狐さんと黒猫とその周囲の人びと(夏の一コマ編)
【洋菓子店の盆前】
店長「犬江さん、焼き菓子に日付貼って並べて!」
後輩「犬江さーん、メッセージお願いしますぅ(半泣き)」
上司「犬江ーっ!!(怒)」
珠稀「ひぃぃぃぃ~!?(アタフタ)」
直「うわぁ、お盆前だから人すごいなぁ(タマ…これぞ、“忙殺”って感じだな)」
珠稀の先輩「あっ、晴人ぉ。いらっしゃ~い(ハート)」
直の後輩「さきちゃーん!(イチャイチャ)」
直「周り見ろ(ドスの利いた声)」
【『なつやすみ』?何それおいしいの?】
珠稀「直さん、夏休みってあるの?」
直「“夏休み”はないかな。盆休みなら会社の方針で、祝日を出勤にして金曜日を振替休になってる」
珠稀「あぁ、連休にしたんだ?」
直「そういうタマの夏休みは?」
珠稀「なつやすみ?ナニソレオイシイノ?」
直「悪かった。謝るから、そんな虚ろな目で見ないでくれ」
【夏の醍醐味】
美織「夏といえば?」
志良「スイカ割り!!」
美織「そう…(水着を隠す)」
珠稀「ただい…ん?この甘い匂いは…まさかっ!?」
珠稀「兄貴!?」
志良「おー、タマおか…グハッ!?」
珠稀「室内でスイカ割りすんなーっ!!(猫ぱーんち!)」
直「殺人現場のようだ(飛び散ったスイカを見る)」
美織「ごめんなさい」
【女子力の違い】
直「夏といえば?」
志良「ビアガーデン!!」
美織「…(水着を仕舞う)」
直「(ゴクゴクゴク)」
志良「ぷはーっ!!」
美織「(焼き鳥を串から外し)珠稀ちゃん、どうぞ!(にこやか)」
珠稀「……(口まで運んでいた焼き鳥を皿に戻す)」
【安定の】
直「夏といえば?」
珠稀「ゼリー!さっぱりした柑橘系のムースの上に、キラキラしたゼリーが」
直「わかったわかった」
【夏といえば?】
美織「夏といえば?」
珠稀「プールでしょうか?(学校以外で入ったことないけど)」
美織「…っ!珠稀ちゃんっ!!(抱き着き)」
珠稀「ぐぇっ!みみみ、美織さ…おねーさま?」
美織「さすが珠稀ちゃん!一緒にプールに行きましょうね!私は有休使うから、平日でも大丈夫よ!!」
珠稀「えっ、あの、水着がないので」
美織「大丈夫よ!今から買いに行きましょう!(珠稀の腕を掴み)」
珠稀「いっ、今からっ!?(時計と美織を交互に見て)」
美織「まだお店は開いてるわ!善は急げ!」
珠稀「ひっ…(引き摺られていく)」
志良「まるで、仔牛のように引き摺られていった」
直「ナレーション風にいうなよ(呆)」
【水着選び】
美織「はい!これ、試着してみて!」
珠稀「えぇーと、せめて黒にしてもらえませんか?」
美織「淡い色は、若いうちしか着られないから(真顔)」
珠稀「え、えーと、せめて肩とおなかと太股が隠れるのにしてもらえませんか?」
美織「出せるのは若いうちしだけよ(真顔)」
珠稀「(美織さんだって、十分若いんじゃ…)」
二十代前半と後半は違うのよ。(美織談)
【当然の権利を行使しただけだ(直談)】
珠稀「き、きました…」
美織「見せて見せて!わー…(珠稀の後ろを確認する)……」
珠稀「あ、あの?(絶句するほど似合わないのっ!?)」
美織「あぁ、ごめんなさい。珠稀ちゃんは悪くないのよ?結城は取り敢えずあとで殴る」
珠稀「?(脱いでいいのかな)」
【兄カップルは次の休みにプールに出掛けたらしい】
結局、買わずに帰宅(in犬江家)。
美織「結城、あんたねぇ!…そ、それは!!(直の手元を見て狼狽える)」
珠稀「水着?女物の(ジト目)」
直「俺のじゃないって(苦笑)」
志良「う~ん(直に手渡されたのをジロジロ見て)これ、ミオのだろ?タマは持ってないし」
美織「う…ぁ…(しどろもどろ)」
志良「冷たいなー、ミオは。タマは誘うのに、俺は誘ってくれないのか?」
美織「…!!」
珠稀「私、水着ないから行けないよ」
直「なら、シロでいいんじゃないか?」
珠稀「美織さんがこの眼鏡置きでもイヤじゃなければですが」
直「(辛辣だな)」
志良「で、どうするよ?」
美織「し、仕方ないわね!珠稀ちゃんの代わりとしては力不足だけどいいわ!」
志良「おー!!」
珠稀「美織さんの中の私って、何者?」
直「(プールの記事だけ付箋だらけの雑誌持ち歩いてるクセに、素直じゃないなぁ)」
