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雑多  作者: 莉猫。
~多彩の章~
137/170

ネイルの入った標本箱

大掃除で

過去の先輩の作品を見た



授業作品で作った

プレゼントカードや啓発ポスター

先生を模した紙粘土の人形は

誕生日に貰ったそう



なのに先生はそんな先輩方との思い出を

手に取るなりすぐごみ袋に捨てた



もう少し見てからにしませんか


堪らず私が声を掛けると

先生はそうだなと笑い

写真を眺め

ごみ袋の中の要らない額縁に

そっと写真を置いた



後輩と同級生とで

その写真を覗き込むと

お下げ髪の大人っぽい先輩方が

先生を囲むようにして

ピースサインで映っていた




先生ニヤけてるねと

私達は笑い合ったが

内心 先生に疑問を感じていた





それぞれの分担場所に戻り

先輩方が作ったものを

会話も交えて片付けていると

埃だらけの標本箱が出てきた



中身は何だろう



埃を払い箱を開けると

当時の空気が漏れて

窓の外へ消えていった


一瞬の出来事だった




灰色の厚紙を取ると

ピンクと白の下地に銀のビーズ

シルエットが装飾された

百花斉放のネイルが姿を現した




先生が言うにその人は

ネイリストになった

六年前の先輩




日頃の会話ではある先輩が

ネイリストに就職したとしか

聞かされていなかったけれど

作品を見て漸く分かった





夢を追い続けていた頃の青い風は

あの人の元へやっと届いたのだろう


叶えた直後に見失った

課程というものが

たった今

時を越えて届いたのだ





先生はその先輩のネイルを

じっと見つめて

納得したように頷き 言った



お前らもこういうの作っていいんだぞ



先生はいつもの

冗談めいた口調で笑った








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