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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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126/126

126.模擬店のペア

 文化祭直前のある日。


「大変遺憾なんだが、平川とペアを組んでくれないか?」

「なんでだよ!?」


 阿久津から屋上に呼び出されたと思ったら、とんでもないことを言われた。

 せっかく透子と一緒にたこ焼き作れると思って楽しみにしてたのになんでそんなことになってるんだよ。


「平川が人気すぎてペアが決まらないんだ」


 模擬店の店番は基本二人でやることになっている。

 俺も含めてみんないつ発表なのかとざわついていたけどまさかまだペアが決まっていないとは思わなかった。


「だからってなんで俺なんだよ」


 理由は分かったけど別に適当に決めてもいいし、何なら女子と組めばいい。

 俺である必要性がないだろう。

 そう答えると阿久津は難しい顔をしている。


「平川がペア要望を出してたのがお前だったからだな」

「は?」


 難しい顔から出てきた阿久津の返答は予想外のものだった。

 平川さんが俺を?


「平川の要望を通したという形なら角が立たない」

「いやいやいや、俺は透子とペア組めるっていうから参加したのに」


 そう、角が立たないのは分かったけどそれとこれとは話が別だ。

 透子とペアを組むの楽しみにしてたのに突然覆されても困る。


「あの時も要望通りにペアになるかは分からないと言っておいただろう?」

「……そうだっけ?」

「まあ能見には非常に申し訳ないと思っている」

「本当にすまないという気持ちで………胸がいっぱいなら……!  どこであれ土下座ができる」

「土下座するのもやぶさかではないが、した方が良いか?」

「いや、いい」


 真剣な顔でネタに返されると厳しい。

 どうやら本気で言っているようだ。

 うーん、たしかにペアの件は確定できないと言っていた気はする。

 それに阿久津の態度を見る限り真剣に悩んでいるように感じるしなぁ。


「一応お詫びとして学祭のチケットを渡すので店番の後は藤田と一緒に行ってくれ」

「何のチケットだ?」

「それは当日のお楽しみだ」


 ふむ、そういうメリットがあるならありかもしれない。

 情けは人の為ならずって言うし、たまには人助けするか。


「わかった、ただし何かあったら全部お前に振るからな」

「ある程度は受け持とう」

「全部持てよ!?」

「春日井が藤田とペアを組むとしたら誰に恨みを持つ?」

「阿久津と翔」

「そういうことだ」


 たしかにペアを決めた相手だけじゃなく実際にペアを組む相手にも嫉妬するか。

 平川さんは美人だし恨みに持つやつ多そうなのが気になる。

 ……撤回したほうがいいかもしれない。


「ちなみに録音は終わっているから撤回は無理だぞ」

「最低だな!?」

「用意周到と言ってほしい」


 ポケットからICレコーダーを取り出して見せる阿久津。

 そういえば前もこのパターンだった気がするぞ。


「まあ藤田は綾瀬とペアだからそこは安心してほしい」


 そうだ、そこを考えてなかった。

 もし他の男子とペアだったら録音されていようが撤回していた。


「ってなんで名雪さんと?」

「……まあ少し事情があってな」


 なるほど、名雪さんもペア相手がいなかったということか。

 ただ男子や和泉さんはともかく橘さんとはペア組めると思ったけど違うのだろうか?


「よし、用件は終わったし帰ろう」

「一緒に帰って友達に噂とかされると恥ずかしいし」

「たしかに春日井と桐谷に嫉妬されてしまうな」

「そんな関係じゃないよ!?」


 ちょっとネタを言っただけなのにひどい返しを見た。

 なんで男に嫉妬されないといけないんだよ。

 ん? いや待てよ?


