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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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108/126

108.助言

「なあ能見、普段藤田と何を話しているんだ?」


 目の前には江川がいる。

 そしてわざわざ屋上まで呼び出されたから来てやったのに第一声がこれだ。

 まずは挨拶するとかもう少しコミュニケーションというものを覚えてほしい。


「なんてことない話かな」

「それが難しいんだよ」


 手を広げて手首を回しよく分かりませんという態度で答える江川。

 そんなこと知らんがな。

 思わず関西弁になってしまうぐらいどうでもいい。


「なんだよ、和泉さんに話しかけるネタでも尽きたか?」

「実は明日一緒に映画見に行くんだ」

「よしわかった、今すぐ査問委員会招集するから」

「まてまて、そうならないように呼び出したんだ」


 ほうほう、どの口がそんなことをほざくのか。

 舐めたことを言ってるやつは制裁が必要だな。

 和泉さんとデートするとか許される訳がないだろ。


「頑張って誘ったんだ、その努力は認めてくれてもいいだろう?」

「でも鳥海が『裏切り者には死を』って言っていたけど?」

「能見もこの前平川と一緒にいるところを見かけたんだが」

「さて映画の話だっけ」

「手の平クルクルだな」


 たまたまショッピングセンターで出会っただけなのにデートとか言われても困る。

 かといって下手なことを言うと会話の内容だけで査問委員会を呼ばれそうな気もする。


「まあいいか、何話せばいいかと思って彼女持ちの能見に聞きに来たんだ」

「うむ、殊勝な考えである」

「ダメそうな気がしてきたな」


 呆れた様子だがどういうことだよ。

 少なくてもお前より経験はある……と思う。

 でも透子ってあんまり喋らないしなぁ。

 透子の一ヶ月の言葉量と和泉さんの一日の言葉量がイコールな気がする。


「会話が続いてるときはいいんだが、ふと途切れた時にどうすればいいか分からないんだ」

「そのまま黙っていればいいのでは?」

「それじゃ盛り上がらないだろ」


 うーん、なぜ盛り上がる必要があるのかさっぱりだ。

 沈黙もコミュニケーションの一つだろうに。

 そう思ったのだが江川が無言で首を振った。


「藤田と違って和泉はよく喋るんだ」

「あ、喧嘩か? 喧嘩売ってるのか?」

「純然たる事実だろ」


 うんまあたしかに和泉さんはよく喋るね。

 自分から話題を作るので会話のペースを持っていくことが多い。


「まあたしかに平川さんほどじゃないけどよく喋ってるよね」

「平川はそんなに喋らないけどな」

「え、いつも何か喋ってると思うんだけど」


 ああん?という感じのリアクションは何なんだよ。

 平川さんなんて黙ってる時の方が少ないぐらいだろ。


「……まあそれはともかくこちらから振る話題についての話だ」


 とりあえず話を本筋に戻してきた。

 とはいえこちらから話題を振ると言っても俺の持っている話題なんて大したものはない。


「魔法の話とか?」

「そんなにネタがあるわけないだろう?」

「それは準備不足だと思う」

「そもそも和泉は魔法好きじゃないぞ」


 それはそうだよなぁ。

 普段の反応を見ていても大して興味ないのは分かるし、そんな人に話を振っても盛り上がらないのは目に見えている。

 かといって他のネタと言われてもろくに何もないし……。


「もしかして藤田にも魔法の話ばかりなのか?」

「いやー、あんまりしてないかな」


 そういえば透子とは魔法の話って最初にしたきりで全然していない。

 なんかきっかけがないんだよな。


「ならそれを教えろよ」

「うーん、漫画読むとかTV何見たとかかな」

「そんな普通の質問に藤田が答えるのか?」

「普通に答えるけど……」


 怪訝そうな顔で俺を見てくる。

 こいつは平川さんといい透子といい偏見が過ぎると思う。


