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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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102/126

102.陽菜の悩み

 陽菜は他人に対して素を出さない。

 これは家族と他人で対応を見比べればすぐに分かる。

 家族に対してはけっこうわがままで喜怒哀楽も意志もはっきりしているけど、他人に対しては相手次第でころころと変わるからだ。

 おそらくだけど相手が望む姿を演じているからだろう。


 軽いノリの相手には軽いノリで、落ち着いた相手には落ち着いた態度であろうとする。

 それはかつていじめられた経験があるからなんだと思う。

 枠からはみ出せば仲間として認められないと思っているから、素直に自分を出せない。

 だからこそ家では自由にさせてあげたいだけど……。


「疲れたー」

「そういう事を言う前にまず服を着ろ」


 俺の前で机に突っ伏してだらけている陽菜は下着姿だ。

 ああもう、せっかくの形のいいおっぱいが潰れてるじゃないか。

 昔はちゃんと服を着ていたのにどうしてこうなったんだ。


「あらあら、ちゃんと着てるのにね」

「下着は服じゃねぇ!?」

「下着は服じゃない、つまり下着を着てなくても服を着ていることになる……?」

「ならねぇよ!?」


 アゴに指を当てて訳の分からないことをつぶやく父さん。

 下着は汗取りとかスタイルの補正とかで必要なのであって体を隠す目的ではない。

 それが通るなら夏はみんな下着で歩くわ。


「そうですよ、あなた、服はみんなの心のなかにあるんですよ」

「そうだな、有希」

「少なくても俺の心のなかにあんたらの服はねぇよ!?」


 説得しようとしてるのに茶々入れてくるのがいた。

 全裸の露出狂夫婦は静かにしてほしい。


「親を脱がそうとするなんて変態すぎるぞ、真琴、まあ有希がかわいすぎるから欲情しても無理はないか」

「そんなに褒められると照れますよ」

「欲情しねえし褒めてねえし、そもそもあんたらが脱いでるだけだろうが!?」


 駄目だ、社会常識というものをどこかに置き忘れた変態に口で勝てない。

 なぜその能力を他に活かさないのか疑問だよ。


「そんなことを話してたら有希と仲良ししたくなっちゃった」

「あらあら、まあまあ」


 あ、なんかいちゃつき始めたぞ。

 とりあえず変態たちは無視して陽菜に声を掛ける。 


「陽菜もそんな格好してるとせっかくの綺麗なおっぱいの形が変わってしまうぞ」

「私、綺麗!?」 

「お、おう、綺麗だぞ」

「えへへー」


 ぴょこんと跳ねるように体を上げた。

 なんか知らないけどとりあえず姿勢は真っ直ぐになったな。


「で、何で疲れたんだ?」

「そうなの! 聞いてよ聞いてよお兄ちゃんって陽菜は陽菜は言ってみたり」

「ミカサだったか」

「ラストオーダーだよ」


 そう言いながらすすすっと近寄ってくる。

 昔、翔と一緒に足音を消す練習をしていた成果がまだ残っているようで非常に静かだ。

 改めて考えると足音を消して近づいてくる妹って怖いな。


「あのね、また告白されたの」

「よし、名前と住所を教えろ」

「過激派すぎるよ、お兄ちゃん」


 肩をバシバシ叩く陽菜。

 うーん、完全に平川さんに毒されてるな。

 このままでは関西のおばちゃん化してしまうぞ。


「お断りしたんだけど今日はそれが続いちゃって」

「一日で何人も来るのか!?」

「今日は最高記録の5人だったよ……」


 ぐでーっと床に寝そべる陽菜。

 疲れているのを全力でアピールしたいのだろう。


 ただまじかよ、5人って休み時間のたびに告白されてるペースじゃないか?

 陽菜がかわいいと思ってはいるけど、そこは家族びいきも入っていると思っていた。

 でもなんでこの時期に?


