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仔猫の恋  作者: くろくろ
黒猫と狐さんと小話いろいろ
57/61

狐さんの知らない彼女のこと

プロポーズ後、まだお互いの親には話していない時期に訪れた危機(大袈裟)。

【彼女の分のプリン】


犬江母「ん~、おいしい!(恍惚)」

美織「さすが、珠稀ちゃんが並んで買って来てくれただけあるわ!とても、おいしい!ありがとう!!」

珠稀「え、えへへ。どうもです(テレテレ)」

志良「まあ、うまいな(すでに空になっている容器を置く)」

珠・美「「少しは味わえ(ドスの利いた声)」」


直「これ、前にいってたとこのか?」

珠稀「そうだよ!持ち帰りだけしかやっていない、プリン専門店のプリン!容器も可愛いでしょ?」

直「そうだな、とっても可愛いな(視線は珠稀に向いている)…あれ?でも、タマの分はどうしたんだ?」

珠稀「……え?」


犬江母「本当ね?珍しい」

珠稀「『珍しい』って、お母さん……(ジト目)」

美織「ごめんなさい!先に食べはじめちゃって…っ(あわあわ)」

珠稀「いえ、それはお気になさらず」

志良「そうだよ、気にするなミオ。どうせ先に食べてぐわあああっ!?」

珠稀「何いってんだ!この眼鏡置きがぁぁぁあぁっ!!」

直「まあまあ。タマ、よかったら俺のを食べてよ(プリンを掬って口元へ)。はい、あーん?」

珠稀「い、いえ(赤面)。それは直さんがの分だからもがっ(口にスプーンを突っ込まれる)」


※危険ですので、同意のないのにスプーンを人の口に突っ込むのはやめましょう。




【ケーキ屋デートを断れる】


直「今度、タマがいってたケーキ屋に行かないか?」

珠稀「…!(うれしそう)あっ、いや、今回はいい…かな?(視線を泳がせて)」

直「え?なんで?前に一人じゃ行きづらいって、いってただろ?」

珠稀「遠いのと、道が入り組んでるからね。でも、本当に今回は良いんだ!だから、別のところに行こうよ!」

直「タマがいいんなら、俺は構わないけど…。じゃあ、どこのケーキ屋にする?」

珠稀「ケーキは……しばらくは、いいかな?」

直「……!?」

珠稀「具体的には…一カ月ぐらい?」

直「ずいぶん具体的だけど、いったいどうしたんだ?珍しい…」

珠稀「えぇーと……(視線を泳がせて)と、友だちと一緒にケーキ屋巡りすることにして、さ」

直「そう……なのか」


直「(何だろう…すごくモヤモヤする)」


おや、不穏な空気が流れてますよ?




