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第四幕ー弐

「アリシア、突っ切れ!!」

 叫ぶと同時に儂は炎を生み出した。のしかかっていた死体をまとめて灰にする。

 そのままさらに炎を練り上げ、起き上がりざまに腕を振るった。炎は一本の鞭のようにしなりながら死体めがけて伸びていく。ぶつかったそばから火が燃え移り、次々と死体が火だるまになっていく。

「魂よ、我に従え! 黄泉の操り人形(アンダー・パペット)!」

 ラルフの詠唱が完成する。クレアを追いつめていたハロルドがぎしりと動きを止めた。その隙にクレアが押し返し、同時に足を払って転倒させる。無意識に後ずさりしていたアリシアが、我に返ってその横を駆け抜けた。

「へえ」

 マイルズが感心したように目を見開いた。

「一瞬でも僕から主導権を奪えるなんてすごいね。でも」

 つい、と虚空に向けて手を伸ばす。

「僕の兵隊なんだ。返してね」

「っがああ!!」

 離れているはずのアリシアの耳にラルフの絶叫が届く。思わず振り返ったアリシア越しに見えたのは、口や鼻、目から血を流してうずくまるラルフと、彼を庇うように前に立ったクレアだった。

「何をした!」

 刀を生成しながら吠える。

「うん? ちょっと魔力を流しただけだよ」

「なっ……!」

 絶句する。魔力の波長は、魔剣と適合者などの例外を除いて一人ひとりまったく違う。もし他人の魔力が流れ込んできたら拒絶反応が起きる。最悪の場合、命にかかわるのだ。

 そしてそれをアリシアも聞いてしまっていた。

「ラルフ!」

「行きなさいアリシア特務一等兵!」

 戻りそうになるアリシアをクレアが止めた。

「急いで!」

「行け、アリシア!」

 二の足を踏むアリシアに活を入れる。

「このまま犬死にさせる気か!?」

「…………」

 アリシアが一度深呼吸する。それからまた踵を返して道を進みだした。

「健気だね」

 マイルズがくすくすと笑う。

「即死させなかったのだけは感謝してやるよ」

 儂も精いっぱいの悪態をつく。おそらくわざと手加減したのだろう。一瞬でも主導権を奪ったラルフに興味が湧いたのか。

「うん。でもどのみちみんな死んじゃうから」

 穏やかにそう言って、マイルズは剣を構える。

「ここに集めた兵隊も燃えちゃったからね。けっこう苦労したんだよ?」

「お前さんの苦労は知りたくないな」

 火の鞭で一気に叩いたおかげか、死体はだいぶ減ってくれた。これでいくらか戦いやすくなる。

「あの子が何をするのか知らないけど、この巨大な陣を書き換えるなんてどうやってするんだい?」

「……さあな」

 儂は笑みを浮かべた。

「自分で考えるんだな!」

 駆け出して間合いを詰める。

 奴のところにお守りがある限り、攻撃の一切が通用しない。なんとか隙を突いて奪うしかないが、こいつの隙を突くなんてできるのか?

