表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

112/126

112.交通事故

 絶対に負かしてやると決意をしつつ家路につく。

 でも怒りなんてそうは長く続かない。


 帰ったら勉強かぁ、面倒くさいなぁ。

 はっきり言って魔法でカンニングするのは非常に簡単だ。

 テレパシーみたいなものだけじゃなく教科書の記憶や隣の答案の覗き見や回答している動作のコピーといったさまざまな方法がある。

 今までそれを言われなかったのは全般に消費MPが高いからだ。


「だから今だとなぁ」


 今の俺のMPは8000を越えている。

 これだけあれば大抵のことは出来てしまう。

 事実、世界書で有用な魔法を見ても大抵100前後だ。

 これとか面白いよな、摩擦力を軽減し弾力も持たせるとか。

 ただ肌の魔法っぽいのに服や靴にまで適用されるから無駄に肌触りの良い感触になるのが笑える。

 この手の魔法は接触していれば他人でも効果あるので手を掴んで魔法を使えば面白そうだ。


「あ、真琴さーん」

「ん、尊か」


 声のした方を見ると道路の向こうに尊とバカでかい犬がいた。

 どうやら散歩をしているらしいけど、バカでかいゴールデンレトリバーは尊と大して変わらない大きさなので、どちらが散歩させてるのか分からない。

 こちらを見ながらうろうろしているので道路を横断しようか迷っているっぽい。


「道路に出ると危ないぞー」

「すぐそこに横断歩道ありますー」


 うーん、でかい犬ってちょっと苦手なんだけど……。

 まあ一応こっちも横断歩道前で待機しておくか。

 お、どうやら車が譲ってくれたらしい。

 いや交通法規的には横断しようとする歩行者がいる場合は先に通さないといけないんだっけ。

 横断歩道を渡る尊を見ながら何の気なしに反対側を見る。


 ……やけに速度早くないか? 

 普通車ならともかくトラックであそこからブレーキをかけても制動距離が長すぎるんzy!?


「尊、逃げろ!!」

「え? わっ!?」


 しまった、下手に声をかけたせいで足が止まってる!?

 そうだ、魔法!!

 今さっきまで見ていた世界書で正確な魔法名を見て尊のもとに近寄る。

 犬が必死に尊を引っ張ろうとしているが尊は腰が抜けて動けないようだ。

 近寄って尊と犬を触りながら魔法名を叫ぶ。


「【理想の肌を】最大出力!!」


 魔法を使った瞬間にバランスを崩してこけてしまう。

 そうか、弾力がある上に摩擦力が軽減されてるから!?

 本来なら立った状態で跳ね飛ばされる想定だったのにこのままではトラックの下に入り込んでしまう!?


 ……運が良かったのはトラックが急ブレーキをかけたことと潜り込み防止のカバーをつけていたことだろう。

 急ブレーキは前面がかなり沈み込む、加えてカバーがあることでトラックの下に入ることはなくそのまま前方に押し出された。


「よし、これなら!!」


 トラックに跳ね飛ばされたにも関わらず無傷である。

 その理由はさっきの魔法だ。

 接触事故で怪我をするのは、運動エネルギーによって体が変形させられるためだ。

 そして変形が不可逆であるため怪我として残る。

 つまり十分な弾性があり変形が可逆範囲であるならば怪我は残らない。

 ただしその分運動エネルギーは維持されるが……。


「【エネルギー電気変換】運動エネルギー変換で手から放出!!」


 これはエネルギーを電気に変換する魔法だ。

 指定したエネルギーを直接電気に変えることが出来るという画期的な魔法。

 発電というのは基本的にエネルギーを熱に変えて蒸気の力でタービンを回して発電している。

 (太陽光発電などの例外はある)