【お前、兄のクセになんて疑惑を……】


直「…と、いうわけで、最近の出掛け先は……って、二人ともどうした?」

美織「ねぇ、結城。珠稀ちゃんに限ってないとは思うけど……(いいよどむ)」

志良「まるで、ナオの歴代彼女の浮気中の反応と一緒だな!(ズバッ)」

直「!?」

美織「ちょっと!(志良を引っ叩く)結城、よく考えてみなさいよ!珠稀ちゃんがそんな不誠実なマネをするような子じゃないって、あんたが一番良くし……結城?結城!!」

志良「魂が抜けてるな!(大笑い)」

美織「あんたという人は~~~(怒)」


直「…………(呆然自失)」



【すれ違う二人(大袈裟)】


帰宅途中。

直「なぁ……、珠稀(真顔)」

珠稀「ん?どうしたの、改まって」

直「珠稀は好きな人、いるのか?」

珠稀「え…、えぇえ!?(赤面)…ど、どうしたの、急に(きょろきょろと周囲を見渡し)」

直「………(真顔で珠稀の返事を待つ)」

珠稀「えーと…(挙動不審)。そ、その……」

直「(これは…、シロのいう通り、なのか?)」


珠稀「あああ、あのね」

直「珠稀(遮り)。これから、俺の部屋に来られないか?」

珠稀「へっ?…明日も仕事だけど、遅くならなければ大丈夫だよ!(笑顔)」

直「そうか。なら、行こうか(手を強めに引く)」

珠稀「ととっ(たたらを踏む)。ど、どうしたの今日は?具合悪いの?」

直「そういうわけじゃないけど。ただ……ね」


直「(珠稀の心はもう、俺にはないのか?…だったら、本当はこの手を離さないといけない。いけない…のに)」

珠稀「(外じゃいえないけど、直さんの部屋で二人っきりならいえるはず!直さんのことがすすすすすす、すきって!)」




【そして、やらかす(直さんが)】


珠稀「開けなくていい扉を開けてしまった…(ぐったり)。直さん、私今日は仕事っていったよね!?(怒)」

直「聞いてました…(しょんぼり)」


しょんぼりしているが、きっと反省はしていない(最低)。




【何をしているんだよ(呆)】


直「結局、タマの気持ちは聞けなかった」

美織「何してんのよ(呆)」

直「ナニしてた(真顔)」

美織「……え(引き攣った顔)」

直「だから、ナニしてた」


単純に、正気の内(・・・・)にいう間を与えなかっただけ。




【意を決して】


直「珠稀、話があるんだ(真顔)」

珠稀「どうしたの…?話は聞くけど、最近ちょっと直さんおかしいよ?」

直「俺がおかしく見えるのであれば、それは珠稀のせいだよ」

珠稀「えっ!?(驚愕)」


直「ずっと、考えてたんだ」

珠稀「(なおさんがへんなのはわたしのせいって、わたしはなにをやらかしたんだ。しかも、なんかしんけんなかおしてる…って、まさか!これは別れ話!?)」

直「珠稀のことを思うのであれば、いわれる前に俺の口からいうべきなんだけど、やっぱりどうしても…珠稀!?どうしたんだよ、急に泣き出して!?(あわあわ)」

珠稀「う゛、う゛ぅ゛ー、なおさんんんん(涙をだばだば流す)、やだぁぁぁぁ」

直「……え?」



【泣き止んだら冷静に話し合いましょう】


珠稀「ぐすっ、うえっ(しゃくりあげる)」

直「(子どものような泣きっぷりだった)」

珠稀「ご、めんなさい、話し、続けて(まだ鼻をぐずぐずいわせている)」

直「(こんなときにあれだけど……なんか、興奮する)」


冷静に(怒)。




【衝撃的な事実】


珠稀「すんすん(鼻を鳴らす)」

直「落ち着いたか?…それで、なんでさっき急に泣き出したんだ?」

珠稀「それは…直さんが、わわわわ、別れ話をしようとしてたからで(涙目)」

直「確かにそうだけど、それって珠稀も望んでいることだろ?(涙目から視線を逸らす)」

珠稀「なんでっ!?」

直「なんでって…珠稀に(唇を噛み締め)、他に好きな人が出来たからで」

珠稀「えっ、ケーキ?」

直「どうやったらそんな聞き間違いが出来るのか気になるけど、俺ってまだケーキに負けてんのかっ!?」


珠稀の中の好き度→直>ケーキ。

一応、直さんの方が好きだけど、僅差(笑)。




【いい加減、本題に入って下さい】


直「人間の話だ。好きな人……つまり、付き合いたい男がいるじゃないかって話だ」

珠稀「直さんが!?(驚愕)」

直「俺じゃない(キッパリ)」

珠稀「だって、直さんが別れたい理由の話しでしょ!?」

直「俺じゃなくて、珠稀だよ!!珠稀に俺以外に好きな男が出来て、別れたいんじゃないかってことを聞いてるんだっ!!」

珠稀「え…(絶句)」


直「最近、ケーキ屋に出掛けたがらないし」

珠稀「それは…(しどろもどろ)。友だちと、一緒に出掛けてるからで」

直「男だろ」

珠稀「…!?ななな、なんで知ってるの!?」

直「(やっぱり…か)」

