表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

1-4 下見と準備

今回は少し短めです

「ん……んぅよく寝たぁ……」

宿の自室で目が覚め、私はゆっくりとベッドから起き上がる。昨日はクエストで疲れたが、お風呂の力はやはり偉大だ。なんだか体も軽い気がする。

「おはようございます、カヤさん起きてますか?」

「今起きたところだよ、ありがと」

「ご飯出来てますから、下の方でどうぞ!」

扉をコンコン、とノックする音と共にミラが朝ごはんの知らせを伝えにくる。答えているうちに、元気なミラの声で目が覚めてくる。髪の毛を少し整えて下におり、朝食を食べる。昨日の朝と同じくハンバーガーだったが、中身の味が少しスパイシーに変わっていた。一工夫入れてくれたのだろう、こっちも美味しい。

「ご馳走様、食器はいつも通り置いておくね」

「はい、わかりました!お出かけですか?」

「ちょっとね。今日はすぐ戻ってくるかも」

「なら、軽めのお昼ご飯もご用意しておきますね!」

「ありがとう、助かるよ」

「いえ、これも私の仕事なので!いってらしゃいです!」

元気に送り出された私は、黒い外套を纏う。検問所で少し怪しまれたが、肌寒い洞窟が依頼地点だと誤魔化して事なきを得た。

……さて、

「風霊、頼んだよ」

もう一体の風霊を呼び出し、魔力のマーキングに向かっていく。ドミニクに付けた風霊の反応は昨晩あたりに止まったが……正直罠などの可能性も捨てきれないので、私が一度赴くことにした。


ーー


「ここがドミニクの拠点か」

魔力の痕跡は昨日の今日だからか割とはっきりと残っており、追跡は容易だった。街から出て森を進むこと30分ほど、痕跡を辿った先に見えたのはボロボロの山小屋の様な建物。しかし、

「どう見ても隠蔽魔術だね、多分外装より数倍は綺麗だな」

山小屋の見た目は柱が崩れて斜めになっておりあからさまにボロボロ、熊や魔物に襲われたのかと思うくらいの廃屋と化しているが、風霊の空間把握ではしっかりとした家の形を保っている。おそらく山で迷った人などがいたとしても、雨宿りに適さないから来ても意味がないよ、というボロボロ加減を出すことで人を避けさせていたのだろう。ずいぶん用意周到なことだ。

「《探知》」

生命探知を起動すると、15人ほどの気配があった。2組に分かれており、片方はマーキングのある反応なのでドミニクとその護衛とかだろう。もう片方は地下にあたる位置に5人固まっており、探知の反応もかなり弱めだ。

(この5人分の反応が違法奴隷だな……かなり弱ってるな)

帰り次第ステラさんに報告に行く事にし、私は踵を返してリベルタに帰還した。


ーー


「ドミニクの拠点は見つかったか?」

「はい、特定したのでいつでも行けます」

「そうか……ありがとう。君がいなかったらドミニクの対処はもっと遅れていただろう」

「まぁ私も想定外だったので、運が良かっただけとも言えますけどね」

騎士団にやってきた私を出迎えたのはステラさんだった。どうやら午後からは仕事がある様で、以前来た時と違い軽く鎧を着ているのが新鮮だ。

「残り5人の違法奴隷についてはどうだろうか、あと何日持ちそうか分かるか?」

「そう、ですね……おそらく持って3日だと思います。何もなければあのまま死んでしまってもおかしくない」

正直、3日でもかなり運がいいと思う。食料や水を普通に摂っていれば、生命探知の反応が薄くなるなんてことは本来あり得ないのだ。おそらくまともに食事もできていない状況だと思う。

「わかった。明日の夜、襲撃することにしよう」

「そうですね、早いほうがいいと思います」

「しかし、騎士団から出す人はどうするんですか?その日の暇な団員はあまりいないと思うんですが」

横からミカドさんがやってくる。確かに前に人員を出すと言ってはいたが、今日発見した拠点に明日の夜仕掛けるとなれば日程的にかなり厳しくなると思うけど……

「問題ない、1人だけ空いている。そもそも大人数で行くわけにもいかないから、カヤとそいつの2人でいいだろう」

「ですね、大人数で向かえば拠点を襲撃する前にバレるリスクも上がりますし」

(……明日の夜に騎士団にいて暇のある団員っていましたっけ)

ミカドさんが何やら不思議そうに頭を捻っていたが、ステラさんの力強い言葉に納得したのかまぁいいや、と呟き見回りに行ってしまった。

「明日の夜……そうだな、日が変わるあたりの深夜帯に騎士団に来てほしい。私から話は通しておくから問題なく来れるはずだ」

私はその言葉に頷くと、バッグからある物を取り出す。

「これは……ゴーグルか?」

「これがあれば私のマーキングから魔力の痕跡を辿れると思うので、動きやすくなると思います」

私の付けたマーキングは、本来私しか見ることができない。が、私の出した風霊を観測できるなら話は別。今ステラさんに差し出したゴーグルは特殊なガラスが使われていて、魔力を通すと精霊が見える様になる魔道具だ。これは安価な劣化版のため、私の魔力を通しても特定個人の精霊しか見ることができない。この場合だと私の風霊のみが見える。

「精霊鏡の廉価版か、騎士団の備品にもあるのだが今は別の団員が任務で使っていてな……助かる、ありがたく使わせてもらおう」

「一応終わったら……」

「わかっている、ちゃんと返すつもりだ。廉価版とはいえ精霊鏡は高額品だし、奪う様な真似をするつもりはない。安心してくれ」

いらぬ心配だったなと思いながら、私は席を立つ。

「私は宿に帰ります」

「そうか、気をつけるんだぞ」

「ステラさんも任務頑張ってくださいね」

そう挨拶を交わし、その日は宿へと帰宅した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