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過信
頂上目指して来た
一切下を見なかった
下なんて見たくもなかった
真下にあるのは深淵の海
苦しみと自己嫌悪の地獄
そんな苦しみなんて
味わいたくないと思ってた
上に行けば必ず
何かあるだろうと信じた
いつ壊れるか分からない
ガラス張りの橋の上を
ゆっくり、ゆっくり、歩き続けた
赤い靴を履いた足元が
くるくる廻って狂い回る
海が此方を向いて
手招きして呼び寄せている
それでも負けじと橋を渡った
頂上はまだまだ遠かった
上に行けば絶対に
未来が見えると思ってた
ガラス張りの綱渡り
海がやめてもいいよと嗤う
意地っ張りな私は今日も
頂上を目指してる
此処が地獄だと知らず




