その子の名は龍興
俺は茜と名乗る少女を引き連れ隼人隊が住む長屋に向かって歩く、入り口付近に差し掛かった時に二人の女の子の後ろ姿が見え、声をかけた。
「よぉ、つつじ、さつき今帰り?」
「あ、隼人様!今お城から帰って来ました」
「少し遅れましたが柴田様や丹羽様にあいさつをしてきました」
明るく元気な感じのつつじとは対照的にまだ緊張が残っているのか少し暗い感じのさつきといった感じに少しほほを緩めながら俺はさつきの頭をなでた。
「まぁ緊張する気持ちもわかるけど、二人ともすごく優しくていい人たちだから安心してな」
「は、はい・・・・早くなれるように頑張ります」
そういうとさつきは照れたようにほほを赤らめて笑みを浮かべる。
「あぁいいなぁ~さつきちゃんばっかり、隼人様わたしも頭なでてくださいよぉ」
さつきの横にいたつつじが少しほほを膨らませて文句を言ってくる。
「はいはい、ほらつつじもさつきの付き添いお疲れさま」
そういってつつじの頭もさつきと同じように撫でる。
「えへへ、はい!わたしもさつきちゃんと一緒に働けるなんてすごくうれしいですからこれくらい何でもないですよ!」
そうやってじゃれていると横にいた茜が俺の服の袖を軽く引っ張って俺はようやく茜の存在を思い出すのだった。
「おっと、、ゴメンゴメン・・・・別に忘れていたわけじゃないからね」
そういって茜の頭も撫でると、このときに二人も気付いたのか茜について聞いてくる。俺は茜に会った経緯を簡単に説明をした
「いいんじゃないですか、すごく可愛いし」
そう第一声を発したのはつつじだった、言葉の通り慈愛のまなざしを茜に向けていた、それに続くようにさつきも賛同してくれた。そうして歓迎ムードで話をしていると茜が突然。
「あの、お兄さんにつつじさんとさつきさんにも聞いてほしい話があるの、どこか誰にも話が聞かれないとこに行きたいの」
と言ってきた。
俺たちは俺の部屋で話をすることにして移動した。
「・・・・よし、ここなら大丈夫だろ、で茜の話ってのはどんな話?」
と、俺が話を促すと茜はコクンと頷いて話し出した。
「実はね、茜の真名じゃない名前はね・・・・・・」
部屋の中でゴクリと生唾を飲み込む音が聞こえた。
「茜の名前は、斎藤・・・・・斎藤たつ・・・・・・・・・斎藤龍興っていうの」
その一言で一瞬にして場が凍り付いた。
「え・・・・茜、茜があの斎藤龍興だっていうのか?あの美濃の稲葉山城の城主の?」
俺は混乱している頭をどうにかおさめて改めて茜に問う
「・・・・うん、そうなの。その龍興なの」
「なんでその美濃の斎藤がこの尾張にいるんだ?今は織田と敵対関係だろ?」
俺の質問に困り顔で茜は答える
「・・・・・・そうなの、確かに美濃と尾張は今敵対関係なの・・・・でもね、それは茜の名前を使って悪いことをしている人たちのせいなの。お城では茜の発言なんて誰も聞いてくれないの・・・・莉々ちゃん・・・じゃなかった安藤くらいしかまともに茜の言葉を聞いてくれなくて/悠も・・・じゃなくて竹中も全然最近は遊んでくれないの、何かにとりかれたように軍略の本ばかり読んでるし」
俺たちは茜の今の美濃での立ち位置を聞かされて唖然とした、まさか傀儡としてこんなに可愛い茜を利用しているなんて・・・・っと憤りすら覚える。
「それでね、この前織田が墨俣にお城を建てたでしょ、あのあとすぐに稲葉山城内で化け物が大量に現れたの・・・・まるで城内の人たちがどんどん化け物になってるんじゃないかってくらいに化け物が増えて、逆に普通の人たちがいなくなって・・・・・茜は莉々ちゃんの進言もあって稲葉山城から出たの。尾張には化け物を退治してくれる優しい人がいるから身分を隠してその人に相談するようにって、たしか名前は・・・・・・・・・・薩摩隼人」
そう思い出しながら視線を彷徨わせていた茜と目が合う。
「・・・・・・・あっ!もしかしてその薩摩隼人なの?」
「うん、そうだよ!それは俺のことだね、莉々さんの名前が出たなら間違いないな。でも念には念を入れて・・・・・篠」
「はっ!」
どこからともなく背後に篠が現れる。
「確認だけど、茜は斎藤龍興で間違いない?」
「はい、間違いありません」
「うん、ありがとう・・・・茜、この子は篠っていうんだ」
いきなりの篠の登場にビックリして固まってた茜に篠を紹介する。
「・・・・・・はっ!ビックリしたの!よろしくね篠ちゃん」
「はい、よろしくお願いします。龍興さま」
「茜でいいの!」
そういわれた篠は俺に視線を送る、俺は篠に頷いて笑みを浮かべた。すると篠はほほを少し赤らめて頷き茜に向き直って
「はい!改めてよろしくお願いします茜さま」
と、深々とお辞儀をした。
「あと一人、茜に紹介したい人がいるんだ・・・・すみれ」
俺がそう呼ぶとすぐ横に置いていた刀が光りだし、すみれが人型になって登場した。
「あ、あ、あ、妖なの?隼人危ないの!」
そういって自分の刀を抜こうとした茜を手で制して、
「茜、大丈夫だから!この子は俺の相棒だから!」
「そうなの?」
今にも刀を抜きそうな茜をなんとか落ち着かせて紹介をはじめる
「この子は俺の刀であり仲間のすみれっていうんだ」
「我が主様の紹介の通り我が名はすみれじゃ、よろしくの」
「よろしくなの!茜なの」
そうやって一通りの挨拶を済ませた俺たちは晩御飯を食べに出かけるのであった




