15話 彼の告白の理由が私でごめんなさい!
ただいまン(-o-)/
キーキー……
ブランコが揺れる。
夕日に染まる公園はどこか懐かしい。
どこからか吹く風は俺をセンチメンタルな気持ちにさせる。
こんな風に思うのはきっと昔のことでも思い出していないと今のこの状況から逃げられないのだ。
精神的に。
あの日から変わってしまった僕らはどこへ向かってるのかなぁ?
俺は虚ろな目でそんなどうでもいいポエムをブランコに揺られながら考えていた。
いわゆる現実逃避、自己防衛?
なんて虚しいものだ。
子供たちが鬼から逃げ回るすぐそばで俺は一人現実から逃げ回る。
どうせこの気持ち理解出来る仲間なんて早々いないだろう。
キーキー……
「久しぶりにやるブランコというのは意外と楽しいものね」
そうつぶやく儚げな少女は虚ろな瞳でブランコに揺られている。
俺と同じような目で。
あ、隣にいたわ、仲間。
「ハハ、確かに!」
「「正人お前は黙れ」」
おっと、意識がトリップしていたみたいだ。
改めましてこんにちは。城之内圭です。
今僕らがなぜこんな所にいるのか?そう疑問に思った人も多いと思う。
しかし、これにそんな深い理由は無い。
簡単に説明すれば、先生にバレかけて逃げ出して来たって感じなのだ。
「さあ、そろそろ話してもらおうか」
「なにをだい?」
「何って、そりゃお前の告白についてだよ!」
これから語られるのは世界史上最もどうでもよくて、俺の人生史上最も過酷な正人の告白、その全貌である。
久々の話はここから始まるのだ。
「で、正人」
「ん?なんだい?」
「何で俺に告白した?何で俺?てかてかほんとに俺に?何で……」
「圭くん、落ち着いて」
少々先ほどから意識がトリップしがちである。
しかしそれも無理がないほどに衝撃的でキツい出来事であったのだ。
だからこそ、この地獄を解明しなくてはならない。
そしていち早くこの悪魔を正常化させなくては俺の心はもたない。
俺はそう確信している。
「正人、何で急にこんなことに?」
正人はこの質問に対してこちらを振り向きながら清々しくドギツイ笑顔でこちらを見て優しく発言する。
「圭、僕は君が一番好きなんだって気がついただけだよ」
なんだろう殴りたい。
何故だろうか今日1日こいつの気持ち悪さが数十倍になっている気がする。
ここで一つことわっておくが俺自身ジェンダーについてあまり気にする方ではない。男が男を好きだろうと嫌悪するような人間ではないのだ。
しかし
それが自分と何年も共にいて、そいつの好きな人について色々考えて、告白しに行ったところまで見届けた友がだったとき。
第一感、「こいつ狂ったな」と思わざるおえないのだ。
彼の異状思える愛が自分に向いた、そうわかった時、吐き気を催すような純粋な気持ちは俺を苦しめるのだ。
要はキモいのだ。
「これまで僕を支えてくれたのは他ならない君だよ。君なんだよ圭」
「やめてキモい」
「圭くん、まだ逃げちゃダメ」
脱兎のごとく一言残しこの場を去ろうとしたが茜さんがそれを止める。
ホントもうね、逃げ出したい。
全部放り出して、ホーリーダンスしたい。
そんなことを考えていると遠い目をした正人が言葉を発する。
もう呼吸もやめて欲しい。
「でも、」
そう言うと正人は少し嬉しそうに話し出した。
やばい吐き気が。
「僕がほんとの気持ちに気付けたのは茜先輩のおかげなんだ」
「ん?」
「あの日から僕は……」
正人は物憂げに夕日を見つめて、意味深な発言を匂わせる。
その言い方にイラっとしつつもその発言の重要性が気になってしまった。
「おい正人あの日って……」
「そうだよ、僕が茜先輩に告白したつい数日前さ」
色々と言いたいこともあるが、ひとまず正人の発言を聞く限り嫌な予感しかしない。
なにかはわからないが絶対ヤバイ。
心なしか先ほどから隣にいる茜さんの額にはじんわりと汗が浮かぶ。
「今から全部話すよ。あの日、僕と茜先輩がどんなこと話してたか」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
その日も窓からはかなり赤々とした夕日が差し込んでいたと思う。
僕はあの日あの場所でこの気持ちに決着をつけるため、親友に背中を押され憧れのあの人の元まで走った。
帰り途中から戻ってきた学校は思う程人もいず、帰りがけの生徒達を横目に気配のない校舎を目指した。
僕は夢中になって至る所を探し回った。
しかしどれほど見てもあの人は見当たらない。
諦めかけた僕は何故か惹き付けられるように屋上へと足を運んでいた。
重い扉を開けると赤々とした夕日とあの人はそこにいた。
「茜先輩!!」
僕は思わず大きな声で呼んでしまった。
「正人君?」
茜先輩は長い黒髪をなびかせ夕陽に背を向けた。
その紅色の瞳で僕を見るために。
思えば出会った日も先輩は僕に振り返りその美しい黒髪と紅い瞳を僕に向けてくれていた。
あの日、あの時から僕は……
「茜先輩……あなたに伝えたいことがある」
僕は大きく深呼吸をする。その姿を見た茜先輩も真剣な目つきへと変わる。
これから僕は伝えるのだ。
ありたっけの気持ちを!
