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諸行無常
私が産まれるずっと前
戦争がありました
硝子瓶がくっついて冷え
時計は十一時二分で
止まっていました
焼け野原に
死骸が横たわって
腐乱した匂いが
鼻を突いたそうです
青空の下であったこと
今やそれを物語るものは
当時の写真や伝聞のみです
貴方がこの世にいたことも
歴史の中のほんの小さな一つ限りです
__おごれる人も久しからずひとえに風の前の塵に同じ
私と同じ種の人間が
同じように時を過ごし
いつしか死んでいきました
私はそれに諸行無常の美しさを感じます
確かに存在していたものの
温もりを感じることが出来るからです
この空気も毎朝挨拶する太陽も
万人が見ているものなのですね、
されど何か心苦しい
結局 欲しいのは貴方なんです
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