62/170
売れない絵描きが吟った
瞳に映る様々な物を
描くことは
出来るだろうか
遠近法や配色は
それなりの技術があれば出来る
しかしそこにあるという
雰囲気や空気感は
感じることが出来ない
彼女の絵は死んでいる
薄いカーテン越しに風景を
眺めているような絵
自信を無くし
好きな気持ちもなくなった
ただの紙くず
思ったものと違っていたから
彼女は紙を破り捨てた
心機一転して
また絵を描いてみた
色使いと透明感のある
冷たい絵が出来た
季節感や太陽の光が止まっていて
どうしたら良いのだろう
賑やかな商店街の中にいる
人間達は生きていない
植物を見たことのない彼女に
植物という感動は分からない
そりゃそうだ
好きな気持ちも無くなった
暗闇で絵を描くことは
出来やしないのだから




