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1-9 帰還

新年あけましておめでとうございます。不定期ですが、ちょこちょこ更新していこうと思います。


今回の話の冒頭は、1話冒頭に繋がります。

で、現在に至ると言う訳だ。

「レイナ、取り敢えず私が今泊まってる宿に行こう」

騎士団を出た後に振り向いてレイナを見ると、どうやら王都の人の多さに酔ったのか少し顔色が悪かった。

「レイナ、大丈夫?辛いなら背中に乗る?」

「だ、大丈夫です……」

レイナはそう言って、力無く首を横に振る。迷惑をかけたくないのかは分からないけど……無理をするのは良くない。

「仕方ないね」

「えっ……ひゃっ!」

私は後ろで少し小さくなっている少女をヒョイとお姫様抱っこする形で抱え、そのまま黒猫亭に足を運んだ。

道中抱えられていたレイナの顔が、湯気が出そうなほど真っ赤になっていたのをカヤは知る由もない。


ーー


「ただいm」

「おがえりなさいぃぃ!!!」

「ごふっ!?」

私が黒猫亭の扉を開いた瞬間飛び込んできたのは、木造建築の景色ではなく小さな管理人だった。

「うぅ……!帰ってきてくれた……!」

「ごほっごほっ……し、心配かけてごめんね……」

「ほんとですよ!」

随分とご立腹のミラの目元は仄かに赤く腫れていた。よく見れば髪もボサボサで、昼なのに料理場から火の気配がない。すると、

「……?貴女は?」

「え、えっと……」

ミラが私から外した視線が、私の後ろに縮こまっていたレイナと交わる。不思議そうな顔をしたレイナとミラは、頭に?マークを浮かべてお互いにフリーズしてしまった。

「あ、紹介するよ。この子は私が保護することになったレイナ。レイナ、この子はミラ。この宿の管理人」

「……れ、レイナ……です……よろしくお願いします」

「あ、はい!黒猫亭の管理人をしていますミラです!よろしくお願いしますね!」

「あぅぅ……」

一見微笑ましい出合いに見えるが……なんというか、レイナがミラのオーラにやられている様に見える。まぁ、ミラは明るくて距離が近いから仕方ないか。

「一旦部屋に行って落ち着こっか。ミラ、私の借りてた部屋、期間延長できる?」

「問題ありませんよ。あ、レイナちゃんも一緒になるならベッド2つにしておきますね」

「ありがと、助かるよ」

ミラがとてとてと階段を登って行き、3分ほどですぐ戻ってきた。そのまま案内されて部屋に戻ると、大きめのベッドがあった場所に少しサイズが小さいベッドが二つ並んでいた。レイナがベッドに横たわると、スースーと小さな寝息を立てて眠ってしまっていた。

「……ミラ、レイナは色々事情があって人に慣れてなくてね。二人は歳も近いし、私がいない時とかも声掛けてあげてほしいんだ」

「なるほど……わかりました!」

そう胸を張って答えるミラにありがとうと伝えた後、ふと本命の要件を伝え忘れたのに気づいた。

「あ、あとミラ」

「はい?」

「今夜お風呂、準備してもらって良いかな」


ーー


「さて、ご飯を作るか」

ミラにお風呂の準備をお願いした代わりに、私は今日のご飯を作ることに。

「ミラもレイナも年頃の子供だし……そうだね、ハンバーグにしよう」

考えをまとめた私は、アイテムボックスからブラックブルの肉を取り出す。3人分なので少し多めに……っと。

「さて、《風域結界》《風刃》」

私はブラックブルの肉をボウルの中に入れ、風の結界を張りそのまま風魔法を使用した。錐揉みの様に風の刃が肉を切り刻み、段々と肉が細かくなる。

「包丁でやると中々に面倒くさいから、ミンチにするならこの手に限るね」

私は玉ねぎを細かく刻んでボウルに入れる。塩と胡椒も入れて練り込み、程よい大きさに肉を分けてからペチペチと空気を抜く。

「♪〜〜♪〜」

肉の塊をフライパンで両面焼いて、完成である。……うん、ついでにトマトでソースも作っておくか。


ーー


「ん、んぅ……」

私は木の匂いに包まれて目を覚ました。私は確か……

「あ、起きました?」

「ひゃうっ!?」

突然聞こえた声に思わず変な声が出る。誰かと思って振り返ると、そこにいたのは管理人の女の子だった。

「あ、寝起きで驚かせちゃいましたかね?ご飯の用意が出来たので呼びにきました」

「そ、そうですか……あの、カヤさんは……?」

見渡しても、私を救ってくれた恩人の姿が部屋に見えない。匂いを感じ取ろうとすると、扉の方からとても良い匂いがした。

「今日のご飯はカヤさんが作ってくれました!カヤさんも下で待ってるから一緒に行きませんか?」

「えと……お、お願いします……」

目の前の女の子は、こんな私にも明るく声を掛けてくれる。ミラちゃんは私の目をまっすぐ見て、手を差し伸べてくれていた。

(……ミラちゃんになら、上手く話せるかな)

レイナは淡い期待を抱いて、ミラの小さな手を取った。


ーー


「我ながらそこそこってところかなぁ。……いやまぁ、師匠のものには劣るけど」

3人分を作り終えると、タイミング良くミラがレイナを連れてきてくれた。

(手を繋いでる……レイナも拒否してる雰囲気ないし、ミラに頼んだのは正解だったかな)

少しほっこりした私は、席に座った二人と一緒にハンバーグを食べる。トマトソースを掛けたハンバーグを勢いよく頬張った二人は、目を輝かせて瞬く間にハンバーグを食べ切ってしまった。

「ご馳走様でした!カヤさん、このハンバーグの作り方、よかったら後で教えてもらっても良いですか?」

「良いよ。私も師匠から教えてもらった料理だからね、割と簡単だよ」

「ありがとうございます!」

レシピに書き出そうとすると、不意に袖をくいくいと引っ張られる。

「あの、お、美味しかった、です……!」

「……!美味しかったなら何よりだよ」

レイナは花の咲いた様な笑みを浮かべた。その笑顔を見れただけで作った甲斐があったと言うものだ。私はレイナの頭を撫でてあげる。あぁ、可愛いなぁ……

「カヤさん、お風呂大丈夫ですよ」

「お、分かったよ。さてレイナ」

「?」

不思議そうなレイナを連れて、お風呂場に向かう。

「お風呂、一緒に入ろっか」

1日の終わりは、風呂に尽きるのだ。

・カヤのハンバーグ(師匠直伝)

小さい時によく師匠に作ってもらったハンバーグ。師匠本人の物よりも少し子供寄りの味になっており、気分でチーズをインしたりする。トマトソースを掛けて食べるのがちょうど良い。

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