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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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98.透子のお弁当

 昼ご飯は基本的に学食か購買だ。

 母さんは専業主婦なのでお弁当を作れるはずなんだけど面倒だから作らないそうだ。

 まあ面倒な理由というのが父さんが『僕も欲しい!!』っていい出すからってのが笑えるけど。


「今日はどうしようかな」


 外暑いしなぁ、学食で安いものっていうと麺類だからさらに暑いし……。

 ぶっかけうどんとか置いてくれればいいのに……一度リクエストしてみるか。

 さて購買で安く抑えるなら……おにぎりかな。

 でも最近おにぎりも高いからなぁ、ツナマヨですら200円近いのはどうなのかと。

 暑さを我慢して素うどん150円を二杯食べた方がいいか?


「真琴、どうしたの?」


 教室の出入口付近で悩んでいると平川さんと透子が出てきた。

 俺の方を見て不思議そうな顔で声をかけてくる。


「いや購買行くか食堂行くかで悩んでて」

「なら購買に決定ね、アタシも行くし」

「何で!?」

「お姉ちゃんと一緒に食べたいでしょ?」


 彼女と一緒に昼ご飯……、夢みたいなシチュエーションだ。

 でもそんなことお願いして失礼にならないだろうか。

 もし嫌われたりしたら……。


「はい、決定、行くわよ」


 悩んでいる俺の手を取って問答無用で食堂に向かい始めた。

 透子の方を見ると特に怒ってないようだ、よかった。


「真琴の家はお弁当作ってくれないの?」

「面倒だから作らないって」

「そうなんだ」

「ただまあ食費を浮かせて他に使えるから逆にありがたいかな」

「浮かせて、じゃなくて削っての間違いでしょ」


 笑いながら体をぺしぺし叩いてくる。

 ほんとにボディタッチ多いよな。

 購買につくとそれなりに人がいるものの商品は十分残っている。

 さてどうするか、どこで食べるかで選ぶものも変わってくるんだけど。


「今日は何食べる気だったの?」

「まだ決まってないかな」

「おにぎりとか?」

「うん、それも考えてた」


 値段的におにぎりかカップラーメンが候補だろう。

 それにおにぎりなら場所を選ばず食べられるのも大きい。

 最悪立って食べればよいし。


「ならアタシもそうしようかな」


 そう言いながら俺におにぎりを渡してきた。

 マグロのヅケ・牛しぐれ煮・ツナマヨ・唐揚げ。

 ツナマヨ以外はお値段が高い品物だ。


「これは?」

「アタシの分のおにぎり」

「なぜ俺に!?」

「なによー、おごってくれないの?」

「平川さんの分だけで食費オーバーだよ!?」


 最近のおにぎりは値段が上がっているから安いやつでも三個でギリ予算オーバー、さらにこんな変わり種は二個でも予算オーバーしかねない。

 それが四個となれば次の日の食費すらなくなる。


「お願い♪」

「可愛すぎる!?」


 俺の手を両手で覆うように握って胸元にかかげ、上目遣いで小首を傾げてお願いしてきた。

 俺の好みのど真ん中の仕草なので間違いなく陽菜から指導を受けたな。


「仕方ないなぁ」


 あまりのかわいさについ許してしまうと、平川さんはさっそくレジに向かっていった。

 今日・明日は水生活だな、これは。


「真琴くんは食べない?」

「あ、うん、予算オーバーだから」

「……ワタシのお弁当食べる?」

「いいの!?」


 とっさに即答してしまった。

 お弁当少ないんだろうし本当は自重するべきなんだろうけど、恋人からの提案を断れるわけがない。

 それに水だけじゃ寂しいから少しでも何か食べたいというのもある。


「ただいまー、じゃあいこっか」

「え? あ、うん」


 ご機嫌な様子でレジから帰ってきた平川さんは食堂で食べる気満々のようだ。

 でも購買で買ったものを食堂で食べて良いんだろうか……。


「なによ、どっちも購入したものでしょ」

「販売店が違うんだけどそれは?」

「同じ敷地内なんだし大目に見なさいよ」


 その理屈だとショッピングセンターのスーパー部門で買った惣菜をフードコートで食べて良いって理屈になるんだけど……。


 平川さんが席を探し始めたのでとりあえず一緒に空席を探すと、かなり離れた所に空席があった。

 食器の返却口からかなり遠いあんなところに誰も座らないだろうしいいか。


「いただきまーす」


 席に座るとすぐに唐揚げのおにぎりにかじりつく平川さん。

 よほど美味しいのかニッコニコだ。


「真琴も食べ……って何もないじゃない」

「何も買ってないからね」

「どうする気なのよ」


 腰に手を当てて叱るような感じで俺に言ってくる平川さん。

 なんかお母さんって感じだな。


「仕方ないわね、アタシのマグロのヅケをあげるわ」

「俺の金で買ったものなのにあげるというのはこれ如何に?」

「一度もらったんだからアタシのものよ」


 なんというジャイアニズム。

 これからはヒラアンと呼ぼ……言いづらいからやめよう。


「はいこれ、でもこれだけじゃ足りないわよね」

「ワタシのお弁当分ける」

