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世界書で恋の魔法は作れない  作者: rpmカンパニー


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101/126

101.翔と灯里ちゃん

「よーう、真琴、うちのかわいい妹に何してるんだ?」

「ぎゃあああ」


 声をかけられると同時にいきなり後ろからネックハンギングされた。

 くび、首を捻るな!?


「死ぬ、死んじゃう!?」

「大丈夫だ、限界は分かってるだろ」

「限界ってどこだよ!?」

「三途の川の渡し賃を渡す直前だな」

「もう死んでるよ!?」


 それだと成仏できないまま彷徨うだけだろうが!?

 必死にタップしていると灯里ちゃんが俺の前に来た。


「どうした、妹よ、今不審者を始末するからな」

「兄貴うざい」

「がーーん」


 拘束を解いてわざとらしい声でリアクションする翔。

 きっと反応してもらえたのが嬉しいだけなんだろうな。


「兄貴はなんでここにいるのよ」

「たまたま通りがかっただけだろ、そしたらかわいい妹がナンパされてたから排除した」

「ナンパしたのはあたしだけど?」

「その年でナンパなんてお兄ちゃん許さないぞ」

「干渉うざすぎ」


 その証拠としてすぐに立ち直ってツッコんでいる。

 どうやら灯里ちゃんが声をかけたということが許せないようだけど灯里ちゃんは聞く耳を持たない。

 ただその八つ当たりで俺の腕を反対側にひねってくるのはやめてほしい。


「あ、また真琴さんいじめてる」

「これは役立たずの指導だろ」

「いじめだよ!?」


 腕をひねるだけで指導になるなら体罰なんて存在しないぞ。

 それは灯里ちゃんもそう思ったようで腕を振り払ってくれる。


「兄貴は役に立たないけど真琴さんはいろいろ教えてくれる」

「まあ待て、お兄ちゃんもいろいろ知ってるぞ」

「じゃあスマホの撮影をするための輔助をしてくれる魔法は?」


 灯里ちゃんが疑わしそうな目で聞く。

 明らかに信用していないのがよく分かるな。

 かくいう俺も信用していないけど。


「[撮影補助機能]だな、最近はやっているだろ」

「嘘……」


 だけど翔はすらすらと魔法名を答えた。

 その答えを聞いて灯里ちゃんは珍しく動揺を表に出す。

 どうやら完全に想定外だったらしい。

 俺も翔が知ってたなんて驚きだ。


「個人的には[いつでもベストショット]の方を進めるな、そっちは勝手に撮影してくれるだろ」


 おまけに別のお勧め魔法まで返ってきた。

 さっき観光客が使っていた魔法のことは言ってないし、間違いなく翔が知っていたんだろう。


「どうしたマイシスター、もっと聞いていいんだぞ?」

「詳しすぎてキモい」

「ぐはっ」


 キモいの一言で一刀両断されていた。

 かなりショックを受けているみたいだけど、あれは照れ隠しだと分からないのだろうか。


「いつからそんなに詳しくなったんだよ?」

「ちょっとな」


 翔にしては珍しく言葉を濁しているけど言えない事情でもあるのか?

 あ、もしかして誰かに教えてもらったのか?


