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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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93.新しい方向性

とあるドームの会長専用室。


 そこにはひげの目立つ老人とラフな格好の男が向かい合っている。


「で、その話は事実なのかね?」

「信じるも信じないもあなた次第です」

「だがなぁ、M資金詐欺とかあっただろう?」


 ひげの目立つ老人がラフな格好の男にそう言っている。

 この時代に珍しい長く伸ばしたあごひげの老人を知っている人は多い。

 その特徴的な見た目や経団連の理事であることもさながら、なによりサッカーチームのオーナーとして頻繁にメディアに出るからだ。

 独自の理論で語るサッカー論は賛否あるものの、他のオーナーが何もしない中でただ一人積極的にサッカーのPRを行う姿は印象に残っている。


「せめて何か根拠がないのか?」

「ご自身でお持ちの世界書で確認されるといい」

「確認と言ってもな、ミヤさん」


 ひげ老人は世界書を使ったことがない。

 いまさら叶えたい願いなどそうそうないからだ。

 しかもミヤの言う通りなら一朝一夕で確認できるわけがない。


「仕方ない、こちらを」


 ミヤがそう言って出してきたのは契約書だった。

 今さっきの話と同様のことが書かれており最後に契約金額が書かれている。

 ただしその契約書は既にサインと補足事項が書かれていた。

 ひげ老人はその名前に目を剥く。


「工藤が契約しただと!?」


 ひげ老人と工藤という老人は終生のライバルといえる。

 昔からなにかにつけて競い合い切磋琢磨してきた。

 サッカーチームも元々は工藤と競い合った結果オーナーになったものだ。

 だからこそ契約書のサインが本人の筆跡であることが分かる。

 あのようにグチャグチャとした汚いサインは誰にも真似が出来ないだろう。


「自分は後回しで若手20名を優先、か……」

「ええ、工藤さんは新しいところでもサッカーを広めたいらしいですね」


 サッカーの未来のための投資、工藤はそこまで考えていたのか。

 目先のPRにこだわっていた自分が恥ずかしくなる。


「少し広告費を削ってこちらに投資するだけですよ」

「わかった、人数は20人で良いか?」

「枠の確保状況次第ですかね」


 乗り気になったひげ老人を見てもまったく態度が変わらないミヤ。

 それを見てひげ老人はますます信憑性が高い話だと感じた。


「どうすれば枠は増える?」


 その言葉にミヤは少し感心した。

 今までの交渉相手はこの段階だと『自分を優先させろ』と言ってきていた。

 優先するならさらに金がいると言われて、そこでようやく枠を増やす協力を申し出てくる。

 そんな相手ばかりだったのでひげ老人の反応は新鮮だった。


「それならPRを一つお願いしましょうか」

「……なんのだ?」

「いえ、簡単なことですよ」


・・・


後日。


 テレビのサッカー番組の特集にひげ老人が出演していた。

 ひげ老人が定期的に出演している番組であるが、今日は少し気合が入った格好をしている。


「今日は佐久間さんにお越しいただいています」

「どうも、佐久間です」

「あいかわらずおひげが素敵ですね」

「ありがとうございます」


 ミヤと会っていたときより落ち着いた態度。

 テレビという大舞台であるはずなのにそこに緊張は見られない。


「今日はなにかお伝えしたいことがあると伺っています」

「そうですね、サッカーに関して新しい事業を始める予定です」

「というと?」


 女性アナが続きを促してくる。

 その態度からは多少興味はあるようだが特に期待はしていないという感じに見える。


「最近流行りの魔法というものを取り入れた動画配信です」


 女性アナの態度を気にも止めず佐久間が説明を始めた。

 曰く、本来なら有料配信されているサッカーの試合だが魔法を使うだけで全試合を無料で見ることが出来ることになるという。


 その言葉に女性アナは興味を惹かれたようで若干前のめりになる。

 サッカー番組に出演しているだけあってサッカーは好きなんだろう。

 前のめりになったせいで大きなおっぱいが机に潰されている。


「また他のプラットフォームとの差別化として記憶と投影が可能になります」

「記録はわかりますが投影とはなんでしょう?」

「少し分かりづらかったですね、投影とは記録した映像を幻覚として眼の前に出現させることです、ホログラフみたいなものですね」

「なんですか、それ、すごいじゃないですか!?」 


 女性アナは完全に前のめりになり、がっつりと素を出していた。

 だいぶ失礼な態度であるが、この女性アナウンサーは興味があることにこういう反応をするのが有名だ。

 視聴率も良くなるので佐久間も特に咎めない。


「え、眼の前って何の機材もなしですか!?」

「動画の選択・記録にスマホを使っているので手に持つ必要はあります」

「ええー、それは不便ー」

「動画というのは科学側の技術ですから」


 このあたり、佐久間自身も詳しく理解はしていない。

 ただミヤから想定質問集と回答をもらっていたので覚えているだけだ。 


「いつから使えるんですか!?」

「近日中を予定しています」

「うわぁ、楽しみ、画面の拡大とかも自由にできるんですか!?」

「いえ、詳細まではちょっと……」


 女性アナの勢いに佐久間は少し戸惑っている。

 無料という方ならともかく投影の方にここまでがっつり食いつかれると思っていなかった。


「こ、こほん」


 佐久間が引いているのを理解したのか嘘くさい咳をして姿勢を正し真面目な態度に戻る。


「これは素晴らしい事業だと思いますがどうやって採算を?」

「サッカー普及のための投資というやつです」


 女性アナは感心した様子だ。

 ただ佐久間からすればあくまで《《ミヤの頼みを聞いているつもり》》だった。

 しかしここまで反応が良いなら真剣に投資するのも悪くないと考え始めた。


「いつも使い切れずに溢れるだけの無駄なMPで見れるというのが素晴らしいですね」


 これが一般人にとっての理の価値である。

 ド派手な効果には興味があるもののそれを使えるほどMPはなく、ちょっとしたことであれば理でなくても事足りる。

 はっきり言うならもらっても使い道に困るものだ。


「毎日自動で魔法を使ってくれる機構もあり、見たいと願えばすぐに見ることが出来ます」

「それはお手軽でいいですね!!」


 女性アナは乗り気のようだ。

 座りながらぴょんぴょんとはねているので視聴率も跳ねている。

 女性アナからすれば毎日無駄にしているMP《《程度》》で動画が見放題なら素晴らしいことであり《《仮に見なかったとしても損はない》》。


 先ほども言ったように一般人にとってMPというのはお金や時間より価値の低いものである。

 しかもあふれて垂れ流しになっているようなものなので、支払うことにためらいはない。

 名称を唱えるだけの簡単な作業であれば無料会員の登録よりハードルも低い。


「[サッカーファンサイト]をよろしくお願いします」


 佐久間が頭を下げて番組は終了した。

 放送終了後にTVやネットで大きく話題となり、その日の人気ランキングのトップはあの[真実の目]を抜いて[サッカーファンサイト]であった。 

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