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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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94.契約魔法

一方そのころ。


「おい、真琴、見たか!?」

「何をだよ!?」


 夜とは思えないテンションで電話してきたのは翔だ。

 ただ主語が抜け落ちてるので何を言いたいかさっぱり分からないのでもう少し落ち着いて欲しい。

 まあ普段落ち着いているふりをしているが、素の翔はだいたいこんな感じで陽菜と同類なので気が合うんだろうな。


「はぁ!? 魔法大好き真琴様がまさか[サッカーファンサイト]をご存じない?」

「なんで魔法好きがサッカーのサイトを見ないといけないんだよ」

「名前で検索しろ、そうすれば全て分かるだろ」


 よくわからないけどそれ以上言わないので、しぶしぶ言われたとおりに検索してみる。

 すると多数のページやSNSの書き込みがヒットした。


「動画を見放題にする魔法……?」

「クソ高いサブスク入らなくても見放題、しかも投影まで出来るんだぜ!!」

「投影ってなんだよ、無限の剣製でもするのか?」

「動画の貯蔵は十分だろ」


 調べてみるとARみたいに目の前に画面が出てきて動画を見れるらしい。

 画面が出る、これ自体は比較的ありふれた効果だし、スマホから出力させるという手法も珍しいものではない。

 ただその前提となる[サッカーファンサイト]はすごい。


「これこそ魔法って感じだよな!!」

「むしろ科学が発展した近未来では?」

「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかないっていうだろ」

「魔法だよ!?」


 翔は動画を投影する方に興味を引かれているようだ。

 そっちもすごいけどなによりすごいのは[サッカーファンサイト]の方だ。

 ありふれた内容であるはずなのにこの魔法はすごい。


 大前提として、毎日の自動使用というのがあり得ない。

 これは今まで誰も作ることが出来なかった効果のはず。

 どういう制約や条件でクリアしたのか分からないけど、クリアしたという事実が重要だ。

 答えがないものを探すのと答えがあることが分かっているものを探すのとでは精神負荷がまるで違う。

 きっと一気に研究が進むに違いない。


 また魔法自体の発想も奇想天外だ。

 魔法と言うのは何らかの効果を代替 or 創造するものなのに、[サッカーファンサイト]は、《《通貨の代替にしている》》。

 魔法の効果自体はある意味で何もなく、お金の代わりにMPを支払っているという状態だ。 

 この発想はもはや発明と言っていい。

 今までいかに魅力的な魔法を作るかを考えていたのに、突然お金の代わりという概念が出てきたんだ。

 もしMPがお金になるのなら一般人は惜しみなくつぎ込むだろう。

 そうなれば宴会芸みたいな魔法にMPを使われることはない。


 次に大きいのは一般人のレベルアップだ。

 毎日自動で[サッカーファンサイト]が使用されるということは経験値が入るということでありレベルアップするということになる。

 レベルが上がればMPが増えるので他の魔法にMPを使う余裕が出てくるだろう。

 そこで魔法に興味を持たせてさらにレベルアップさせるということが出来てしまう。

 経験値を稼ぐということを自然に学習させることが出来るのがすごい。

 さらにすごいのは、動画を投影する魔法を個別に設定していることだ。

 この考え方もすごい。

 もし俺が作ったら[サッカーファンサイト]の効果で動画を投影し放題にすると思う。

 そうすると[サッカーファンサイト]だけが使用されることになり、経験値もその作成者に入るだけになる。

 でも投影する魔法を動画ごとに設定することで別の作成者に経験値をあげることが出来る。


 それだと利便性が悪くなると思ったら[サッカーファンサイト]から動画を選べば自動で魔法が使われるらしい。

 至れり尽くせりといった環境だ。


「どんな頭してたらこんなこと考えつくんだろうか」 


 出来るだけ手間を省いて一般人に魔法を使ってもらいやすくする、それを主張するのは簡単だ。

 ただその理想を実現するのは非常に難しい。

 それなのに[サッカーファンサイト]はそれを実現している、してしまった。


「きっと大変なことになるな」


 魔法にある程度詳しいものならきっと……。


ピリリリリー


 ん? この時間に電話? 翔のやつ、まだ話足りないのか? 