「ちょっとって何?」

「ちょっとはちょっとだろ」

「誰かに教えてもらったんじゃないのか?」

「独学に決まってるだろ」

「キモ」

「今の会話のどこにキモい要素があったんだろ!?」


 翔の動揺がすごい。

 傍目に見ても筋肉マッチョが小さい女の子の言葉でオロオロしているのは面白すぎる。


「お兄ちゃんは事実を伝えてるだけで」

「キモ」


 必死に弁解してるのに灯里ちゃんはツーンと無表情で答える。

 ただ口唇の端がつり上がってるし笑いをこらえているんじゃないかな。

 最初のテンポ良く会話した部分も機嫌良くないとやらない仕草だし実質からかっているようなものだろう。

 そんなことにも気付かない翔に腹の中で爆笑しつつ見てると、いきなりこっちを振り向いてきた。


「今……誰かオレを笑ったか?」

「記憶にないな」

「そんなネタキャラのセリフ言ってるから笑われるのよ」

「矢車の兄貴はネタキャラじゃないだろ!?」


 これだけ構われるのは愛情がなければしないって分からないのだろうか。

 まあ面白いから黙っておくけど。


「で、なんで二人でこんなところにいるんだ?」

「キモ」

「お兄ちゃんは心配してるだけだろ!?」

「キモ」


 この対応の悪さよ。

 面白いけどこのままだと会話が進まないので一応フォローしておくか。


「たまたま出会っただけだよ」


 事情を説明すると納得したようで無駄にデカいリアクションで首を縦にふっている。

 それはそれでキモいな。


「悪用ねぇ」

「兄貴でしょ」

「バカとハサミは使いようと言うだろ」

「刺してるじゃない」

「いつでも灯里を守れるぞ」

「まず危険を回避してくれない?」

「自重するだろ」

「嫌」


 傍目にはまったく会話が成り立ってないように見えて、二人には意味が通じてるんだけど短縮言語か何かなんだろうか。

 しばらく二人のやり取りが続いたあと。


「ということで撮影するだろ」

「うざ」


 どういう結論になったのか兄妹で写真を撮ることになったらしい。

 二人入るように自撮りしようとしているが身長差がありすぎてうまく収まらないらしい。

 手で持って撮影しようとするからそんなことになるんだと思うけど。


「魔法はどうした?」

「世界書が邪魔だろ」

「仕方ないなぁ、翔たくんは」


 翔の手からスマホを奪い取って構える。

 こうすれば簡単なのに何でも自分でやろうとするから駄目なんだよ。

 スマホを見ながら画面に収まるように誘導する。


「はいチーズ」

「なんかおっさんみたいですね」

「ぐはっ」 


 灯里ちゃんの攻撃、真琴は致命傷を受けた!

 これは全部父さんのせいだ。

 いつもああ言って撮影してるからつい俺も言ってしまったじゃないか、おのれ。

 俺の動きが止まったのを見て翔がニヤニヤしはじめた。


「おっさん、ちゃんと撮影してくれだろ」


 このやろう、舐めた口をきいてきやがった。

 おっさんを怒らせるとどうなるか理解してないな。


「おっさんだから機械操作わからないなぁ」

「あ、このやろ」

「おっとこのままじゃ灯里ちゃんがフレームアウトしてしまうなぁ」

「兄貴のせいよね」

「真琴様、どうかお願い致します!!」

「手の平ドリルかよ」


 灯里ちゃんに言われたらあっさり手の平返して頼んできた。

 やはり重度のシスコンだな。


「まあいいか、これに懲りて反省するんだぞ」

「調子にのりやがって」

「まだ?」

「真琴様、早めにお願い致します」


 一瞬反抗しようとしたけど灯里ちゃんの反応を見て下手に戻る。

 うんうん、立場を理解しているな。


「うむ、よきにはからえ」

「……それは他人にやらせる時のセリフだろ?」

「え、そうなの?」


 まじかよ、偉い人が部下に何か言われた時に言うイメージだったから言ってみたんだけど間違いだったのか。

 たしかにそういう場合は部下が動いてたかもしれない。


「やはり馬鹿だったか」

「馬鹿じゃないですけど!?」

「真琴さんには一度つきっきりで指導が必要ですね」

「は!? 灯里の指導とか許せないだろ」

「なんで勝手にキレてるんだよ!?」

「キモ……」


 灯里ちゃんが絡むとすぐキレるから困る。

 デカい体で威圧感あるんだから迷惑だろ。


「そういえば最近陽菜ちゃんの所に泊まっていることが多いけどまさか……」

「発想がキモい」

「健全な想像だろ!?」

「狂気」

「灯里、あの家は狂ってるだろ」

「人ん家を悪く言うんじゃねぇよ!?」


 まあきっと裸族のことを言ってるんだろうからあんまり強くはいえないけど。

 そもそもちゃんと服着るのが俺しかいないってどうなんだよ。


「ってあれ、灯里ちゃんがいる時に母さんはともかく父さんは自重してたの?」

「全裸でしたけど?」

「あのクソ親父!?」

「感想言ったら落ち込んでました」

「それはGJ」


 そこまで大きくもないのに振り回してるからだ、ざまぁ。

 ただだからといって他人、それも女性に対して全裸見せたのは別問題。

 その考えは翔も同じだったようだ。


「やるか?」

「やろう」


 そういうことになった。

 後日、二人できちんと《《教育》》を行い、他人が来ている時は服を着ることになったのが良いことだろう。

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