珠稀「私の態度が、そんなにわかりやすかったの!?」

直「だいぶ、な。しかも、神谷くんじゃない相手だろ?」

珠稀「まあ、うん。そういうことに付き合いようなやつじゃないし…みゃーこがいなければ」


直「珠稀のその、挙動不審な態度でわかった」

珠稀「そうだったんだ…隠してたつもりだったのに…どうしよう」

直「(隠してたつもりだったのか。…これはもう、ダメなのか)」

珠稀「直さん、もしかしてその友だちとのこと疑ってるの?」

直「だって、そうだろ?」

珠稀「違います!(怒)」

直「今更、嘘吐かなくても」

珠稀「違うって!…そうだ!証明してもらおう!!ちょっと待って!(スマホをちまちま操作し出す)」

直「いったいどこに…」

スマホ「ライ○~♪」

直「○イン!?」


珠稀「了解っと…直さん!今度の日曜日、夕飯食べに行きましょう!」

直「俺は構わないが…」

珠稀「了承を得たので、会わせます」

直「相手の、男にか」

珠稀「相手のクマに、です(真顔)」

直「く、クマ…?」




【クマ退治…じゃなくて、クマさんと対峙する】


問題の日曜日。待ち合わせ場所のケーキビュッフェの店に到着したようです。

直「や、やたらとファンシーな店だな…(気後れ)。あっ」

珠稀「直さん、こっち!(手を振ってアピール)」

直「タマ、おつか…れ(硬直)」

かさね「……(絶句)」


珠稀「直さん直さん!(小声)驚いちゃ可哀想だよ!彼は良いクマさんだから!」

直「あ、あぁ…(挙動不審)」

珠稀「クマさん、彼がよく話して私の付き合ってる人です。直さん、彼がこの間話してたケーキ屋巡りに付き合ってくれてる友だちのクマさんだよ!」

直「(本気で『クマさん』って、呼んでるのか…)」

珠稀「見てよ、こんなに人畜無害そうなクマさんと私がどうこうなるわけないでしょ!そもそも、クマさんは愛妻家です!」

重「……(厳かに頷く)」

直「そ、そうですね…」

珠稀「…直さん、さっきからどうしたの?緊張してるの?」

直「いや、あの…なんでもない」

珠稀「…?」

重「……」




【父クマと息子狐】


珠稀はケーキを取りに行きました。

直「…いつ、陸に上がったんだよ」

重「直、父さんは魚類とは違うぞ?」

直「んなこと、わかってるよ!(怒)そうじゃなくて、仕事は?彼女のことを誰に聞いたんだよ。律か?律なのか?だいたい、陸にいるのになんでメールに返信くれなかったんだよ。電話が繋がらないから、彼女のことをメールにしたのに…」

重「直、落ち着け。父さんは非番だ。律とはまだ会っていない。メールについてだが、届いてなかったぞ」

直「はぁ?俺、送ったんだけど……待て、親父。携帯は持ってるか?」

重「持ってるぞ」

スマホ「ライ○~♪」

直「いつの間にスマホにしたかはという疑問は取り敢えず置いておくが、ラ○ンじゃなくて」

重「母さんとのやり取りもこれだが」

直「お袋も!?」




【よくあること】


直「それで、センター問い合わせしてみろよ」

重「いくらこういうことに疎い父さんでも、メールが届かなかったら気付くぞ……」

直「いいから…で?なかったか?」

重「……(スマホを操作して)彼女のことは、律からも聞いている。真面目で良い子そうじゃないか」

直「今、メールに気付いたんだな(呆)」




【森…ならぬ街のクマさん】


今度はクマさんがケーキを取りに行きました。

珠稀「これで、私の無実は証明されたでしょう!(胸を張り)」

直「たくさん食べたなぁ…(珠稀のおなかを擦る)」

珠稀「お触り厳禁!!(手を叩き落す)」


直「ところで、どこであのクマと出逢ったんだ?」

珠稀「ある日、街のプリン専門店の前で、クマさんに出逢った」

直「……イヤリングでも落として追い掛けられたのか?」

珠稀「……最初に見たときには、それこそすたこらサッサと逃げ出したかったよ…」




【ある日プリン専門店の前でクマさんに出逢った黒猫】


珠稀「(すごい行列…これじゃあ、人数分買えるかな?一人六個しか買えないみたいだけど、この行列じゃあそれすら難しいかも)」

重「すみません、ここが最後尾ですか?」

珠稀「はい、そう…(振り返り)で!!(飛び上がる)」

重「?」

珠稀「(クマが二足歩行してる!?ししし、死んだフリ!?死んだフリをするべきなの、ここは!?)」

重「(ぶわっと膨らんだ尻尾の幻が見えるが。大丈夫か、彼女は)」


店員「お待たせいたしました!プレーンのものが四つ、ハチミツプリンが二つです。黄色い方がハチミツプリンとなってます」

珠稀「ありがとうございます!(受け取る)よかった~直さんと美織さんとお母さんお父さん、兄貴と私…うん、人数分買えた。…でも、お父さんは今日はもう帰って来ないから、もったいないし私が食べちゃお~(ウキウキ)」

