仕合~柊・椿~
椿さんの合図で柊さんが俺に向かって跳び、回転横薙ぎを繰り出す。柊さんのキャラとは違う積極的な攻撃に驚き少し反応が遅れる・・・回転運動と前に跳ぶ運動により力が乗った一撃が迫ってくるのをなんとか後ろに跳びながら刀で捌く。
「おっ・・・と、柊さんって意外と突進型なんだな」
と、独り言を漏らす。他人には聞き取れないような声量での独り言だったのだが、柊さんから返答が返ってくる。
「あらあら、気を引き締めていただかないと怪我しますよ?あと・・・突進型とはなんですか!私は先手必勝って言葉が好きなのです」
「そ、そうなんだ・・・じゃ、仕切りなおしていくよ」
俺は右手で刀を持って弓矢を引くように右腕を引きタメを作り、左手の親指と人差し指の付け根を柊さんの胸部に合わせそこに刀の切っ先を載せて照準として構えると、右足を曲げて体重を乗せる。そこから右足のバネを使って突進をかける。反動をつけた分通常よりも突進の速度が上がった・・・そのまま柊さんを自分の間合いに一気に入れると右腕のタメを前に押し出す。左手で作った照準通りに刀を突きだす。
「/薩摩流弩突龍」
全体重を乗せた突きを受け流して右に跳ぶ柊さん。その反応に対して決まりの追撃をかける。突いた刀をそのまま横薙ぎに転換する。
「/薩摩流弩突龍・/流」
突きの回避でいっぱいいっぱいだったのか防御が間に合わずに腹部に寸止めをする。「勝負あり!勝者薩摩隼人」
椿さんの声で体勢を戻して刀を納める。負けた柊さんが笑いながら近づいてくる。
「いやぁ、負けちゃいましたね・・・隼人さん、強いですね。これなら葵様の旦那さんって認めちゃいますよ」
そんなことをいいながら手を差し出してくる、そして二人は固く強く握手をした。
「次はわたしだな!薩摩よ、なかなかやるのぉ・・・これはわたしも少々本気で挑まないといけないな。おい、誰かある」
椿さんの呼び声に小柄な女の子が城の方から長物を持ってきた。その武器は/戟中国の唐の時代まで使われていたといわれていた長兵器であったはず。
「ほう、この武器を知っているような顔だな」
椿さんがニヤリと不敵に笑う。
「いえ、知識として知っているだけでその武器の実際の性能はわかりませんよ」
「そうか・・・なら少し説明してやるが、この武器は戟。突きにも敵を引っかけるのにも使える便利な武器だな、ただしわたしのこの得物は一般的な戟よりも、三倍重い」
見るからに重量感のある武器を軽々しく振り回している椿さんをみて戦慄を覚える。風を切る音が尋常ではない・・・・あれに切られたら間違いなく死ぬ。
「・・・あの、椿さん。手加減はしてもらえるんですよね?」
恐る恐る尋ねると椿さんはニヤリとまた笑って
「手加減なんて相手に失礼であろう?全力でいくぞ・・・当然」
「いやいやいやいや、全然手を抜いてもらって構わないのですが。ってかむしろ全力で手加減して下さいよ」
「そこまでいうなら、全力で手加減できるように心がけよう」
そういうと今までよりも更に力の入った素振りをする。
「・・・・・・・・・・・」
「どうした?まさか手加減してやると言ってやってるのにビビってるのか?」
「・・・い、いいえ。さぁ・・・・さぁやりましょうか?」
あまりの緊張に声がうわずる。
「そうだな。でははじめるか・・・桜!合図を」
「はい、それでは双方構え!」
緊張をなんとか心の奥に押し込めて深呼吸・・・そして正眼の構えをする。椿さんは静かな呼吸で戟を腰だめに構える。
「・・・・・・はじめ!」
桜さんの合図で俺は正眼の構えのまま真っ直ぐ肩口を狙って突進する。椿さんはそんな俺に対して腹部めがけて腰の入った一突きを放ってくる。俺は刀を下段に払い突きを逸らして、払いの勢いで横に回転しての横薙ぎをする。
「その技は昨夜見たな!」
そう言った椿さんは戟の石突で横薙ぎを打ち上げる。その衝撃にのけ反る俺の襟をつかんで頭突きをして片手で背負い投げをされる・・・その後穂先を向けた。
「勝負あり!勝者柴田勝家」
完敗・・・もともと結果は見えていた感じだが、椿さんの力の一部を垣間見ただけでこのざま。とてつもないと思った。
「・・・参りました。完全に負けました、全く刃が立たなかったですよ」
「そうか?わたしはなかなか見どころがあると感じたがな。もっと鍛えればまだまだ伸びるぞ!」
椿さんの激励の言葉に感動していると、いままで観戦していた葵さんがやってきた。
「なかなかの奮闘だったではないか!椿にはまだまだ及ばんが他二人には勝てる力量はあるみたいだな」
「いやいや、あの二人も強くて勝てたのも運みたいなものだよ」
「ふふっ・・・そういう考え方が出来るならおのずとお前は今よりも成長しよう。そう思えるやつはまだまだ伸びるわ」
そういうと葵さんは嬉しそうに笑った。そして、周りを見回して
「これにて、ワレの夫の見極めを終了する」
と高らかに宣言する。