 ……いや、やるしかない。アリシアの方だってハロルド以外にも伏兵が潜んでいる可能性がある。

 儂は再びマイルズに斬りかかった。


 予想はしていた。こいつの隙がほとんどないのは承知の上だったが、実際に直面すると心が折れそうになる。

 火の壁で視界を遮ったり、剣とお守りの同時奪取を狙ったり、死体を盾にして隙をうかがったりもしたが、まるで効果がない。

「おや、そろそろ限界?」

 マイルズが嬉しそうに訊ねる。全身で息をしていれば、魔力切れの症状を知っていてもいなくても相手の調子がおのずと測れる。

「阿呆。呆れているんだ」

 軽口で返す。アリシアの方は順調らしいが、ハロルドを相手にしているラルフとクレアが気になる。

 生前は将軍も夢じゃないと言われた実力者。そいつと闘っているのだ。せめて死なないでいてほしいと願うしかない。

「ふふ。あっちの二人もなかなか頑張っているよ」

 儂の心を読んだかのようにマイルズは笑う。

「あっちの男の子、まだ諦めていないみたいだね。女の子がピンチの時に一瞬だけこっちの主導権を奪ってくるんだよ。いやらしいよね」

 お前にだけは言われたくない。内心でそう返しつつ、向こうの様子が少しでもわかるのは助かった。

 ただ、それもいつまで持つのか。あの出血の中、文字通り決死の覚悟でラルフはハロルドの主導権を取りに行っている。このままだと二人とも……!

「ムラマサ、あった!」

 アリシアの声が響いた。目を繋げば、薄暗くぽっかりと空いた空間が見える。床は煉瓦を組み合わせて作られているのか、奇妙な文様を描いていた。

「そこがそうなのか?」

「うん」

 儂は笑みを浮かべた。

「なら、後は任せたぞ」

 体から力を抜く。全身が解けていくような感覚に身を任せ、儂は元の刀に姿を変えた。

「えっ?」

 マイルズが呆けた声を出す。

「え、いきなりどうしたの? まさか魔力切れ? 嘘でしょ?」

 つんつんと突かれるが無視をする。一応刃には気を付けているらしいが、油断していると指が飛ぶぞ。契約したばかりのアリシアが重さに耐えきれず振り回され、あわや大惨事だったことがあるんだからな?

 アリシアは肩掛け鞄を開くと、折りたたまれた布を取り出した。

「えいっ」

 と掛け声とともにそれを広げる。表と裏にそれぞれ違う魔方陣を描いた布は、大人が十人寝転んでもまだ余裕があるほど大きかった。同じ大きさの布を繋ぎ合わせて作った巨大なそれを部屋の中央に敷き、しわが出来ないよう丁寧に伸ばしていく。

 靴を脱いでその上に上がり、膝をついて祈るように手を組む。

「ちぇー。じゃあ不法侵入者でも退治しに行くか……」

 立ち上がったマイルズがにわかに表情を変えた。

 時を同じくして、アリシアの方にも変化が起こる。

 表と裏の魔方陣がそれぞれ輝き出し、重なり合って一つの魔方陣として浮かび上がる。さらにそれは煉瓦で組まれた文様も巻き込んで新たな図柄を浮かび上がらせた。

 どしゃ、と何かが倒れる音がする。

「……え?」

 マイルズが振り向けば、まだ動けるはずの死体が次々と崩れていくところだった。

「なに……え?」

 まだ理解が追い付いていないのだろう。

「大成功だ、アリシア!」

 儂はマイルズにも届くように声を張り上げた。

「死霊術を無効化したぞ!」


◆ ◆  ◆


「魔方陣を縫い付けた布をかぶせて、打ち消しや上書きができるんじゃないの?」

 特別閲覧室で死霊術の魔方陣を発見した時、クレアはそう言ってきた。

 マイルズがニルウェル全体に敷いた魔方陣はたしかに巨大だ。だがこいつが使ったのは、二つの円の中心をずらした手法のものだった。

 陣の中心が重なっているものは安定して魔法を発動できるが、その分威力は弱くなる。だが中心がずれた魔方陣は、制御が難しい分威力も高まる。ラルフやアリシア曰く暴れ馬のように手が付けられず、生半可な力では術者も危険に晒されるのだとか。そのためこうした強力な陣は最低でも二人以上の術者が協力して初めて成功すると言われていた。

