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還元
心にぽっかり穴が開いたまま
不馴れな都会の街を
目移りして歩いている
泣きじゃくっている者が
陽の当たらない場所にいる
こんなに暑い季節なのに
ボロボロの長袖を着ていた
どんなに泣いても
世間は知らんぷり
私の気持ちなんて
汲み取ってくれない
例え命の灯火が一つ消えても
この街は何一つ変わらない
嘲笑われている人を見たって
人は怖がって何もしない
潰す人が一人できれば
皆で潰しにかかるだろう
盲点を突けば潰される人は
勝手に壊れていくだろう
喉元から朽ちて
物影に倒れ込んで
俯いた目は虚ろ
ただひたすらに呪われたような
息を吐きそして腐敗していく
激しい拍動に疲れ
一気に裂けた心臓は
吐瀉のように塊を撒き散らす
廃れて生きているのか
死んでいるのかも
分からなくなったそれは
鼻を曲げたくなるような異臭を放った
頭を垂れて 蛆が湧く
蜈蚣や蚯蚓が集って
母から貰った皮膚は
食い荒らされていった
やがてその者がいた場所には
複数の花が骨に巻き付き
静かに 静かに
息づいた




