的に出来た背景を知ってほしかったので解説を付けました。


この詩は私が好きだった人の誕生日と二度寝しそうになった事を描いた詩です。

最初にある大海は羊水のことで好きだった人が帝王切開で生まれたことと眠っている時の心地好さの二つをかけたものです。

羊水の中は安全で不安もなく危険もありません。それは睡眠も同じではないかという考えから生まれました。

友の残響は夢で見ていたもので、目覚ましを止める→眠い→二度寝しそうになる→目覚ましに助けられるという私の一連の動作と

羊水に穴が開く→息が出来なくなる→意識が朦朧としてくる→医師により助けられるという好きだった人が生まれた日の動作を描いています。これ以外にも例えば鋭く瞳に映る朝日はメスと好きだった人の母の瞳、赤い海面は互いの瞼の裏など工夫しています。

好きだった人との恋は片想いで失恋という悲しいものだったのですが、彼が帝王切開だったと友人から聞いた時、生まれてきてくれてありがとうと思えました。







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