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仔猫の恋  作者: くろくろ
仔猫の恋
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仔猫たちのナイショ話

副題候補『仔猫たちのぶっちゃけ話』

「タマは、いつから意識するようになったの?」


お兄さんの友だちを、男の人として。

高校で出来た友人に聞かれ、珠稀は考え込む。


「見るからに、男の人だよ?」


「そういう意味じゃないの!わかってるでしょ?」


呆れたように笑う友人は、見た目が派手ではあるが面倒見が良い。

こんな初歩的で面白みのないことを、親身になって聞いてくれるのだから珠稀にとってはありがたいことだ。


「中学校の時、ふざけてた男子に抱き着かれたときに…かな」


「真面目なタマに対して、どういう状況の中でそんなことをしたかが気になる。確実に嫌われるだろうに」


高校に入学してからの短い付き合いの友人の方が、三年間同じクラスだった男子よりも珠稀のことをわかっていた。


「元々、苦手なタイプだったし、向こうもモテない奴にちょっと良い思いをさせてやろうって思ったんじゃないの?」


「いるわー、そんな勘違い男!『モテる自分が構ってやってんだから、うれしいだろ』っていうの」


一言一言、トゲトゲしい。

どんな恨みがあるのか、友人の目に怒りが見え隠れしていた。

珠稀は、自分のことよりそっちの方が気になる。


「で、それがどう作用したわけ?抱き着いてきた男子を意識するならまだしも、なんでそこにいもしない人だったわけでしょ?」


その場にいなかっただけでなくむしろ、その後からしばらく会えなかったくらいである。


「“違う”って、感じたんだ」


自分の中でそのときに感じたことを思い出すように、ゆっくりと珠稀は話し出す。


「友だちに、ふざけて抱き着くのと違うのはわかってたんだ。だって、私がそんなことする相手って女子だけだし。男女差があるのは理解してた。でも、そうじゃないんだよ。年は違っても同じ男で、身体は全体的に固いし、大きい。力の差だって、圧倒的に違う。頭では理解出来てたんだよ?だけど、実際に“適わない”って思うことは今までなかったんだ」


男兄弟がいながらそれを理解するのに時間が掛かったのは、年の差にしろ性格にしろ兄が珠稀に対して違いを感じさせるようなことをしなかったからだろう。

それは良くもあり、ある意味においては悪いことだったのかもしれない。


珠稀の話を聞いていた友人は、ひっそりとそう思ったかもしれなかった。


「なんかね、すごく優しいんだよ。腕を掴んだり、引き寄せたりするときとか」


「優しいって、そりゃあ友だちの妹なら気を遣うよ。…と、いうより、なんでそうなったのか知りたいんだけど!」


腕を掴むぐらいなら普通にありそうだが、引き寄せる機会はあまりなさそうだ。

ましてや、一緒に料理するために取った体勢も合わせればなかなかないだろう。


興味津々な様子の友人は、兄の友人に対して甘ったるい感情を向けている珠稀に対して現実的な質問をぶつけることにしたようだ。

明け透けというべきか、ぶっちゃけ過ぎというべきか、若い女子しかいない空間だからこそ出来るナイショ話である。


「ぶっちゃけ、エッチ出来るの?」

「えっ、えっち?」


「こんな感じにさ~」


読んでた漫画のあるページを開いて見せられた珠稀は、慌てて本を奪い取ってページを閉じた。

かなりキワドいシーンが載った漫画だったため、瞬間しか見ていないにも関わらず珠稀の顔は真っ赤だった。


「なっ!…ぅ、ちょっとなら、興味あ…いやいや。何聞いてるの!」


「えー、だって兄の友だちなんて、所詮は類友でしょ?そんな人と自分がキスしたりエッチしたりなんて…気持ち悪くて想像もしたくない!」


珠稀と同じように兄がいる友人は、自分の肩を抱いてブルブル震える。

相当、嫌なのだろう。


兄の友人を好きになった珠稀には想像するしかないが、確かに兄と同じ性格と行動を取る相手だったらきっと意識することはなかったと今、友人の反応を見て思った。


「正直さ、男なんてヤらしてくれるなら好きじゃなくても出来るんだよ?…まあ、それは女もそうだけどさ」


彼女は本気で珠稀の心配をしてくれているのだが、珠稀の方も友人を心配したくなる。

ニヒルに笑う彼女に何があったのか、聞くのは少々コワいが。


「凄い心配だよ、タマが自分のこと好きだってこと気付いて、良いように利用するとかされそうで!」


そんなことを相手が思っているとはつゆ知らず、先程の漫画を見たときの反応を思い出し、心配に拍車が掛かったらしい。

友人は陰りのある表情から一変して、眉をつり上げて強く問い質してきた。


「だっ、大丈夫だよ」


「いいや!信用出来ない!もし、お兄さんの友だちに『好きだ』っていわれたらどうすんのっ!?シたいっていわれたら、断れるの!?」


「断れると…思うよ?」


若干吃る珠稀が信用出来ない友人は、すぐに切り捨てる。


「無理でしょ!ヤらしてくれないんなら、付き合えないとかいわれても!?」


「そんなこと、いわれるはずないよ」


まるで、友人のいい方では飢えたケモノだ。

しかし彼は、そんなことをするような人ではない。

珠稀は苦笑した。


「身体と心は別ものだよ」


険しい顔の友人には悪いが、そうだとしても別れた恋人のことをあれだけ引き摺っている人が、簡単に頭を切り替えることは難しいように珠稀は思う。

それにしても、友人に何があった。


「そもそも、そんなこと急にいい出したら何かあるって疑うよ」


「本当に~?」


「うん。だって好みのタイプが違うし」


胸の前で珠稀が両手をワキワキさせると、友人は何のことをいってるのか瞬時に理解してカッと目を見開いた。


「しょせん、胸かっ!!」


ここに兄の友人本人がいたら、『もう少し他のいい方があるんじゃ…』と苦言を呈しそうなことを叫ぶのだった。

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