プロローグ
「くそ,,,!なんでまた無いんだよ!!。」
今日は5回目の大学受験合格発表日だ。
しかし、おかしい。
俺の受験番号「0721」がないのだ。
今回は俺の好きな番号だったからと期待したのに。
「おめでとう!」
「ありがとう母さん、これまで頑張ってきた甲斐があったよ!」
他の現役生たちの賑やかな歓声を聞きながら、
俺は自分の受験票を公園のゴミ箱に捨てて、泣き顔を隠しながら家に帰った。
「おかえり,,,どうだった?」
「,,,,,,」
母親と顔も合わせず、俺は自分の部屋に籠った。
おし、今日はこの動画で抜こう。
俺は帰りに買ったポテチとコーラを飲み食いしながらmis〇avを見てシコっていた。
今日の動画の子は一段とエロくて抜けるな、背徳感ってやつか?
胸か尻かというくだらない議題があるが、どっちというと俺は尻派だ。無論、おっぱいも好きだが。
そして今日の子は本当にいい尻をしている。
男優が女優の尻をバックで突いているのを斜めからのアングルで写した画がたまらないのだ。
「うっ...!ふう,,,」
はあ、これからどうすればいいんだ。
思えば、高校三年生から俺の人生は壊れた。
中学ではサッカー部、高校ではテニス部といろいろ挑戦したものの、なにごとも不器用な上に面倒臭がりな俺はすぐにやめてしまった。
高校3年の春、俺は父に勧められて、とある映画を見た。
なんとなく見て、面白くなさそうだったからすぐ切るつもりだったが俺はくぎ付けになった。
偏差値30で落ちこぼれだった高校生がなんとたった1年で有名な大学に合格したのだ。
しかもノンフィクション。
俺は震えた、初めてドラマで泣いた。
いままでの人生、俺は何かに熱中したことがない。特に趣味もない。
いわゆる「無キャ」だった。
しかし、この映画を見て俺は決心した。
東〇大学へ行こう。
今思えば、こんな軽々しく志望校を決めるべきじゃなかった。
俺の通ってる高校は偏差値46の超普通な学校だ。
当然、過去に東大に合格した卒業生はいなかった。
そして俺も例外じゃなかった。
度重なる「不合格」を経て、
今に至る。
高校の同級生だったやつらはとっくに大学を卒業し、就職し、働いている。
浪人中、同窓会の誘いや成人式の通知が来たが、もちろん断った。
同級生に合わせる顔がなかった。
いまはいい。今はお前らだけ幸せにしてりゃいい。
俺はひたすら勉強して、後から挽回すればいい,,,。
だが俺は報われなかった。
「お前に受験なんか向いていない。」
「そろそろ就職したら?」
「いつまでやってるんだ?」
両親、塾講師、友達にたくさん言われてきた。
今更、引き返せるわけがない。今諦めたら5年も棒に振ったことになるんだぞ?
見てろ、俺の大逆転ストーリーが始まるぞ!
と思いつつ、最近はもう机に向かっていない。
大学に行きたいという願望はあるものの、俺はもう疲れきっていた。
今は浪人という名のニートだ。
地面に散らかったティッシュやペットボトルをよけて、ベッドに仰向けになった。
「グスン」
俺は泣いていた。
もうだめだ、死にたい。
俺はこの生活を死ぬまで続けるのだろうか?
なにも成し遂げられないのか?
両親もずっと生きているわけではない。
一人っ子の俺は頼る当てもない。
詰みだ。
「あー、朝起きたら異世界だったりしねえかな」
俺はそう思いながら、気づけば意識を失っていた。