最終海・湖の海の舟
『予測された未来は、常に解釈の一つに過ぎず、予知された時点での可能性は万華模様の万華鏡のように、どのようにでも再構築できる次元にある』
1つの湖と1つの島。
それが、彼らの故郷の全てであった。その世界は「箱の中」のようであった。いや、本当に箱の中だった。
その閉ざされた箱の蓋は、開かれた。彼らは管理された小さな楽園を離れ、これからは生きていかなくてはならない。
「変わった匂いのするところだね」
巨大な船の甲板に出て、その全てに感動するのである。
太陽の沈みかけた空は、ほんやりと赤くにじみ始めている。昼と夜の狭間に渦巻く風は、船上を流れ、海原を駆ける。波々のざわめきと、潮の包み込むような香りが、髪を撫でていく。
ほんのりと漂う潮の香りに、そして、広い空に、広い大地に。どこまでも続く、水の海に。
手に入れたのだ、本物の空を、
手に入れたのだ、本物の闇を、
手に入れたのだ、本物の海を、
そして、本物の海の果て、海の境界、『海界』を。
「おおうなばらへと、たびだつよ~ん?」
「そうだね、あの遥かなる海の境へ」
広い自由に満ちたこの星で。本物の海の上で。彼らの冒険は、はじまったばかりなのだ。
――空には、大きく輝く『光』が浮かび、その旅路を照らしだす。
この広い空の下、宙に青白く浮かぶ星が見守る中、海の上を旅した話は紡がれていく。
そして、
彼らを乗せた船は、
白い軌跡を描きながら、
世界に広がる、
母なる海、
ハルカナル ウナサカに
旅立った――
★よんよんの秘密の日記「おおうなばらへ イカリをあげろ」★
日記は、白紙だ。
これから、書き加えられていくのだろう。
この広い空の下、
宙に浮かぶあの故郷の船が見守る中、
海を旅した話で……