 だがそれは、並の術者では陣を発動できるだけの魔力が足りないのではないかとクレアは推理した。

 魔剣やその契約者は桁違いの魔力を有している。その魔力を利用すれば、中心のずれた魔方陣も一人で扱えるのではないかと。

 すぐに威力の低そうな(それでも十分高火力な)魔方陣を探し出し、街の外れで試してみる。

 結果は予想以上だった。アリシアは火を纏った龍を召喚し、それを操って見せた。これだけの力があればマイルズが街に敷いた陣に対抗できる。

 二つある円のうち小さい円だけを書き換えられないか。具体的には死霊術を打ち消し、なおかつアリシアの支配下に置けるような魔方陣がないか。それを探すためにさらに数日を費やし、探し当てるとアリシアは自分の部屋の作品たちをかき集めた。図柄の裏に様々な魔法が込められたそれらを縫い合わせていくと、一つの魔方陣として浮かび上がった。それだけでも十分凄いのに、それをもう一つ作り出したのだ。別の魔方陣を描いたそれらを重ねて縫い合わせるなんて作業をし出したので、誰も手の出せる状況じゃなくなってしまった。

 正直、いくつ魔方陣が入っているかなんて考えたくなかった。効果が重なりすぎて失敗に終わるんじゃないかという心配もあった。

 ラルフが見ただけでも、「どうなってるのこれ……」と頭痛を覚えたほどだ。防御系が多いものの攻撃系も少なからず入っているし、防御魔法の中でも魔法に強いものや物理攻撃に強いもの、しかも守護範囲がばらばらと来ている。組み合わせ方を間違えると魔法同士で喧嘩してしまうなんて話も聞いていたから気が気じゃなかった。

「んー、大丈夫じゃないかな?」

 そんな儂らに対し、当のアリシアはあっけらかんと言った。

「みんな一致団結してるよー?」

 子どもを褒めるように布を撫でる彼女を前に、儂らは呆れと不安から何も言えなくなってしまった。こいつの裁縫に関する神がかり的な技術が魔法にも作用してくれることを祈りつつ、来るマイルズ戦に向けて最後の支度に取りかかっていった。


◆ ◆  ◆


「さて、アリシア。ちょっと魔力貰うぞ」

 一言断ってから、儂は最低限の魔力で顕現する。炎の羽織が翻り、屋敷に向けて駆け出そうとするマイルズの前に立ちはだかる。

「行かせると思うか?」

「どけ!!」

 先ほどまでと打って変わり、マイルズが鬼気迫る顔で剣を振り上げてくる。

 儂はそれに対して何の構えも取らず、散歩でもするようにゆっくりと歩みを進める。

 マイルズの大剣が儂の体をすり抜ける。驚愕に目を見開く奴とすれ違いざま、首から下げている紐を掴むため部分的に魔力を濃くする。触れた紐が燃えて千切れ、支えを失ったお守りが儂の手の中に収まった。

「悪いが、返してもらうぞ」

「ふざけるなああああ!!」

 大きくて扱いにくいはずの大剣を振り回して儂に迫る。だがその剣はお守りに込めた魔法で弾かれる。反動を抑え込んで再び攻撃に転じるより早く、儂が刀の形に火を練り上げて薙いだ。

 両手と首が剣と一緒に吹っ飛ぶ。傷口から真っ黒な液体が噴き出した。

「うおわっ」

 思わず後ろへ大きく飛んでそれを避ける。

 マイルズが使役していた体は振り切った勢いのまま、受け身も取らずに倒れ込んだ。その体が黒く蝕まれ、ぼろぼろと崩れていく。剣を支えていた両手も炭化して柄にくっついているだけだ。おそるおそる剣に近付いてそっと持ち上げてみると、それだけで両手だったものは崩れて風に乗って消えてしまった。

 あまりの呆気なさにこちらが呆然としてしまう。

「あーーーーーー!!」

「うおびっくりした!」

 剣が震えるほどの大音声に思わず剣――魔剣マイルズを落とす。

「あーもう! あーーもう!! なんで!? なんでいつも上手く行かないの!? 僕が何をしたっていうんだよ!?」

 いややったじゃないか。という突っ込みが喉の奥で消える。剣がひとりでに叫んでガタガタ暴れるって意外と怖い光景なんだな。一回新人の見回りの時にやってみて過去一番の苦情を受けたが、その意味がやっとわかった。これけっこう怖いわ。