「僕はずっとあなたに憧れてた。
この学校に入学したあの日から……ずっと……
だから色んなことをしてきた。
あなたと対等になりたくて。
そして、やっとあなたと友達になれた。」
「……そうね、私たちは友達……よね」
「茜先輩から『友達になって』って言われたとき凄く驚いたけど、
凄くうれしかった。」
「……」
「でも、ダメなんだ。
わがままだって分かってる。でも僕は……
僕はあなたと、もっと深い関係でいたい。」
「!!……それって……」
胸の高鳴りは止まらない、体も震えて仕方ない、
でも今なら言える気がする。
茜色した太陽のようなあなたに、こんなダメな奴だけど……
僕は……あなたが……
「僕はあなたが好きです。
僕と付き合ってくだ……『ごめんなさい』
いや、食い気味!?」
そう言うと茜先輩は体を直角に曲げ、勢いよくこうべを垂れた。
おい、待てい
振られたよ、圭!?
なんてスピード感のある振られ方、僕でなきゃ見逃しちゃうね。先程の思わせぶりな表情からここまで食い気味な振り方、まるでコント。
ここまでのフラグをすべて無視した掟破りの一撃。
そのためか今現在の僕への精神的ダメージは一時的に緩和されている。
本来悲しいはずの状況も1周するとここまでハイになれるのかと人間の感情に対する興味が湧くレベルだ。
寧ろもっと言えば、振られた理由も気になってしょうがない。
僕は意を決した風に尋ねる。
「先輩、理由……聞いてもいいですか?」
「その前に正人君」
「は、はい!」
「君、この告白。あなたひとりで思い立って行ったことなの?」
「え……、は、恥ずかしながら圭に相談して……」
そう、この告白は圭が僕の背中を押して実現したものであった。
それを今告白した本人に答えるというのは中々にカオスな状況である。
「やはりね……」
先輩は少し俯き気味にそんな事を言う。
急な展開でつい答えてしまっているが、なぜそんなこと気にするのだろうか?
(もしや、茜先輩は人に頼ってでしか動けなかった僕に嫌気がさしてしまったのだろうか?
確かに圭に頼らないとここに来ることさえできなかった。そんな女々しい奴なんて先輩とつりあわないしな。
……なんてこと考えてるような顔ね」
「……え?」
「違うわよ。大体君の女々しさなんて今に始まったことじゃないしね。」
「ひどくないですか!?」
「ひどいもなにも、いつも肝心な時にヘタレるのがあなたの特性じゃないの」
「いや、まぁ確かによくそう言われますが……」
「はぁ……この程度の認識だから鈍感ヘタレ正人君なのよ」
「いつの間にそんな呼ばれ方を!?」
「そんなことはどうでもいいの。
私が君を振ったのはもっと別の理由。」
「別の理由?」
そう言う茜先輩は少し頬を紅潮させ、内股で少しモジモジして下を向いた。その様はいかにも乙女チックな雰囲気を醸し出していた。
確認しておくが茜先輩はもともとこんな感じの人ではない。
クールビューティーという言葉が最も似合う女性だった。
勉強が少し苦手なこととちょっと抜けてるところもあるけど、基本は寡黙で美しい高嶺の花なのだ。
しかしどうだろう。
今目の前にいる茜先輩はただの恋する乙女のようだ。
僕だって今日までこんな先輩見たことなかった。
「別の理由って……」
意を決して尋ねる。
「す、好きな人がいるの!!」
(可愛い。)
あかん呼吸止まってた。
流石茜先輩、あまりの可愛さにもう一回告白しそうになっていた。
だが、先輩には好きな人がいる。
「でも、なんか分かる気がします。」
「え?」
「先輩の好きな人」
少しシリアスな空気が戻る。
「先輩、なんか最近一緒にいても上の空だったし、僕よりもその先を見てる感じかな?
でも圭に話しても『やっとお前を意識し始めたんだよっ』って言うばかりで少し調子に乗ったかな
結果このザマって訳ですね」
「待って」
急な待ったがかかる。
「城之内くんそんな風に思ってるの?」
「え、あ、はい」
唐突な空気破壊の質問につい、返事をしてしまう。
今のシリアス展開で気になるのがそこなのかと考えものである。
と、考えるのは最近少し圭に毒され過ぎな気がする。
(ギャルゲーやめよ)
すると、先輩は急に膝をついた。そして、
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
茜先輩から出たとは思えない声のため息がこの屋上に響きわたる。
「いやぁぁぁぁ、彼も彼で鈍感系なのね!ホントなんなのよぉぉ!」
あれ?まさかの?
僕は先程かっこつけて「わかる気がします。先輩の好きな人」と言ってはみたものの、正直あまり分かっていなかった。
しかし、今それに気がついたように思う。
いや、寧ろこれで気が付かないと鈍感とかそういう言葉じゃすまない気がする。
「茜先輩。先輩の好きな人ってまさか……」
「えぇと、その、じょ、じょじょ」
「え?、ジョジョですか?」
「違うわよ!城之内圭くんよ!」
勢いに任せ茜先輩は発言した。
どうやら先輩の好きな人はいつも僕を支えてくれる圭だったようだ。
続く
久々の投稿でございます。長い間空けてしまいすいません。まだ作品は続きますので何卒