【夕方、墓地にて】
美織「(茎の長さを合わせて切る)お水は?」
志良「ほれ(たっぷり水が入った花立を差し出す)」
美織「水が多すぎて、花を入れたら溢れるわよ!(怒)」
犬江父「母さん、タオル取ってくれ(お墓に水を掛けながら)」
直「おとうさん、拭くのは俺がやりますので大丈夫ですよ」
犬江母「助かるわ~お父さん、背が低いから!」
犬江父「母さん(しょぼーん)」
志良「タマ、線香入れの掃除は終わったのか?」
珠稀「終わったよ。…と、いうか兄貴。この合同参りどうなってんの?ここの墓地、結城家も姉崎家もないはずだけど…」
志良「気にすんな!」
珠稀「気にするよ!!(怒)」
【いらない知識を披露される】
珠稀「な、なおさん(クッションを抱き締めて硬直)」
直「んー…なんだ?(テレビ画面を見たまま)」
珠稀「ななな、なんでホラーっ!?今まで借りてきたDVDはコメディもあったのに!?(ガクガクブルブル)」
直「画面ガン見しながらいわれても(画面と見せ掛けて、珠稀を観察)」
珠稀「だだだだって!話が完結しないと呪われそうでっ!!」
直「わかったわかった、続きは俺が見とくよ(クッションを奪う)」
珠稀「ひいぃ!壁がっ」
直「はいはい(腕を広げる)」
珠稀「ひ~ん(抱き着き)」
直「(抱き返し)はぁ。珠稀、何で人がホラーを見るかわかるか?ホラー映画から擬似的に生命の危機を感じて、その刺激を快楽として感じるかららしいぞ」
珠稀「へ、へぇ(画面ガン見)」
直「珠稀は本能の部分が欠落してないか?(呆)危機感がないというか」
珠稀「?(ブルブル)」
直「(にこり)ところで珠稀、男は生命の危機に瀕したときどういう風になるか知ってるか?(珠稀をがっちりホールド)」
その後、ホラーの結末を珠稀が見たかは不明。
【そつのない男】
夏祭りに行く犬江兄妹とそれぞれの相手。
美織「珠稀ちゃんとお揃いの浴衣、うれしい!!」
珠稀「は、はい…私もうれしいです(うれしいけど、美織さんは喜びすぎのような)」
美織「あんたたちはいいのに(冷)」
志良「ひどいなぁ~(笑)」
直「姉崎がいったんだろ、浴衣持参って(呆)」
志良「わたあめ久々~」
美織「もう、ちゃんと拭いて!(ぬれティッシュで拭う)せっかく、お義母さまが着付けてくれたのに汚さないの!」
志良「いや、直」
美織「はぁ?」
志良「だから、直が着付けしたんだよ」
直「タマ、裾をきちんと捌かないと着崩れるぞ」
珠稀「はーい(生返事)」
直「まあ、何なら全部むいてから着付けし直してもいいけど(妖笑)」
珠稀「…っ!?」
美織「それって危険じゃないのっ!?いくらでも悪代官ごっこし放題でしょ!?」
志良「いや、それはしないんじゃないか?」
他のことはしないとは、はっきりといい切らない志良。
【狐面ってやたらとリアルだよね】
屋台で遊ぶ兄カップル。
直「わざわざ外れるとわかってて、高いくじ引かなくても」
美織「結城はうるさい!あっ(くじを開き)珠稀ちゃん!くじ当たったわ!!」
珠稀「おめでとうございます!それで、何が当たったんですか?」
美織「おめん!」
珠稀「おめ…?」
美織「かわいい!(喜)」
珠稀「………(もらった猫のキャラクターのおめんを着けて)どうもです」
志良「直にはこれ!俺が射的で当てた奴」
直「あっ、あぁ…ありがとう?」
志良・美織・珠稀「「「………」」」
直「(おめんを着けて)何だよ、三人して黙って」
志良「リアル!!」
美織「よくない何かがにじみ出してそうでこわいわぁ(引)」
直「おい(低い声)」
珠稀「(ちょっとかわいいかも…)」
【カップルたちの坩堝】
珠稀「カップルが多いね(キョロキョロ)」
直「そうだな(目の前を通るカップルを眺めつつ)」
美織「やだ、かき氷のシロップの色が付いてる!(鏡を覗き込み)」
志良「見せて見せて」
美織「ほら(素直に軽く口を開く)」
志良「ん…(チュッ)」
美織「……!!??」
志良「奪っちゃった~(ニヤニヤ)」
美織「(赤面)も、もう!ばばば、バカッ(小声)」
直・珠稀「「……」」
直「…チョコバナナ、食べるか?」
珠稀「…バナナが固いの、選んでね」
直「判断しにくいぞ、それ(苦笑)」
見て見ぬフリ。




