第2章<友達>
第2章<友達>
数日後、漢城に大道芸が来た。
この日ソンイは大道芸が始まる1刻ほど前にウニに
「誰か来たら、私は風邪で寝てるって言っておいて!」
と言い、屋敷を出た。
…もちろん男装で
ウニはもう諦めた様子で
「分かりました。…でも早く帰ってきてくださいね!」
と念を押した。
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ソンイが向かった先は…
「ふぅ、ここが右議政大監の屋敷か… 人に道を聞きながら来たから、思ったより時間がかかっちゃったわ。まだテジュン様が家を出てないといいけど…」
ソンイはそう呟き、木の陰から屋敷の門の方を見た。
するとその時、ギギギィと音がして門が開き1人の男が出てきた。
執事らしき人が
「テジュン様、行ってらっしゃいませ」
と言った。
「あの方がテジュン様…なかなかいい顔してるじゃないの。」
と呟きながらソンイはテジュンの後をつけて行った。
テジュンは途中、何人かの友達らしき人達と合流しながら大道芸がいる場所に向かった。
すると、ガラが悪そうな男達にからまれ始めたではないか。
ソンイは状況が飲み込めていなかったが、とにかく助けなきゃと思い、テジュンの方へ走って行った。
そして、テジュンに絡んでいた男へ向けて回し蹴りをすると、テジュンの腕を掴んで走った。
しばらく走り後ろを振り向くと男達は追って来ていないようだった。
「はぁはぁはぁ…」
息を整えていると、テジュンが
「ありがとうございます。あなたは…?」
と聞いてきた。
ソンイはとっさに
「いや、困ってるようだったから…つい。
俺は義禁府判事の息子 ミン・ソルだ。」
と答えた。
内心では(影から見てるだけのつもりだったのに…助けてしまった。)と慌てていた。
テジュンはうなずき
「俺は右議政の息子 ユン・テジュンだ。
本当にありがとう。お礼に酒でもおごらせてくれ。」
と言った。
ソンイは断ったが、テジュンの押しに負け、一緒に酒を飲む事になった。
テジュンは
「それにしても君の回し蹴りはすごかったよ!父上から習ったのかい?」
と興奮しているように言った。
ソンイは「うん。俺の一族は武官一筋だからね… でも兄上達の方がすごいよ。あっ、俺の事はソルって呼んでくれ!俺もテジュンって呼ぶから!」
と言って笑った。
テジュンは
「うん!」
と承諾した。
その時ソンイは心の中で
(ほんとは兄上にくっついて練習しただけなんだけど…
それにしてもこんな状況になるなんて…でもこれは婚約について聞くチャンスよ!)
と思い
「実はもうすぐ結婚するんだ。相手はいい方と聞いたけど、なんか乗り気になれなくて…」
とテジュンの方を伺いながら言った。
テジュンは
「実は俺もなんだ。乗り気じゃないわけではないんだけど…実は初恋の相手を探しているんだ。小さい頃に少し会っただけだが、今でも忘れられない… ってこんな話つまらないよな。」
と笑いながら言った。
ソンイはすぐに
「つまらなくなんてない!」
と言い、テジュンは
「ありがとう。今まで誰にもこの話はした事ないんだが、ソルには何故か話せた。」
と言った。
ソンイは少し照れながら
「実は俺にも忘れられない初恋の相手がいるんだ。でも小さい頃に患った病で記憶が曖昧に… ただ覚えてるのはその相手と一緒に野原で遊び、歌を歌ったことだけ… テジュンの相手はどんな子なんだ?」
と聞いた。
テジュンは
「女の子なのにお転婆で、笑顔がとても可愛い子だった。でもすぐにその子は引っ越してしまってそれ以来… その後俺も漢城に引っ越したからね。」
と少し寂しそうに言った。
ソンイは
「そうか… また会えるといいな!」
と言い、
「俺たち友達にならないか?テジュンとは気が合うみたいだ!」
と問いかけた。
テジュンは笑って
「もちろん!俺もそう思ってた。」
と言った。
そして2人は握手をして乾杯をした。
ソンイは周りを見渡すと、慌てて
「やばい!実は父上と母上に内緒で出かけて来たんだ。もう帰らなくては… あっ!今日俺たちが出会った事は秘密にしてくれないか?父上にバレたら大変な事になる…」
と言った。
テジュンは少し驚きながら
「分かった。また会おう!見かけたら話しかけてくれ」
と言った。
ソンイは
「もちろんだ!じゃあな!」
と言って走って屋敷へともどった。
*To be continued*