95.学祭の出し物
放課後。
いつもならチャイムが鳴るとほぼ一斉にみんないなくなるというのにまだたくさんの人が残っていた。
そして教壇では阿久津が何やら準備をしている。
なんか先生っぽくてイラっとする。
「さてここに残ってもらったメンバーは学祭への参加希望者だ」
意外と半数以上が残っていていつもの面子もいる。
まあ桐谷とか鳥海がいるのは意外だったけど。
「女子とペア組ませてもらえるらしいので」
「一時間程度で2000円分のチケットもらえるのはおいしい」
顔を見ただけで返事があった。
いや、もしかしたら口に出ていただけかもしれないけど。
まあそれはともかく、チケットをもらえるというのは予想外のボーナスだ。
透子と回る時の予算は確保してたけど、多いに越したことないもんな。
「学祭で何をやるかは決めておかないといけない」
阿久津が話を振ったけどみんなやる気なさそうだ。
そういうの決めるのって面倒だし俺も興味はない。
「展示でいいんじゃねー?」
「桐谷は展示希望、他には………………うん、じゃあ鳥海から順番にいこうか」
桐谷以外はろくに答えなかったので順番に聞いていくスタイルにしたようだ。
さすがに名指しされると答えざるをえない。
そうやって聞いたみんなの意見を黒板に書いていく。
ただ今のところ、展示希望ばかりだ。
店番だけでなにもしなくていいからそりゃそうか。
「藤田はどうだ?」
「たこ焼きの模擬店」
「ほう、初めて模擬店が出たな」
黒板に書きながらそう答える阿久津。
こころなしか楽しそうだな、あいつは模擬店希望か。
……陽キャらしいよな、爆散しろ。
「えー、面倒じゃね?」
「当日なにかするのはちょっとねー」
透子の発言を受けて反論する声が出てきた。
希望を聞いているのだから別に構わないだろうに。
ちょっとイラッとしたので俺もなにか言おうと思ったらその前に阿久津が口を開いた。
「模擬店は具体案が出たが、展示は何を展示するつもりなんだ?」
その言葉で一気に静かになる。
言われてみたらその通りだけど、みんな何も考えていなかったという感じだ。
「桐谷、何かあるか?」
「い、いや、具体的には何も……」
「鳥海は?」
「全然浮かばない」
「ふむ」
阿久津が難しい顔をしている。
冷静になって考えると展示って当日は楽だけど準備が大変だよな。
まず何かを調べたり用意したりして、フリップ?みたいなのを作って飾りつけをして……。
やることが目白押しでくらくらしてきた。
「いい案がありますよぉ」
「却下だ」
「まだ何も言ってませんのにぃ」
「せめて学祭の事前審査に通る展示にしてくれ」
「残念ですぅ」
名雪さんがなにか言おうとしたのにその前に却下されてる。
ただ審査に通るものと言われてすぐに引き下がった所を見るとやばいネタだったのか?
