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十六

 スズと清一郎は細い道をあっちへこっちへ曲がりつつ、百鬼屋を目指している。舌を噛みそうになりながらも、スズは抱いていた疑問を清一郎にぶつけた。

「ば、『化け者』て何ですか?」

「よう人に化けるさかい、そない呼ばれるようなったんや。たまーに役に立つんやで、さっきみたいにな」

「でも……なんでさっき、元に戻らはったんですか?」

「正体がばれたら術が解けてまうんや。こんなヘマして、またご隠居に笑われるわ」

「そ、それは……すんまへんでした!」

「今はそんなん言うてる時とちゃう!」

 路地に入りこむと、清一郎はスズを庇うように覆い被さりながら袂を探った。取り出したのは、小さな守り袋。スズが持っていたものとよく似たものだった。清一郎はその口を開け、中身を取り出した。

「ええと、これは……これも……これも今はあんまり役に立たん。ああもう、肝心な時に使えんなぁ、わしは……!」

 袋からぽいぽい取り出したものは、どれも折りたたまれていた紙だった。よく分からない紋様と文字が書き連ねてある。護符のようなものだろうか。

「あの……似たようなものなら、うちも持ってますけど」

「え?」

 スズは自分の着物の袂を探って紙の塊を取り出し、清一郎に渡した。

「これは……あの守り袋の? なんで中だけ持ってるんや?」

「おいえさんに、袋を繕うたげるて言うてもらったから中身だけ出して持ってたんです」

「さすがやな、スズさんは……えぇと何が入って……あれ? 何やこれ?」

 スズは幼い頃から、守り袋の口を開いたことなど一度もなかった。だから中に入っていた紙は折りたたまれたままぴったり閉じており、しわも寄ってくしゃくしゃになっていた。それを焦る手つきで開くのは困難だった。

「くっ……あかん、無理に開いたら破れる……」

 その時だった。

「旦さん……どこでっか。百鬼屋の旦さん……若ご寮さんもいっしょに、ゆっくりお話させてくれまへんかぁ」

 そんな声が、足音と共に聞こえてくる。

「うちがやります」

 そう言って、スズは紙の塊を清一郎から受け取った。だが同じく怯えて竦む手元では、小さな塊を破れないように開くことは難しく、震えばかりが増していった。そして……ついに、スズの手のひらから紙の塊が逃げていった。

「あ……!」

 紙は、通りの方へとコロコロ転がっていく。それに目を留めたらしい善丸の視界に、清一郎とスズの姿が捉えられてしまった。

「ようやっと見つけましたで……旦さん、若ご寮さん」

 善丸が、清一郎とスズへ向けて、一歩歩み寄る。その時――とてつもない音が響いた。

 豪雨に大風、烈しい雷鳴、轟轟とした地鳴り、それらが総て合わさったかのような轟音が辺り一帯に響き渡った。

「ぐわあぁぁぁ!!」

 善丸は、断末魔のような叫びを上げると、その場に崩れ落ちた。その足下には、黒焦げになった紙の塊の跡がある。

「あれのおかげ……ですか?」

 スズが尋ねると、清一郎は「たぶん」と言いながら頷いた。

「あの守り袋には、色んな護符を詰めとったんや。あの頃は今よりずっと怖がってたさかい、かなり強めに痛めつけるもんもぎょうさん入ってたはずや。それが全部いっぺんに効果発揮してしもたんやろなぁ……敵さんながら可哀想に」

「はぁ……」

 いずれにせよ、もう大丈夫、ということらしい。

 スズも、清一郎も、一気に息を吐き出して、ぺたんと座り込んでしまった。


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