「真琴、大変よ!!」


 通話状態にして飛び込んできたのは、平川さんの興奮した声だった。

 明らかにボリュームを間違っているので耳が痛い。


「な、なんで俺の番号を?」

「陽菜ちゃんに聞いたの、ねえ、魔法見たでしょ!!」


 翔や阿久津相手なら『なんで勝手に番号聞いてかけてんだよ』とか『何の魔法だよ』とツッコむ所だけど平川さんだからなぁ。

 きっと興奮して誰かに伝えたくなったんだろう。

 そして魔法好きじゃないと伝わらないから俺だったと。


「あれすごくない!?」

「すごいよね」

「あの発想はなかったわ」

「うんうん」

「魔法分けてるのもすごいわよね!!」

「うんうん」


 マシンガンのように一方的に喋ってくるなぁ。

 いや、それ自体はいいんだけど返事を考える時間がない。

 とりあえず相槌を打って凌ぐしかないか。


「あー、なんで気づかなかったかなぁ」

「うんうん」

「絶対似たような魔法作れたと思うのよ」

「うんうん」

「安定収入っていいわよねー」

「うんうん」

「……ちゃんと聞いてる?」

「うんうん」

「……あ、お姉ちゃん!!」

「透子!? 違うんだよ、ちゃんと聞こうと思ってたんだけど……ってあれ?」

「ふーん、お姉ちゃんだとあっさり反応するんだ」


 やばい、適当に相槌売ってたのがばれたっぽい。

 声色から怒ってるのが伝わってくるぞ。


「明日学校でお仕置きだから」

「はい……」


 なぜ俺は墓穴を掘ってしまうのか……。

 この後もひたすら平川さんの話に付き合うことになってしまった。

 おかげで朝は寝不足だ。


 教室に入ると平川さんが嬉しそうに近寄ってくる。

 平川さんも夜寝てないはずなのに元気だな。


「なによ、眠そうじゃない」

「そりゃ眠いよ!?」


 普段は12時前に寝てるのに昨日はなんだかんだで3時まで話してたんだから当たり前だと思う。

 もしかして平川さんは普段から夜更かししてるのかな?


「夜遅くまで起きるのはつらいんだよ」

「真琴は体力なさすぎ」


 呆れたような声で俺にそう言う平川さん。

 でも絶対体力の問題じゃないと思う。


「翔に倣って筋トレしなさいよ」

「体力の問題じゃなくて平川さんが元気すぎなんだよ」

「そんなんじゃ女の子満足させられないわよ」


 また俺の肩をバシバシ叩いてくる。

 でも満足させるために夜遅くまで話を付き合わないといけないとか辛すぎる。

 透子はきっとそういうこと言わない。


 ん? なんだ? 何か殺気が。


「くわしーい話をうかがおーじゃないか、能見君」

「そうだな、何があったかキビキビ吐け、そして死ね」

「死ね」

「江川と鳥海は完全にアウトだろ!?」


 いつもの三人組が絡んできたけど今日は珍しく江川が過激だった。


「藤田という彼女がいながら平川に手を出すとは」

「万死に値する」

「あの世で僕に詫び続けろ」

「無実だよ!?」


 俺の言い分は聞いてもらえずそのまま強制連行で査問委員会開催となってしまった。

 寝不足なのにひどい話だ……。


 そして[サッカーファンサイト]は今日もその次の日も以降も安定してトップを取り続けた。

 まれに2位になっても次の日にはトップに返り咲いている。


 その理由は単純で毎日同じ数だけ自動で使われるからだ。

 普通の魔法は、魔法名を思い出して世界書を持って使う。

 たったこれだけの作業であっても意外と面倒だ。

 必要な状況になったら使うだろうけど、必要になるかもしれないで使おうとはしない。

 それは、たった一言いうだけで劇的な効果がある[対抗呪文]でさえ使用しない人がいることを考えればよく分かるだろう。


 そのぐらい自動で使用され続ける魔法というのは効果的なのだ。


「とはいえ自分で作れないなら、ってうわっ!?」


 情報を調べたらもう自動使用のやり方が解析されていた。

 やっぱり成功例が存在すると解析も進むんだな。


 そこからはあっという間に自動使用の魔法が人気ランキングに入ってきた。

 一度人気になってしまえば落ちることがないから当然と言えば当然。

 雨後の筍のごとくみんなが自動使用の魔法を作るようになっていった。


 そして自動使用の魔法という言葉が長いせいか、契約魔法と呼ばれることが増えていった。

 といっても一般的な契約とは意味が異なる。

 毎日一定のMPを自動で支払い続ける魔法を契約魔法と呼んでいる。

 サブスクリプションという言葉が近いんだと思う。


「そしていまじゃあ契約魔法のランキングになった、と」


 安定して人気を得ている魔法の中に単発の魔法が割り込むのはかなり大変だ。

 たまにランク入りしてもすぐに消えてしまう。


「まるで小説での閲覧数による人気ランキングみたいだ……」


 小説でも閲覧数で人気が決まるタイプのランキングでこういうことになる。

 長期間ランキングが変動しないから次第に見なくなっていくんだよな。


「新規開拓どうしようかなぁ」


 人気ランキングの下の方まで見ても大体契約魔法ばかりで変化に乏しい。

 新規開拓の方法を考えていかないとなぁ。


*******


 もしかしたらこれが始まりだったのかもしれない……。


*******

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