「ムラマサ……」

 アリシアのかすれた声が聞こえた。

「マイルズは……?」

「宿主が死んだ。こいつは今ただの魔剣だ」

「…………それ?」

「これ」

 視覚と聴覚を繋いだおかげで、アリシアにもマイルズの奇行が逐一わかる。

「これとか言うなー!!」

 などと喚いているが無視する。

「お前さん、動けるか? クレアとラルフの様子を見てもらいたいんだが」

「うん」

 頷いたアリシアがよろよろと立ち上がる。魔方陣を上書きするために相当な量の魔力を使ったのだ。儂が疲れたふりしてある程度温存していたとはいえ、あの規模はかなり消耗したはずだ。

 鞄と布を引きずり、長い階段を上った先で、見覚えのある姿が視界に映った。

「アリシア……!」

「ブラント曹長!」

 アリシアがクレアに駆け寄る。全身を赤と黒に染めながら、クレアは安堵のため息を吐き出した。

「よかった……。無事だったのね」

「曹長も。あの、ラルフ……ラルフ!?」

 視線を巡らせた先で、仰向けに倒れているラルフが飛び込んできた。こっちは顔が血まみれになっている。

 まさか……!?

「動かさないで」

 揺すり起こそうとしたアリシアをクレアが止めた。

「気を失っているだけよ。最初の反撃を受けてから、ずっと黄泉の操り人形を維持していたのよ」

 なんだって?

「すぐに救援を呼ぶぞ」

「お願い」

 アリシアの声を受けてすぐに花火を打ち上げる。

 作戦成功の可否は花火の打ち上げで知らせると言っておいた。住人の安全を確保するためにある程度の距離をあけなければならず、確実で手っ取り早いのはこの方法だと満場一致で決まったのだ。

 放たれた魔力は防壁のさらに上で爆発する。これだけ大きければ届くだろう。

「あの、お父さんは……?」

 花火の音を聞いたアリシアが訊ねる。死霊術は無効化された。周りにはクレアとラルフの他に、黒ずんだものとぼろぼろの服、そして軍支給の長剣だけ。

 クレアが目を伏せる。

「フェルベール少佐は……灰になって消えたわ」

 やはりそうか。

 ハロルドは死霊術で肉体だけ生かされていた。殺されてどれほどの年月が経っているのかはわからんが、十年近くも利用されていれば朽ちても不思議ではない。

「そっか……」

 アリシアはそう呟いて、クレアの服をぎゅっと掴む。

 静かな部屋に小さく(はな)をすする音だけが響く。儂は聴覚だけ遮断し、マイルズを手に取った。

「あっ、何するんだ!?」

「煩い。安全に城の宝物庫まで案内してやるんだからちょっと黙ってろ」

「それ幽閉って言わないかい!? 死ぬこともできずずっと飾られていろっていうのか!?」

「飾るとは一言も言ってないだろ。宝物庫のさらに奥の隠し倉に放り込んでやる。他の連中が首を長くして待っているぞ」

「いーやーだー!! だいたい僕にはまだやるべきことが残っているんだー!」

「餓鬼の妄想に付き合っていられるほど世の中暇でも平和でもないんだよ。いい加減とっとと黙れ。布でぐるぐる巻きは基本として、大人しくしていないと鉄の箱にぶちこむぞ」

「それ虐待じゃないか! 僕に人権はないのか!?」

「あるわけねえだろ! 儂らをこんな風にした元凶が人並みの扱いしてもらえると思ったら大間違いだぞ!?」

「“国殺し”のくせに生意気じゃないか! なんだよ、ずっと飢えたような顔してたくせに!」

「あ……?」

 マイルズの言葉に思わず立ち止まる。

「飢えたような顔? 儂が?」

「何、気付いていなかったの?」

 マイルズはどこか誇らしげに言った。

「君が魔剣になる直前、ずっと飢えたような顔をしていたんだよ? 食べ物的な意味じゃなくて、精神的な。そういう“飢え”はなかなか癒えないし、魔剣の素材としてはちょうどよかったんだよね」

