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夏の雲
夏の雲は綿菓子のよう
太陽のよく当たった白い部分に
自らの唇を押し当てたい
食べてみたらどんな味がする
覆い被さってきそうな入道雲
きっと甘いのだろう
空を渡ってきた
異国の匂いがするだろう
楽しそうな子ども達の
笑い声が聞こえるだろう
階段の踊り場から見た
巨大な雲の一部分
私はあの中に飛び込もうと思った
あんなに触れそうなのに
空を切って消えてしまうのは
神様のいたずらか
思いきり抱きしめて
顔を埋め かじることが出来たら
どんなに幸福か
望むものは
手の届かない所にある
届かない所にいて触れられない
確かにそこにあるはずなのに
何処にもない
いじらしくて貪欲な
そんな雲が好きなのだ