「江川はもうすこし和泉さんを観察したほうがいいと思う」

「観察はしてるぞ」

「それなら趣味だったり興味を持っていたりするもので話せばいいよね?」

「そこまで詳しくは……」

「詳しくないなら教えてもらえばいいんだよ、本人が難しいなら名雪さんとか橘さんでもいいし」


 なんでもかんでも同レベルでいようとするから話題がないんだ。

 人間は基本的に教えるのが好きなんだから教えてもらえばいい。

 もちろん教えてもらえるだけの好感度であったりちゃんと話を聞く謙虚さであったりは必要だけど、それさえ満たしていれば怒り出すことはないはず。

 それでも聞きづらいって言うなら名雪さんなり橘さんなりに聞けば教えてくれると思う。


 それを説明すると呆気にとられた表情をしている。


「……なんかしっかり考えてるんだな、能見なのに」

「馬鹿の代名詞みたいに言わないでくれます!?」

「いや、褒めてるんだよ」

「不良が道端で子犬を拾った的な褒め方だと思うのは気のせい?」

「普段0点のやつがいきなり100点取ったみたいな感じだな」

「馬鹿じゃないですけど!?」


 こいつら最近人を馬鹿にすることを覚えやがって。

 翔や阿久津ならともかく同レベルの江川に言われるのは許せない。

 そもそも普段から50点ぐらいは取ってるし。


「だからこそ、か」

「何が『だからこそ』だよ、馬鹿にしすぎだろ!?」

「うんうん、いつもの能見だな」

「やんのか、ああ、やんのか、おらぁ?」

「チワワが勝てるのはTOKYO Jungleだけだぞ」

「そんなレトロゲー知るかよ」

「まあ参考になったよ、ありがとう」


 江川が立ち上がる。

 この野郎喧嘩売るだけ売って放置とか最低だな。

 まあ面倒だしこのくらいにしといてやるわ。


 さて腕時計を見るとそろそろ休憩も終わりだし教室に戻ろう。

 屋上は時計がないから不便だよな、設置を頼んでみても良いかもしれない。

 そして教室に戻ると名雪さんと橘さんが興味津々な目で見てきた。

 あの目はどう見ても腐ったものを見る目だ。


「時間間際に二人で帰ってくるなんてそういうことだよね」

「そういうことってどういうこと!?」

「そういうことですねぇ」


 ひどい誹謗中傷が聞こえたのでツッコミを入れるとオウム返しにあった。

 名雪さんは相変わらずのニチャッとした笑顔で正直な感想としてかわいくない。


「お楽しみでしたでしょうかぁ?」

「だから何を!?」

「もちろん能見くんと江川くんのことだよ」


 橘さんは非常に良い笑顔をしている。 

 この前は自重する風なこと言ってたのにノリノリじゃないかよ!?

 やはり腐っているのはカップリングだけじゃなく全身だったか……。


「桐谷くんと鳥海くんで四角関係だね」

「全部つなげましょうねぇ」

「つながらないから!?」


 何をどうやればつながるんだよ!?

 あれか、仲良くしてたらとりあえずつながるのか!?

 人間関係相関図とかなら理解するけど絶対違う意味だよね!?


「女性は入るしかないですけど男性は入るも入れるも出来ますから大丈夫ですよぉ」

「どこにも大丈夫な要素がない!?」


 駄目だ、どう考えても人間関係相関図じゃない。

 むしろ相関図とか言ったら『二人で完結してますねぇ』とか言われそうだ、相関違いだよ。

 きっとコンセントの延長ケーブルみたいな発想に取りつかれているんだろう。

 二人で帰ってきただけでこれとは想像力逞しすぎるにもほどがある。

 第一その理論なら入るほうはいろいろ応用効くだろ。


「なるほどぉ、その発想はありませんでしたぁ」

「口に出てた!?」

「さすがだね、能見くん!!」

「やめて、同類にしないで!?」


 そして俺が橘さんと名雪さんに絡まれてる間に江川は和泉さんと話していたようだ。

 最後だけかろうじて聞き取れた。


「楽しみにしてる」

「……うん」


 なんで俺が食い止めてお前がラブコメしてるんだよ、とりあえず爆散しろ。

 ちなみにそれを眺めているのを名雪さんと橘さんに見られて横恋慕中と言われたのは心外にもほどがある。

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