「そうか、阿久津がモテすぎってことか」

「いや能見の話だが?」

「謙遜するなよ、三角関係だか四角関係だかなんだろ?」


 阿久津はカップリング相手として大人気だと聞いたことがある。

 橘さんが『非の打ちどころがない人がネコ側になるのがいいんだよ』と熱く語っているのを聞いたから間違いない。


「どうやら俺はやり捨てられる側らしくてな、カップルとはみなされないらしい」


 諦観した表情で語る阿久津。

 ちょっとからかったのは悪かったかもしれない。


「ただ能見は大人気で取り合いになっているぞ」

「それはそれで嫌だよ!?」


 そんな話をしながら屋上を出て教室に入ると寒気がする。

 寒気の元を探すといつもの三人組がこちらを見て気持ち悪い笑みを浮かべていた。


「ヘタレ攻めの能見✕誘い受けの阿久津か……ありね」

「オーソドックスなガン攻めの阿久津君✕全受けの能見君もありだと思う」

「その時次第のスイッチ型もありだと思いますねぇ」


 とうとう和泉さんまで闇落ちしてしまったらしい。

 江川もそのうちリアルで絡まされるに違いない。


「真琴ー、どこ行ってたのよ?」

「ちょっとね」

「カップルの密談?」

「平川さんまでそれ言う!?」

「嘘よ、嘘」


 背中をバンバンと叩かれる。

 うん、明らかに男子の目が集まってるよな。

 まあこんな美人が楽しそうにしてたら当然か。


「何、アタシの顔になんかついてる?」

「あ、いや、別に」

「え、じゃあもしかして見とれてた?」

「違うよ!?」


 俺が否定すると笑いながらヘッドロックしてきた。

 おっぱいが押し当てられるのは嬉しいけど、意外とちゃんとしたヘッドロックなのでけっこうきつい。

 プロレス好きなら翔と趣味合いそうだよな。


「ギブギブ」

「ギブミー?」


 声はかわいらしいけどやってることはえげつないぞ。

 やばい、ちょっと本気で息が苦しくなってきた。


「それぐらいにしといてやってくれ、相談に乗ってもらったんだ」

「そうなんだ」


 するっと手を離す平川さん。

 助かったけどなぜみんな阿久津の言うことは聞くんだよ。


「さてみんな放課後に店番のペアを発表するから残ってくれ」

「おおー」

「楽しみだ」

「要望通ったかな」


 阿久津の言葉に盛り上がる教室。

 みんなノリ良いな。

 そしてちょうど時間だったようでチャイムが鳴ると同時に先生が入ってくる。


「お前ら、授業を始めるぞ……って阿久津が中心なのは珍しいな」

「すみません、放課後の予定を伝えていまして」

「そうか、まあとりあえず座れ」


 あっさり許されて席に戻る阿久津。

 おかしい、俺たちの時とは待遇が違いすぎる。


・・・


次の休み時間。


 透子をちょっと強引に教室から連れ出す。

 普段あまりこういうことはしないのでちょっと驚いているようだった。


「ごめん、どうしても放課後前に言っておかないとって思って」

「どうしたの?」


 少し首をかしげる仕草で聞き返してくる透子。

 正直かわいすぎる。


「模擬店の店番が平川さんとペアになったんだ」

「……そう」


 特段変わった反応はない。

 ただ誤解されるのは嫌だしちゃんと説明しておこう。


「平川さんが人気すぎるから要望を叶えた形で」

「……」

「阿久津がどうしてもって言うから仕方なく」

「……うん」

「二人とも店番ない時に一緒に回ろう」

「…………わかった」


 返事に若干間があったけど、それ以上何も言うことはなく教室に戻っていってしまった。

 ちょっと不安だけど一応大丈夫かな。


・・・


 そして放課後。

 ペアの組み合わせが発表されると平川さんが驚いた顔で俺の元にきた。


「アタシと一緒でいいの?」

「後で透子と一緒に回るから大丈夫」


 それを透子に伝えた時の微妙な間が気になったけど……。

 まあそれを平川さんに伝えても仕方ない。


「楽しみにしてる」

「え、あ、うん、そうだね」


 思いもよらない笑顔で返されたのでちょっとうまく返事が出来なかった。

 何がそんなに嬉しかったんだろうか。


「久美、ちょっといいか?」

「なによ、あんたは彩音とペアでしょ」

「よく知らない子だから教えてほしいだろ」

「まったくもう」


 何か言おうと思っていたらその前に翔に連れていかれてしまった。

 なんだろう、何か失敗している気がする。

 そう思ったのにどうすればいいかは分からないままだった。

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