「文化祭の前に彼女が欲しいみたい」

「なるほどな」


 その気持ちは非常によく分かる。

 文化祭を一人 or 男同士で回ってる時のみじめさは筆舌に耐えがたい。

 彼女連れで回ってるのを見つけた時は殺意の波動に目覚めるからな。


「男子に呼び出されると睨まれるんだよね……」

「え、他の男子に?」

「女子に決まってるでしょー、これだからお兄ちゃんは……いひゃい」

「お兄ちゃんは暴力で解決するぞ?」

「やはり暴力……暴力はすべてを解決する」

「陽菜は駄目」

「なんでー」


 バタバタと手を振って暴れてるけど、女の子が暴力で解決し始めたらやばすぎる。

 世紀末じゃあるまいし。


「なるほど、暴力じゃなくて魔法で解決すればいいんだね、お兄ちゃん!!」

「そうしr……待て、お前の言う魔法は『リリカル・トカレフ・キルゼムオール』とか言うんじゃないか」

「てへぺろっ」


 誤魔化す気満々のリアクションで返してきた。

 まさか大魔法峠の田中ぷにえネタだったとは危ない所だ。

 気づかないままだったら絶対後で何かあった時、『お兄ちゃんが良いって言ってた』と答えるに決まってる。


「でも対応が難しいー」


 今度は床をゴロゴロし始めた。

 おっぱいが壮絶に揺れ動いていて痛くないのかと思う。


「どうやって断ってるんだ?」

「お付き合いできませんって言ってる」

「理由は?」

「理由?」


 起き上がって俺の前で正座してきた。

 背筋をピンと伸ばしてるのは良いけど、胸を張られるとおっぱいが強調されるな。

 そして本人は姿勢も会話の内容も全く理解できていないようで首を傾げている。

 うん、このかわいさなら男がよってくるのも仕方ない。


「理由が分からないならそりゃみんな来るぞ」

「でも断ってるんだよ?」

「断った相手は来なくても他の人は可能性あるって思うだろ」


 理由がはっきりしてるならともかくふわっとしてると、男はみんな『俺ならいけるかも』って思うんだよな。

 彼氏はいないし理由もないならそりゃ殺到するわ。


「難しいー」


 背面に回ってポカポカと俺の背中を叩いてきた。

 やはり理解していなかったらしい。


「ちゃんと理由を伝えなさい」

「なんとなくじゃ駄目?」

「陽菜としてはそうなんだろうけど断り文句としては弱いな」


 感覚によるものだとどうしても可能性があると感じてしまう。

 もっと明確な理由が欲しい所だ。

 すると陽菜がわざわざ前に回り込んできた。

 話を聞く時の姿勢が出来ているのは偉いな。


「でも理由なんてないよ?」


 かわいらしくアゴに指を当てて首をかしげている。

 こんな仕草で断られたら男は絶対あきらめないだろ。


「そういう時はでっちあげるんだ」

「あ、いけないんだー」


 素直な陽菜は嘘をつけと言われて悪いことだと感じたようだ。

 ただ嘘は駄目というのは良いことだけど今回に限ってはNGなんだよな。


「でも付き合う気ないんだろう? なら嘘も方便だ」

「うーん、そうかな、そうかも……あっ!!」


 納得してなさげな表情をしていた陽菜だが、突然大きな声をあげた。

 ああいう時は何か良い案が浮かんだ時なので問題ないだろう。


「完璧に理解したよ、やったね、お兄ちゃん」

「一人で完結させるな!?」

「原作的には一人だよ?」

「それ以上いけない」


 あれは心のよりどころとしての腹話術だから下手に真似するのは良くない。

 誰か相談できる人がいればああはならなかっただろうに。


「完璧な理由が思いついたからばっちり!!」

「そうか、それならいいんだけど」


 何だろう、この自信満々の態度に一抹の不安がある。

 なにか見逃してはいけないものを見逃しているような……。


・・・


 次の日の夕方。

 家に帰ってくるとご機嫌な様子で陽菜が出迎えてくれた。


「お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃんちゃんちゃちゃんちゃん」

「ちゃんが多いにもほどがある」


 テンション高いな、あの様子だと上手くいったようだ。

 満面の笑みで続けて話し始める。


「いつもならしつこく食い下がられるのに今日は一発で終わった!」

「それはよかったな」


 ぴょんぴょん跳ねて喜びを表している。

 ツーサイドアップも一緒に跳ねてるのがすごく良いな。

 しかし今まで食い下がられてたのに一発でって一体何を言ったんだ?


「『お兄ちゃんが恋人なので』って言うようにしたら告白されなくなった!!」

「当たり前だよ!?」


 陽菜の同級生経由で俺のクラスにも話が伝わりシスコン扱いが更に加速したのは言うまでもない。

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