稲葉山
茜こと斎藤龍興が我が家で住むようになった翌日、俺は事態の説明と相談のために朝ご飯前に葵の家へ向かった・・・・・。
門先につくと葵の姿を発見したのでそのまま挨拶をして上がり込んだ。
「こんな早い時間にお前が来るなんて珍しいな、なんかあったのか?」
「ははっ、さすがに鋭いね・・・・じゃあ、まぁいきなりだけど本題に入ろうかな」
「うむ、なんじゃ」
「実はね、美濃の斎藤龍興を昨日から俺のとこで保護してるんだ」
「なん・・・・・・・・だと・・・・・どういうことだ?」
そう質問する葵は状況を飲み込み切れていないような困った顔をしながら俺の瞳を見つめてきた・・・・・吸い込まれるような瞳を俺もジッと見つめた。
「葵?」
「・・・・ん、嘘ではないようだな。いきなりのことでいささか驚いてしまったぞ」
「いや、まぁ信じてもらったならよかったんだけど・・・・俺ってそんなに信用ない?」
「そういうわけではないが、来て早々の話がそれではなんとも怪しいではないか・・・・何者かに操られているとも限らんしの。で、龍興を保護しているとはどういうことだ?」
俺の言葉を信用してくれたのか先ほどの動揺は少しもなく質問してくる心の切り替えや状況の理解の速さに感心しながら俺は質問に答える。
「実はね、昨日の昼ごろに市の外れを通りかかったときに木陰でうなだれている少女に出会ってね、事情をきくとおなかがすいているって言われてね団子をごちそうしてあげてから話をきくと行く当てがないって言っててね数日泊めてあげるだけのつもりで自己紹介をしたんだ、そうしたらその子が名乗った名前がその斎藤龍興って名前でね、正直驚いたけどそのまま保護しようと思ったからまずはその報告に来たんだ」
俺がそう話すと葵は真面目な顔をして
「もしかして、その龍興が可愛かったからそんなおせっかいをかけたわけではないだろうな?」
と少し怒り気味で質問してきた。
「いや、たしかに可愛いとは思ったけどさ・・・・そういう不純な動機で保護をしようと思ったわけじゃないよ!」
「本当だな?」
「本当、本当!」
「・・・・・うむ、なら一応信じておこう。で?」
ジト目で見られながら話しの続きを促してくるので俺は再び話始める。
「まぁ、今日来た用事の一つ目はその保護の件で、もう一つが今後についての話だね」
「今後?どういうことだ?」
「まぁ聞いて・・・・実は現在の稲葉山城は化け物の城と化してるらしい、龍興こと茜の話をきいたんだけど美濃は西美濃三人衆の安藤と竹中って人以外の将が陰で国の主導権を握っていたらしい」
「・・・・ふむ、やはりそうであったか」
「やはりって、知ってたの?」
「いや、そう確信したのは今の話を聞いてからだが・・・・美濃に放っていた草からの報告で西美濃の氏家らが城内で幅を利かせているって報告を聞いてもしやとは思っておったのじゃ」
さすがにそこら辺は国主って感じがして関心した
「まぁ、そんな状態で美濃においての斎藤龍興はただの傀儡だったわけで・・・・そんなときに墨俣に城を建てられてさすがに竹中って人が黙ってられなくなって龍興を鼓舞して国の主導権を取り返そうと働きかけたらしいんだけど、その動きに気付いた氏家らは内々で処理しようと竹中を暗殺しようとしたんだけどそれを阻止されたらしい」
「まぁそうなるだろうな・・・・竹中が相手ならば西美濃の阿呆どもじゃ束になってもかなわんだろうよ」
葵は少し笑いながらそう言う。
「で、それに怒った氏家は突然化け物になって暴れたらしい・・・・・まぁここまでは今までの化け物になる経緯と状況は同じなんだ、だが今回のは今までの化け物とは格が違うみたいなんだ」
「格が違うとはどういうことだ?」
「・・・・・・それはね、今までのは近くの物を壊したり、人を殺したり、食べたりするやつらだったんだけど、今回のは周りの人間の負の感情を増幅して化け物にする力があるみたいなんだ・・・・・・まるで、魔魂者みたいに」
そう・・・・魔魂者のようなことをするんだ、今回の化け物は・・・・・一体どういうことだ?
「それで?どうやって龍興は城を脱出してこの尾張まできたというのだ?」
俺が説明をしながら考え事をしていると葵がさらに話の先を促してきた。
「・・・・うん、その変化は城内で爆発的に広がったんだけど。城内の異常にいち早く気づいた安藤が龍興をなんとか脱出させたみたいだよ。美濃のことを俺に託して」
「美濃のことを託してだと?なんで安藤はお前のことを知っていたんだ?」
「あぁ・・・・それはね、墨俣の築城中に受けた美濃からの攻撃の最中に美濃軍の大将だった安藤が急に化け物になってね、俺が化け物になった安藤を助けたからかな」
「なるほどな・・・・その安藤にもお前の使命を話したんだな」
「うん、そういうことだね」
俺の話に納得したのか葵はコクっと頷いて
「では、次の戦は我が尾張と化け物化した美濃との戦いというわけだな。なぁ隼人」
「ん?なに?」
「お前はその魔魂者に対抗する戦力を育成する役目もあるのだろう?お前の隊は当然その専門部隊なんだが、我が軍に他に適格者はおらんか?」
俺は織田の将について考えた。
「いるよ。っていうか、織田の将はみんな適格者だね」
「そうか!ならばお前にお願いがあるんだが、適性のある将も育成してはくれないか?」
「それは大歓迎だね!一人でも多い人が力を身に着けてほしいから」
「では、頼む」
そういって葵は頭を下げた。俺は笑顔で
「了解!」
と返事をしてこの話を終え、久しぶりに葵と一緒に朝食をとって城に向かうのであった・・・・・・・