「ほう……」

 不本意だが、こいつの言葉ですとんと腑に落ちた。

 そうか。儂の体にずっと吹いていた隙間風は精神的な“飢え”だったのか。

 なるほど、たしかに何をしても満たされないわけだ。

 寒いわけでもないのに体の芯がずっと冷たかった。どうしたらこの寒さがなくなるのか、思いつく限り試してみても改善されなかった。

 金を盗んでも、腹を満たしても、上等な服を着ても、女を抱いても、国を滅ぼしても。

 体の中を吹き荒れる嵐は止まなかった。

 魔剣にされた今も――

「ん?」

 思わず自分の胸に手をやる。

 あんなに冷たくて、からっぽで、やかましかったのに。

「何? どうしたの?」

「いいや」

 マイルズの問いに首を振り、歩みを進める。

 外から歓声が聞こえる。軍と一緒に避難した住人たちが戻ってきたのだろう。

 市長の屋敷に着くと、扉の前でアリシアが布を抱えて待っていた。

「ムラマサ!」

 心底ほっとしたような顔で駆け寄ってくる。儂も自然と安堵のため息が出た。

 目元が腫れている。かなり泣いたんだろう。

「アリシア、頼む」

 マイルズを掲げて見せると、アリシアは儂から数歩離れたところで立ち止まり、頷いた。

 持っていた布を再び広げ、その中心にマイルズを置く。

「ちょ……え、これマジ!?」

 お、もうこの布の絡繰りに気付いたのか。凄いな。

「やだやだやだちょっと待って! 嫌だ、封印されたくない!」

「往生際が悪いぞ」

「待って待って冗談だよね!? こんな超高等魔法使ったの!? 君が!? 待って無視しないで! 無言でくるまないで!」

 マイルズの叫びを無視して、アリシアは淡々と包んでいく。こいつ後で鉄の箱行きだな。

「あー! いいなー! いいなー! こんな子僕が契約したかったよー! そうしたら世界中めぐって悪い奴らいっぱい倒せたのにー!」

 アリシアの手が止まった。

「……ふざけないで」

 静かなその声音にマイルズの声も動きも止まる。

「他人の人生を滅茶苦茶にしておいて英雄を気取るの?」

 睨みつけるその目は氷のように冷え切っている。その奥底に宿る殺意にも似た気迫にマイルズが圧されている間に、アリシアはマイルズを包み終えた。

 鞄の底から縄を取り出し、柄から剣先まで厳重に巻いて解けないか確認し、頷く。

「うん、これでいいかな」

「よし」

 儂は厳重にくるまれたマイルズを持ち上げる。

「なら、帰るか」


 のちに聞いた話では、ニルウェルから上がった花火に軍人も民間人も歓喜に沸き、手を取り涙を流して喜び合ったそうだ。

 軍の引率のもと戻って来た住人たちは、言葉こそなかったものの何人もが深々と頭を下げてきた。一度は刃を向けてきた相手だが、その黒幕であるマイルズが無力化されれば自由に動ける。

 二人がかりでハロルドと渡り合ったクレアとラルフは、それぞれ重傷だったこともあってすぐに救護班が担いでいった。あの大怪我だ。しばらくは動けないだろう。

 護送用の馬車に乗り込み、儂はその隅に鎮座していた鉄の箱を開ける。マイルズの大きさに合うようにわざわざ注文したものだ。

「ちょっと!? 黙ってたよね!?」

 などと文句を言っていたが無視する。こういう奴は念を入れておいた方がいい。

「はー。これで一件落着だね」

 横になったアリシアが言う。

「ああ」

 儂も頷き、変化を解いて鞘に収まる。

「帰ったら報告書が待っているがな」

「えー」

 心底嫌そうな声を出すアリシアに儂は苦笑で返す。

 馬車がゆっくりと動き出した。

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