協力要請~一夜城~
「・・・・どうぞ、粗茶ですが・・・」
そういって蜂須賀さんは俺たちにお茶を振る舞ってくれた。俺は軽く頭を下げてから熱すぎず、冷めすぎていないちょうどいい温度のお茶を一口すする。
「・・・ふぅ、美味しい。温度もちょうどいいし蜂須賀さんはお茶を淹れるの上手だね、どうかな?うちでお茶汲みをしてくれないかな?」
と、軽口を言うと蜂須賀さんはわたわたとしながら、
「め、め、め、滅相もありませんよ!私などの淹れるお茶などそんなたいしたものではありませんよ・・・そ、それよりも、仕事の依頼でしたよね、そのお話をお願いします」
「・・・そうだね、仕事の話をしようか」
俺はその慌てる蜂須賀さんの仕草を十分楽しんだので蜂須賀さんの提案通り話を切り替えることにした。
「で、その・・・用件とは?」
「あぁ、俺が今日ここに来たのは蜂須賀さんにある作戦に協力してもらおうと思ったからなんだ、もちろん蜂須賀さんの率いる並衆にもね」
「・・・作戦の協力ですか・・・その内容は?」
顎に手を当てて思案顔の蜂須賀さんが質問をしてくる。
「実は、墨俣に城を築城しようと考えているんだ」
「えぇ!墨俣にですか?・・・たしか最近、織田方の佐久間さまが失敗してましたよね?なんでそれを織田の夫君である薩摩さまが引き継ぐんですか?」
心底驚いたという感じで蜂須賀さんは身を乗り出して質問してくる。
「まぁ、色々あってね・・・そこでつつじに木曽川付近に友達はいないかって相談したところで君を紹介してもらったってわけさ、まぁまさかこんなに可愛い子を紹介されるなんて思ってなかったけどね」
「か、可愛いなんてそんなことないですよ!その、普通です!」
顔を赤らめながら恥ずかしそうに否定してくる、そして赤くなった顔を手で覆って話を切り替えようと目で続きを聞かせてくれと訴えかけてくる。
「ははっ、まぁそんなわけで君を紹介された俺は改めて君に協力をお願いするわけさ、勿論報酬もちゃんと用意するし、資材費や人件費もこっちで持とう・・・今回の作戦には織田の兵を使えないから雇えた人数でやるしかないんだ、だからなるべくたくさんの人員が欲しい」
仕事の話になった途端さっきまでのイチャイチャモードは解除され一気に真面目な顔になった蜂須賀さんが質問をしてくる。
「・・・あの、なんで織田の兵士を使うことが出来ないんですか?」
「えっとね、織田の兵を動かすということはおそらく尾張に潜入している美濃の間諜にこちらの動きがバレる可能性があるからだよ、なるべく目立たないように準備をして行動するためには織田の兵以外を起用したほうが安全って考えたんだ」
「なるほど、だから我ら川並衆に依頼をするわけですね・・・ですが、いくら慎重に準備をするにしたって、実際築城を始めたら確実に目立つし、何より築城にはかなりの時間を有するんですけど、大丈夫なんですか?」
「それについては、準備期間中に木曽川上流であらかじめある程度の加工をしてすぐに組み立てられるように工夫するつもりだよ。それで加工した資材を上流から一気に運んで組み立てる・・・組み立て中には邪魔が入らないように織田軍に協力してもらう、それであらかじめ加工した資材でなんとか一夜で城を築く」
俺がそう宣言した後、少し間をおいて部屋の中の空気が揺れる。
「・・・・・えぇー、一夜で城を築くんですか!?」
「ちょっ・・・ちょっと隼人様?本気ですか?」
今まで黙って話を聞いていたつつじも驚きのあまり質問してくる。
「あぁ、本気だ!俺の考え通り事が進めば必ず成功する・・・ってか、歴史が証明してる」
「・・・・あの、隼人様。歴史が証明しているってなんですか?」
「あ・・・・いや、なんでもないぞ!気にするな」
「(バカかお前様よ、この者たちの前でお前様のいた時代の歴史を語るでないわ。お前様の不用意な発言が未来にどんな食い違いを起こすかわからんのだぞ)」
俺の失言にたまらずすみれが小声と肘鉄でツッコミをいれてくる。
「(す、すまん・・・つい口が滑った)」
俺とすみれのやり取りを不思議がった顔の蜂須賀さんが更に質問してくる。
「あの、つつじの質問と同じなんですが、証明してるってなんですか?」
「い、いや・・・気にしないで、それよりもこの依頼は受けてくれるかい?」
俺は慌てて話を切り替える、すると少し怪訝な顔をしながら蜂須賀さんは、
「まぁいいですよ、この依頼受けさせていただきます」
「ありがとう!じゃあ、改めて自己紹介をするね。俺は薩摩隼人、織田信長こと葵さんの旦那をしていると同時に魔魂者からこの世界を守るために未来からやってきた魂を導く者の後継者だ!そして、俺の刀であり相棒のすみれだ」
「すみれじゃ、よろしくの」
「そして私が薩摩隊第一号の木下藤吉郎ことつつじだよ!」
すみれはマイペースな自己紹介をして、つつじはいつも通りの元気ハツラツな自己紹介をする。
「あとは・・・・/篠!」
「・・・・はっ」
音もなく背後に現れた篠が返事をする。当然なんにも心の準備をしていない蜂須賀さんは腰を抜かす勢いで驚いた。
「・・・わぁ!・・・さっきまでいなかったですよね?」
「あぁ、今俺が呼んだんだ。篠は俺の忍でつつじと同じ時期に俺の部隊に配属になった元美濃の間諜だ。とある事情があっていまは俺のもとにいるんだ、あと篠の部下に庵と環がいるんだ、今は美濃に潜入しているからここには篠しかいないけどね」
「はぁ、そうなんですか・・・」
なんかポカンとしている蜂須賀さんに自己紹介を促す。
「あ・・・はい、私の名前は蜂須賀小六です。私の真名も薩摩様に預けます・・・私の真名はさつきっていいます、よろしくお願いします」
そういうとさつきは深々と頭を下げた、やっと預けてくれた真名が嬉しくて俺は
「俺のことは隼人でいいよ!さつき、こちらこそよろしくね」
「はい!ではつつじと同じく隼人様って呼ばせていただきます」
「うん、じゃあお互い名前を交換したし、俺は一度葵さんに話をしてくるかな」
そういって俺は腰を上げてからお茶のお礼を言って葵さんのいる尾張城に向かうのであった。




