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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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111/126

111.カンニング

「陽菜、ちょっと来てくれるかー?」

「わかったー」


 《《一階にいる陽菜に連絡をする》》。

 そう、MPさえあればこういうことも出来てしまう。

 やっているのは電話と同じ原理だ。

 マイクとスピーカーに相当するものを魔法で陽菜の顔の近くに作成する。

 とはいえ陽菜には事前にマーキング魔法を使わせてもらっていて見えなくても対象に出来ることだけど。


「どうしたの?」


 笑顔で部屋に入ってくる陽菜。

 うんうん、あの速度からしてかなり頑張ってきたな。

 ただそういう顔をしているとついからかいたくなってしまう。


「ただ呼んでみただ、ぐふっ」


 言い終わる前にパンチがお腹に飛んできた。

 腰とねじりが入っていてかなり痛い。


「お兄ちゃん、冗談は頭だけにしなよ」

「馬鹿じゃないですけど!?」

「翔さんからは『真琴? ああ馬鹿だぞ』って聞いてる」

「あの野郎、ぶっとばしてやる」


 陽菜にあることないこと吹き込みやがって。

 そんなことをするなら俺も灯里ちゃんにあることないこと吹き込むぞ。


「で、何の用だったの?」

「ああ、ちょっと検証していてな、今俺の声はどう聞こえる?」

「ステレオっぽい」

「お、やっぱりか」


 今の魔法だと電話とかトランシーバーと同じ状態なので近くで話すと二重に聞こえるという予想だったが当たっていた。

 これだと近くにいる時に煩わしいので何か改善が必要だな。


「でもあんまり気にならないよ?」

「あれ、そうなのか?」

「うん、多分音質もタイミングも変わらないからだと思う」


 なるほど、だから『ステレオっぽい』なのか。

 さっそく陽菜の感想を書き留めておく。

 実際に使った人の意見が一番重要なのできちんと記録を取っておかないといけない。

 そうしないとすぐ忘れるし。


「なら無理に音を消す必要もなさそうか?」

「ないと思う」


 よし、それならこの魔法で十分実用性があると言うことだ。

 注意書きを記録してノートを閉じる。

 こういうのも魔法で全て片付けたいんだけどなぁ。


「お兄ちゃん、どうだった?」

「期待通りの効果だったし陽菜の感想が役に立ったぞ」

「えへへー」


 頭を撫でると嬉しそうに手を握ってくる。

 気軽に検証につきあってくれる人間がいるとほんとに楽だ。

 翔だとぜったい面倒だからな。


「明日は好きなもの買ってやるからな」

「え、やった!! じゃあチョコモナカジャンボね!!」

「お腹壊すぞ」


 自重する気はない妹であった。


・・・


次の日の朝。


 教室に入ってきたのは学年指導の寺内と担任の栗林先生だった。

 寺内は厳格で厳しい昔ながらの人間だ。

 特に規律違反には強い態度でもって望む。

 ただし半沢と違って自身に甘いタイプではないので、調査にかこつけて持ち物を没収するような真似はしない。


 そんな寺内がわざわざ担任を伴ってくるということはクラスに対して伝えたいことがあるということだろう。

 みんな一斉に静かになって教卓を見ている。


 落ち着いたのを確認して寺内が口を開く。


「今回のテストでカンニングがあった」 


 その言葉で一気に周りがざわつく。

 今までカンニングという言葉を聞いたことはあっても現実にそんなことをする人がいるとは思ってなかった。

 だけど寺内がわざわざ教室に来て言うなら事実なんだろう。 


「内容は試験中に回答を共用していた」


 つまり隣の席とかで内容を教えあったとかだろうか。

 試験の監視なんてそこまでしっかりやってないので、視力さえよければ簡単に見せあえるだろう。

 そう思っていたけど次の言葉で否定された。


「犯人たちはそれぞれ別の教室でテストを受けていた」

「はい? どういうことだよ?」


 桐谷が即座にツッコミを入れる。

 だけどまあそれぐらいなら想像がつく。