同人誌の歴史(BL)とかかもしれないな。
それにしても二人のテンポの良さはたしかに幼馴染と言われれば納得できる。
「ここにいない人は展示の準備も参加してくれない可能性は高いぞ」
学校行事の一環なので一部の授業の時間が学祭の準備時間となっている。
ただ学祭に参加する気がない人がその時に手伝ってくれるとは限らない。
むしろ遊ぶ時間として認識される可能性のほうが高そうだ。
「もしかしてかなり面倒?」
「私、作るの苦手」
ざわざわし始めた。
みんな当日のことばかり考えていて準備は何も考えていなかったらしい。
どうしようかと言い合っていると江川が手を上げた。
「なあ阿久津、模擬店の場合はどうなるんだ?」
「看板づくりとかメニュー表作りとかだな」
「なんだ、そっちもやることあるんじゃないか」
桐谷が呆れたような声を出す。
模擬店にも準備があると聞いて落胆したようだ。
周りのみんなもそれなら展示でいいかと言い始める。
「他には試食とかも出来るな」
その言葉で一気に静かになる。
特に女子の動きはてきめんだった。
「阿久津くん、どういうこと?」
大森さんが質問している。
こういうのにはあんまり興味ないと思ってたけど意外と興味あるみたいだ。
「何、模擬店出すなら作るのを練習しないと駄目だろう?」
阿久津がニヤリと笑って答えると、大森さんは少し恥ずかしそうに眼をそむけた。
早く爆弾が爆発すればいいのに。
っとつい本音が出てしまったけど、たしかにいきなり作れと言っても難しい。
絶対に練習は必要になるだろう。
「包むだけとかならともかくたこ焼きとかは実際に調理しないといけないからな」
たしかにいきなりたこ焼きを焼けと言っても出来ないだろう、関西人じゃあるまいし。
そして練習した以上は成果物が出来る、これも自明の理だ。
捨てるのはもったいないし、そもそも試食してみないと出来は分からない。
うん、完璧な理論だ。
みんなも同じ考えに至ったようで、明らかにやる気ゲージが上がった音がする。
「どうする、展示をやるか?」
阿久津が悪い顔をしながらみんなに聞いた。
こいつ答えが分かってるくせに聞いてやがるな。
・・・
「では、たこ焼きの模擬店で決定と」
たこ焼き屋の文字を丸で囲む。
結構激戦だったな。
焼きそばが二位だったけど終盤の追い上げがすごかった。
最初から候補に上がってたら負けてたかもしれない。
「お姉ちゃん良かったねー」
「みんなが賛同してくれたから」
「お姉ちゃんの作るたこ焼き楽しみだー」
「久美も作る」
「交換しようね」
「うん」
透子と平川さんが楽しそうに話している。
嬉しそうで何よりだ。
「えー、焼きそばがいい」
駄々をこねているのは大森さんだ。
どうやら焼きそば推しだったらしい。
ただ投票で負けたんだから諦めてほしいものだ。
「二つやれば良くない?」
「設備が二ついるんじゃないの?」
「あ、でもそれも借りればいいじゃない」
なんか大森さんグループの中で話が出来上がろうとしてないか?
ちょっと面倒なことになりそうだしここは阿久津に爆弾を渡せばいいか……ん?
なんと阿久津に爆弾を渡す前に自分から爆弾に向かっていった。
自殺志願か?
「大森、悪いが商品の大枠は一つってことになってるんだ」
「……別に二つだっていいじゃない」
「過去に手広くやりすぎてえらいことになったらしくてな、すまん」
「……阿久津くんが謝ることじゃないけど」
うそだろ、爆発寸前でなんとか抑え込みやがった。
なんという地雷処理能力、あいつはマインスイーパーと呼ぼう。
「さてじゃあたこ焼きで申請を出すとして……どうした?」
「お前にはマインスイーパーの称号をやろう」
「残念だが能見の周りに地雷は7個ほど見えるな」
「一か所しか逃げ道ねえじゃねぇか!?」
地雷だらけにもほどがあるわ。
俺のどこに地雷があるのか教えてほしい。
「ふむ、やはりそう言う理解か」
「最近理解したんだが、それは特に意味がなくいってるだろ!?」
「よく分かったな」
「人を馬鹿にするやつは地獄に落ちるんだぞ」
「まあまあ、普段はたしかにそうなんだが今は違うぞ」
「あ?」
「実際に能見は地雷原の中にいるからな」
「どこがだよ!?」
「まあいずれ分かるさ」
そう言って教室から出ていった。
まあ多分先生や実行委員会に報告に行くんだろう。
それにしても地雷原って何のことだよ。
あれか、江川とか桐谷とかに刺されるとかそういうことか?
しっと団は見苦しいということを理解してほしいな。
「彼女が出来たからって調子に乗ってるな」
「一度しめる」
「オレにまかせるだろ」
「まてまてまて、なんで翔が混じってるんだよ!?」
「お前の胸に聞いてみろ!!」
訳の分からない理屈でしめられてしまった。
おのれ。