 つまりわざわざ熱を経由してお湯を沸かしてタービンを回しているということだ。

 それが直接電気に変わるとなれば非常に画期的だ。

 と、現代科学では難しいことをやっているのだけどひとつ致命的な欠陥がある。

 《《変換効率の極端な低さだ》》。

 変換元のエネルギーの種類によって変わるが1%どころかさらに下の変換効率となっていて実用に耐えない。

 なのでみんなこの魔法を改良してどうにか効率を上げられないか模索している。


 《《ただこの状況ならむしろ好都合》》。

 この魔法なら運動エネルギーを単純に浪費することが出来る。

 そのおかげで少し離れた所で停止した。


「え、え、え?」


 尊は現状が全く理解できていないようだ。

 まあトラックに跳ね飛ばされたと思ったらいきなり静止したので当然かな。

 犬の方は……うん、大丈夫そうだ。


「き、き、きみたち大丈夫なのか!?」

「はいなんとか」


 トラックの運転手が飛び出てきて俺達に声をかけた。

 ただ俺達がまったく怪我をしていない様子なので目を丸くしている。


「これは……一体……」

「とりあえずトラック動かしましょうよ」

「あ、ああ」


 さて一応交通事故だし警察と救急車が来るだろう。

 いくら弾力を持たせていたといえどこか怪我しててもおかしくないし病院には行ったほうがいい。


「ま、真琴さんのおかげなの?」

「あー、うん、おかげといえばおかげかな」


 ようやく少し落ち着いたようで体をペタペタと触っている。

 あの様子だと支障はなさそうだな。


 救急車が到着すると問答無用で乗せられた。

 事故の目撃者が激突の衝撃の大きさを伝えていたからまあ仕方ない。


 病院で検査を受けたけど至って正常、念の為一日入院となりはしたけど。

 ただまあ大変だったのはその後だ。

 両親はともかく陽菜が大泣きをして手がつけられなかった。

 わざわざ飛び出すとは何事だとか人より自分の身の心配をしろとかを耳元で叫ばれ続けるのはつらい。

 今は泣き疲れて寝てしまっているけど、その姿だけ見るとどちらが怪我人か分からないな。


「陽菜は心配してるのよ」

「十分分かったよ」


 母さんはこういう時も冷静だ。

 この人が取り乱すことなんてあるのだろうか。


「危険なことをした、それは分かってるな?」

「分かってる」

「ならいい、よくやったな」


 父さんが頭をわしゃわしゃしてきたので恥ずかしい。

 もうそんな年じゃねえよ。


「しかしどうやったんだ、やっぱり魔法なのか?」

「あ、うん、そう」

「……そうか」


 なんで苦虫を噛み潰したような顔しているんだ?

 魔法だったら何かあるんだろうか。


「おーい、真琴、お見舞い持ってきただろ」

「真琴、大丈夫!?」

「……元気そう」


 翔が透子と平川さんを連れてやってきた。

 両手に花とか爆散しろ。


「ふむ、元気そうだろ」

「うんうんツッコミ待ちの顔してるわね」

「してないよ!?」

「良かった」


 翔と平川さんはからかいに来ただけかよ。

 心配してくれるのは透子だけだ。


「あら、透子ちゃん、こんにちは」

「こんにちは」

「有希、知り合いかい?」

「真琴の彼女さんですよ」

「彼女!?」


 父さんがびっくりしすぎてひっくり返りそうになっている。

 そこまで驚くことはないだろう。


「え、こんな美人さんが真琴に?」

「そうですよ、……それとは別に話がありますのでこちらに」

「え、いや、有希のほうがもちろん美人だよ、でもね……」


 父さんが耳を引っ張られながら病室から出ていった。

 母さんの前で他人を褒めるからこうなる。

 父さんが母さんに依存しているように見えて意外と母さんも依存度高いんだよな。


「相変わらず仲良さそうだろ」

「え、あれで?」

「愛情表現だな」

「なるほどね……」


 平川さんが納得したような顔してるけどそこは理解しなくて良いと思う。


「……怪我は?」

「あ、全然ないよ、ほら」


 透子が無言で世界書を出して何か操作している。

 透子が魔法使うイメージなかったけど、迷いなく手が動いているし実はけっこう使っているのだろうか?


「……分かった」


 世界書を閉じてすこし口角を上げて返事が返ってきた。

 多分満足行く結果だったのだと思う。


「よし、じゃあお見舞い置いとくだろ」

「……念の為聞くけどそのりんごは?」

「お見舞いだろ」

「普通はフルーツの盛り合わせとかだよね!?」

「【残像だが何か?】」

「魔法で見た目だけ増やしても分かるよ!? っていうか魔法名で残像って言ってるよね!?」


 こいつ金をケチるために魔法で誤魔化すとか最悪だな。

 しかもりんご持って来るにしても普通何個か持ってくるだろ、なんで一個なんだよ


「ごめん、真琴、気が利かなくて……」

「平川さんは悪くない、悪いのは全部翔だ」


 こういうのは発案者がすべての元凶だからな。

 きっとりんごひとつで十分とか言ったに違いない。


「ほほう、ならこいつはいらないな」

「……皿とナイフとフォーク?」


 翔がニヤニヤしながら鞄から三点セットを取り出した。

 でもそれを何に……。

 すると透子が椅子に座り翔がそれを手渡した。


「え、まさか」


 慣れた手つきでリンゴの皮を剥いていく。

 全然角が立っておらず丸いままなのがすごい。


「すごいでしょ」

「すごい」

「お姉ちゃんは料理すごいんだから」

「うん、いつも食べてるから知ってるけど」


 というか一緒にお弁当食べてるから知ってるよね?

 ほんと、平川さんはことあるごとに透子をほめるのが好きだよな。

 そこら辺の実の姉妹より仲いいんじゃないかな。


「今日はワタシの役目」

「あ、ずるい」

「今日は……? ずるい? 聞き捨てにならない言葉が聞こえただろ」


 翔が腕をパキパキ鳴らしながら近づいてきた。

 まずい、あれは本気の目だ。


「あの世で俺に詫び続けろ、真琴ー!!」

「何をだよ!?」


 その後、病院で暴力をふるったと言われてなぜか翔と俺が怒られた。

 げせぬ……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