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山
霧のある山中を
ひたすら歩く
目的地は
方位磁石が示す方向
共に歩いていた人は
次々と別の道へ歩いていく
スタートは同じだったのに
倒木や河に大嵐
道は険しくなっていく
雨宿りする場所もなく
闇雲に獣道を歩いた
一人の青年と出会った
青年は私に雨宿りの場所を教え
楽しい話を沢山してくれた
それだけが至福の時間で
二人で森を散策した
とても楽しかったのに
青年の姿はもうない
山はまだ続いている
いままで通り登っても
曾ての幸福は得られなかった
何処かで道を間違えたか
背が高くなるごとに
呻くように聳える木たち
ここになど着くはずがない
周りを見回してみても何も無い
まだまだ道は続く
私が行きたかった所は何処だろう
呻くように聳える木
ずっと歩いているはずなのに
ここまで来たならば
登るべきはずなのに
霧は少しずつ濃くなり
私は暫しそれに耽る
自由人がふらふらと
歩いていたこともあった
下山する人間も
座り込んでいる人間も見た
ああいう人にはなりたくない
意地でも登りたい
青年がニコッと笑っている気がした