「え、お姉ちゃんのを!?」


 驚いている平川さんを尻目にお弁当を取り出す透子。

 小さめのお弁当を開けるとそこには色鮮やかな景色が広がっていた。

 ブロッコリーの緑、ミニトマトの赤、玉子焼きの黄色、きんぴらごぼうの茶色、ひじきの黒、そしてご飯の白。

 色が被らないように選んでいるのだろうか。


「どうぞ」


 まずはきんぴらごぼうを取ってみる。

 ぱっと見では綺麗に味が染みてそうだ。

 口に入れるとだしの味とごぼうのうまみがマッチしていて非常に美味しい。

 続けてひじきを口に入れるとこれも美味しい。

 今までひじきって鉄臭くてあんまり好きじゃなかったけど、これならもりもり食べられる。


「美味しすぎる……」

「お姉ちゃんは料理上手なのよ」

「え、これ、透子の手作り!?」


 嘘だろ、お母さんが作ったんじゃなくて透子の手作り!?

 しかも家庭的な料理をここまで美味しく作れるなんてすごすぎる。


「ドヤァ」

「……恥ずかしい」


 なぜ平川さんがドヤ顔してるのか分からないけど、透子が照れてる姿は最高にかわいい。

 え、もし結婚したら毎日この笑顔を見れて美味しいご飯も食べられるってこと!?


「ちなみにお姉ちゃんの好物はきんぴらごぼうだから」

「あ、あ、あ、ごめん、知らなくって!?」

「いい」


 わざわざ好物を奪ってしまうなんて申し訳ない。

 後で何かお返し考えておかないといけないな。


「真琴くんは何が好き?」


 気を使ってくれたのか透子から質問が来た。

 ここでさらっと透子と答えられるような人間ならモテるんだろうな。

 残念ながらそんなことは思っていても口に出せない。


「玉子焼きかな」

「わかった」


 透子はそう答えると箸で玉子焼きを掴んだ。

 え、もしかして!?


「……あーん」


 これが伝説のあーん!?

 夢にまで見た光景が今目の前にあるのに、現実のものだと信じられない。

 実はドッキリで、口を開けたら玉子焼きを奪われるんじゃないのか!?


「……いらない?」

「いります、食べます、大好きです」


 ちょっと拗ねたような声で言われたので即座に喜びを伝える。


「兄妹よく似てる」


 すると少し口元を吊り上げて口の中に玉子焼きを入れてくれた。


「甘い!?」

「え? 当たり前じゃない、玉子焼きよ?」


 平然とした顔で平川さんがツッコミを入れてきたけど、玉子焼きって甘い物なの!?


「うちのはどちらかというと塩辛いんだけど……」

「なにそれ」

「多分だし巻き」

「なにそれ?」


 俺と平川さんが何も理解しあえていない中、透子だけが理解できたらしい。

 きんぴらごぼうを食べつつ口を開いた。


「おひょうはう」

「はいはい、お姉ちゃん、口に入った状態でお行儀悪いよ」

「ん」


 会話するために一生懸命咀嚼している俺の彼女がかわいすぎる件について。

 しっかり飲み込んだ後、おもむろに口を開く。


「お正月のおせちに入っている玉子焼き」 

「あ、たしかにあれは甘くない!!」

「だし巻き」

「つまり真琴の家は年中お正月ってことね」

「違うよ!?」

「お年玉ちょーだい♪」

「仕方ないなぁ……はっ!?」


 陽菜みたいな行動だったからついあげようとしてしまった。

 これが妹属性というやつか。

 灯里ちゃんはこの手のことしないから気づかなかったけど妹属性って俺にクリティカルなのでは?


「真琴くん」 

「はい!! 透子が一番好きです!!」

「……恥ずかしい」

「……なんで突然お姉ちゃんに告白してるのよ」

「いや、違うんだよ、無意識に!?」


 なんか怒られた気がしてつい言ってしまった。

 ただその結果がかわいい笑顔だったから良いと思う。


「餌付けされたみたいね」

「だってこんなに美味しい料理食べたの初めてだよ!?」

「……褒めすぎ」


 そうこうしながらちょっとずつ食べさせてもらった。

 ちなみに透子は全部俺に食べさせようとしていたけどさすがに自重する。


「真琴くんが食べてくれない」

「透子のご飯全部食べたら透子がお腹すくだろ!?」

「気にしない」

「俺が気にする」

「……」


 唇をすぼめてちょっと抗議するような目で俺を見ている。

 正直、それもかわいい。


「じゃあ、明日から真琴くんの分を別に作ってくる」

「ぶはっ!?」

「げほっ!?」


 透子の言葉に俺と平川さんが同時に噴き出す。

 特に平川さんは口に入っていたので俺の方にもろにぶちまけた。


「ごめーん」

「ひどいことになった、謝罪と賠償を要求する」

「てへぺろっ」

「かわいい!?」


 完全に自分のものにしてしまったようだ。

 これは許すしかない。


「……久美、正座」

「はい……」


 だけど透子は許せなかったようで、平川さんに正座させられている。

 珍しい光景だけどこれもなかなか面白いし、素直に従う平川さんがすごくかわいい。


「真琴くんも」

「え、俺?」

「……」

「はい……」


 なぜか俺も平川さんの隣で正座させられた。

 おのれ……。


 そして次の日から本当に透子がお弁当を作ってくれるようになったけど、それで大騒動になったのはまた別のお話。

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