誘惑します!
side.T。どうでもいいが、キスの話。
「あれ?雰囲気…変わってないなぁ!」
「ど、どういう意味っ!?」
告白の結果報告をしたら、これである。
「いやー、お付き合いはじめたんでしょ?早速、ヤったんじゃないかって思ったんだけど」
「やるって何を」
「き」
「ひやあぁぁぁっ!?」
「…こんだけで何をいわれるか想像付くくらいだから、興味はあるでしょ?」
「まっ、まあ…。と、いうか!蓮花ちゃんの今まで付き合って来た人って」
「思い出させないで」
ますます蓮花の闇が深くなる(大げさ)。
「すぐにがっつく男もいるってこと。…まあ、相手も正常な男で経験値もそれなりにあるんなら、早々に覚悟しといた方がいいんじゃない?」
撫でられて喜んでる場合じゃない。
猫じゃあるまいし。
「いくらなんでも、手を出さないなんて異常よ。もしくは、“好き”の意味が違うか」
「恋愛感情じゃない、愛玩動物的な“好き”?」
「そこまではいってないけど…」
彼の中では、何だかんだいってもまだ“仔猫”なのだと思い、珠稀は慌てた。
「ど、どうすればいいっ!?」
「う~ん。じゃあ、こっちからさり気なく誘惑してみたら?『心の準備が出来てます』って、意味にもなるだろうし」
サラッと蓮花が提案したのは、だいぶ珠稀にはハードルが高いものだった。
│躊躇する珠稀は、聞かなきゃいいのに、恐る恐るそれでもダメだった場合のことを聞いてしまう。
「…もし、それで手を出してもらえなかったら?」
「それじゃあ、“好きの意味が違った”って、諦めた方がいいんじゃないかな?」