店員「(相手の顔にビビって逃げ腰)も、申し訳ありません!今ので本日の分は最後でして!!」

珠稀「…うん?(振り返る)」

重「そうか…(重い声)」

店員・珠稀「「(こわい)」」

重「……(肩を落とす)」

珠稀「………(受け取ったばかりのケーキの箱とクマさんを交互に見る)あの、よかったら」

重「……?」




【いつの間にやら対面済み】


直「それで、プリンを渡したのか?」

珠稀「うん、二つでいいっていってたし、ハチミツプリンの方を渡したの」

直「(なるほど、だからあの日、タマの分のプリンはなかったのか)」

珠稀「私は直さんからもらったから、それで十分だよ。それに、クマさんは自分が食べたいんじゃなくて、奥さんにあげたかったんだってさ」

直「(お袋、隠してるつもりだけど大の甘党だからな)」

珠稀「たぶん、自分でもだいぶ食べたかったんだとは思うけど(珠稀の視線の先で、クマさんがケーキを大盛りにしている)」

直「そうだな(苦笑)」


珠稀「直さんにも隠してたのは、クマさんに男なのに甘いもの好きだって恥ずかしいからいわないでほしいっていわれたからなんだ。今どき、男の人がケーキ好きでもあまり周りは気にしないけど、本人がそういってるからね。お店にも、恥ずかしそうにしている男の人がいるから何となくわかるよ。まあ、直さんと直に顔を合わせる機会はないからいってもよかったように思うけど、クマさんと約束したからさ」

直「律儀だなぁ…」

珠稀「そんなんじゃないけど(笑)。それで、プリンを渡したときにケーキのことを話したら、こういうお店には一人じゃ入りづらいし、奥さんも気後れして付き合ってくれないからって話になって」

直「それで、一緒にケーキ屋巡りをしてたってわけか。…タマ」

珠稀「うん?」

直「疑って、ごめん」

珠稀「!!ううん、私もごめんね。疑われるようなことして。今度からは、また一緒にケーキ屋に行こうね。四人で!」

直「あぁ。…うん?四人?」

珠稀「直さんと私と、クマさんとクマさんの奥さんと四人で!(良い笑顔)」

直「………!?(驚愕)」


珠稀はクマさんと奥さんの本名を知りません。双方、あだ名で呼び合って、連絡手段はライ○のみ。




【じゃあなんで、腹を撫でる必要があるんだ】


珠稀は直さんのコーヒーと、また自分のケーキを取りに行きました。

重「直、彼女の親御さんがいる日ってわかるか?」

直「おとうさんは単身赴任でわからないけど、聞けば教えてもらえる。…でも、なんで?」

重「近々、母さんと二人で頭を下げに行く。自分の息子が、人さまの大切な娘さんを婚前に妊娠させてしまったんだから、当たり前だろう(鋭い眼差し)」

直「ちがっ!?さっき、おなかを撫でてたのはそういう意味じゃなくて!!(あわあわ)」


珠稀「(ふふ、やっぱり男の人同士の方が話しやすいのかな。仲良くなってくれてよかったよ)」


結婚する旨を伝えに結城家に初訪問した珠稀が、直さんの両親を見て硬直したのは仕方ない。(直さんがおもしろがって教えなかったため)

結城 重…二足歩行のツキノワグマにして、結城家家長。一年のほとんどを海で過ごす。重という名前は『経験を積み重ねて人として成長出来ますように』という願いが込められているのだが、彼の場合は『愛情が重い』である。直さんが『愛情が真っ直ぐ過ぎて時々こわい』ので、見た目はクマと狐だが、さすが親子だと思われている。

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