仕合~蓮華~
仕合参加人数三人、蓮華さん、椿さん、あともう一人。みんなすごく強そうだ・・・庭はすでに仕合が出来るように準備がなされている。
「隼人、準備はよいか?」
葵さんが話しかけてくる、楽しそうに笑っている。ウキウキとした感じが伝わってくるみたいだった。俺の方は緊張をしている・・・ガチガチだ。
「いや、全然かな・・・」
「なんだ緊張してるのか・・・隼人、頑張っ!」
背中を思い切り叩かれた、背中から全身に痺れが広がる。その痺れで緊張が解されていくみたいだった。
「・・・・ありがとうございます、葵さんのおかげで少し楽になりました」
「ふふっそうか、それはよかった。期待しておるぞ」
そういって葵さんは仕合場の近くの専用椅子に向かって歩いて行った。俺は柔軟運動で身体を解しておくことにした・・・・そうこうしている間に仕合が始まることになった。第一仕合は蓮華さんか・・・・
「よう、まだ名乗ってなかったな!私の名前は/佐々内蔵助成正。真名は蓮華、/黒母衣衆筆頭の筆頭だ」
槍を構えて名乗る・・・すごい闘気を帯びている。俺も名乗るか。
「俺の名は薩摩隼人。葵さんの旦那になるために頑張ります。得物は・・・すみれ!」
俺はすみれの名を高らかに呼ぶ。すみれは
「了解じゃ、お前様!」
と、発光して刀に形を変えていく・・・完全に変化してからすみれを持つ。
「な、な、な、なんだそれー」
「え?どうしたの?」
「いや・・・どうしたの?じゃない!なんで女の子が刀になってるんだよ」
あ、そういえば、昨日の夜この子いなかったな・・・まぁいいか。
「そのことは後で説明します。それよりも、いざ勝負」
「あ、あぁそうだな・・・・いざ」
二人が武器を構えて向き合う。一見したら普通得物が長い方が有利だ、その長いリーチゆえに相手の間合いの外から攻撃することができる。リーチの短い刀は上手く穂先をいなして懐に潜り込む必要がある。
「では、はじめ!」
椿さんの凛々しい声を皮切りに俺はまず、蓮華さんに向かって乾坤一擲の一撃を浴びせるために突進する。
「させるかよ!刀の間合いには入らないっ」
蓮華さんは鋭い突きの連撃を放つ。穂先の数を追いきれない、突きの中にフェイントも織り交ぜていてまるで針鼠のような状態に捌ききれないと判断して突進をあきらめ距離をとる。俺の後退をみて追撃の突きを繰り出してくる、それを上手くいなして距離を取るのに成功した。しかし、蓮華さんの構えには全くというほど隙がない・・・・そこで俺は一度刀を鞘におさめて居合の構えをとる。
「/薩摩流風土砂」
神速の居合を相手の足元にめがけて放つ。すると、居合の目標に気付いた蓮華さんは一歩下がる・・・だが、目標を切りつけた居合はその風の刃で土を抉り土砂を纏って蓮華さんに襲い掛かった。蓮華さんは槍を高速で回してその土砂を防いでいる、その間に蓮華さんの後ろに回り込む・・・そして、
「/薩摩流体術極八卦掌」
背中の中心に向かって上に突き上げる極八卦掌を繰り出す。蓮華さんはいきなり来た背中への衝撃に対応できずに吹き飛ぶ・・・・それを抱き留めて仕合終了。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
仕合を見ていたすべての人が息をのんで固まっていた。その中でハッと目を覚ました椿さんが、
「仕合終了、勝者薩摩隼人!」
少し遅れて歓声が上がる。その歓声でさっきまで気絶してた蓮華さんが目を覚ます。
「え・・・あ、私負けたんだな」
「今回は俺がなんとか勝てたけど次は勝てるかわかんないからな、また勝負しようよ」
「おう・・・・一応認めてやるからな」
少しほほを赤らめながら蓮華さんはそう言って退場していった。次は・・・
「こんにちは、隼人さま」
「君は・・・たしか葵さんのお屋敷で会った、たしか前田さん?」
その前田さんはほほを赤らめながらモジモジしている。
「はい、覚えていただいて光栄です。私の名前は前田又左衛門で真名は柊です、これでも赤母衣衆の筆頭なんですよ」
赤らめたほほにキラキラした瞳で可愛らしく胸を張っている。
「かわっ・・・・じゃなくて、柊さんも仕合するの?」
「はい、私も武士の端くれですからね。強い人とは戦いたいんですよ」
「・・・・わかった。ご期待にそえるように頑張るよ」
「ありがとうございます。では」
そうして二人は構える。柊さんの得物は偃月刀ってタイプの武器だな、リーチは槍のように長いがその穂先は槍よりも全然大きくその名に相応しい武器だった。突きよりも薙ぎが強い武器、柊さんの見た目に似合わない武器だ。でも、たしか歴史では前田又左衛門って槍の又左って呼ばれてなかったっけ?そこら辺の細かい歴史も微妙に違うのかな・・・そんなことを考えていると椿さんが、
「双方構え、はじめ!」