 おそらくマイクとイヤホンを隠し持っていたんだろう。

 寺内もそこは織り込み済みだったようで会話を続ける。


「ただ奇妙なことに《《何も持っていなかった》》」

「せんせー、何も持ってないなら無実じゃないんですか?」


 桐谷が質問しているけどその通りだ。

 何を根拠にカンニングと言っているのか。


「良い質問だ、なら全ての回答、文章問題の誤答の書き方まで含めて一緒になる可能性はあるか?」


 みんなシンとする。

 たしかにそれは非常に疑わしい。

 マークシートならまだしも任意に記述できる部分で誤答が被る可能性は少ない。

 それらすべてが一緒となれば疑いたくもなるだろう。

 ただ……。 


「学校としてはカンニングとみなして処分を行った」

「……推定無罪はどこに?」

「結果が出ている、それ以上に言うことはない」


 また思わず口に出していたけれど、寺内は特に気にせず答えてくれた。

 そうか、学校としては有罪という判断なのか……。


「くれぐれもおなじことをしないように」


 そう言って教室を出ていった。

 わざわざこれを言いに来たのはそれだけ学校が重く考えているということだろう。

 ただ恐ろしいのは状況証拠だけで処分したということだ。

 今回は記述式があったからまだ黒だと言えないこともない。

 でも今後はカンニングする側もある程度対策してくるだろうし、その時にどこまでアウトとするのかが怖い。


・・・


休憩時間。


 阿久津が俺の方に近づいてきたけどきっと質問があるのだろう。

 聞きたいことの想像は出来ている。


「なあ能見、魔法でカンニング出来ると思うか?」

「……出来る」

「そうか」


 阿久津は席に戻っていった。

 あいつはそれだけで理解したのだろう。

 具体的な方法を言えば誰かが真似をするかもしれないので話さないに越したことはない。

 そしてさっきからチラチラと様子を伺う女性の姿が目につく。


「どうしたの、平川さん?」

「え、その……アタシは真琴がカンニングなんてしてないと思ってるから!!」


 平川さんがぶっこんできた。

 いきなりカンニングの話をするなんて、それはある意味疑ってますよと言っているようなものでは……?


「ち、ちがうの、そうじゃなくて!!」


 どうやら俺の思っていることを察したらしく慌てて説明をし始めた。

 ただ思いついたことを片っ端から言ってる感じで全然説明になっていない。

 前から思ってたけど平川さんって想定外の事態に弱いよな。


「だからね、その、アタシは信じてるっていうか」

「久美、もっとシンプルな答えがあるぞ」

「え?」


 必死に説明する平川さんに翔が声をかけた。

 シンプルな答えねぇ、是非聞きたいものだ。


「真琴の成績でカンニングしてるわけないだろ」

「馬鹿じゃないですけど!?」

「たしかにそうよね!!」

「納得するのやめて!?」


 最低すぎる答えだった。

 いやまあたしかにカンニングなんてしてたらあの成績な訳ないけど。


「つまりここから上がったらカンニングということだろ」

「努力かもしれないよね!?」

「えー、真琴が努力するの?」

「するよ!?」

「大丈夫だぞ久美、真琴は口だけの男だろ」

「何が大丈夫なんだよ、まったく擁護してないよね!?」


 この野郎、最低すぎる。

 俺だって努力することぐらいあるよ!?


「ほほう、では次回のテストで是非成果を見せてもらうだろ」

「いい度胸だ、やってやる」

「ついでに久美も真琴と勝負するとよいだろ」

「上等」

「では解散」


 そう言って話を打ち切って席に戻っていった。

 あの野郎、自分勝手にもほどがあるな。

 平川さんも自分の席に戻っていったけどこころなしか嬉しそうに見える。

 何か良いことでもあったんだろうか?

 せいぜい勝負することが決まったぐらいしか……あれ、そういえばいつのまに平川さんと成績勝負することになったんだ?


「さすが自爆ネタの能見」

「負けたら全力で笑ってやるよ」

「楽しみ」


 鳥海の『楽しみ』っていうのは絶対俺が負けるのが楽しみって意味だよな。

 ふざけやがって、絶対目にもの見せてやる。

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