表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

5.試練

教会での生活にも数日で慣れ、“ルー”との日々も案外楽しくやっている。ルーというのは、あの少年のことだ。今のところ家族は現れない。あいかわらず喋ることもしないが、ルーがいることで寂しさを感じずにやっていけている気がするのだ。


名前がないのも不便なので、“ルー”という愛称で呼ばせてもらうことにした。


「ルー、今日は少し街に出てみようと思う。闇属性について調べたいんだ。ここは、闇穴(ダークホール)の中にある街だ。闇属性についてはこの街が1番情報があるはずだ」


ルーは俺の顔をじっと見ているが、その顔に表情はない。分かっているのか分かっていないのか定かではないが、俺のそばから離れようとしないので、なるべく伝えるようにしている。


そうそう、闇属性についてだが。この街は闇属性のマナに溢れている。全ての街に特定のマナが集まるわけではないらしいが、デルメインは「闇属性」、王都は「光属性」の特徴が街に現れているらしい。事実、デルメインは闇霧(ダークネスフォグ)に覆われている。


闇属性の情報や師を探すにはこの街が最適だろう。


情報が集まりそうなお店に聞き込みし、闇属性を使える魔法士を探すしかない。


「すみません、この街に闇属性を使える魔法士を知りませんか?出来れば、師になってくれるような人だとありがたいのですが…」


とりあえず、先日お使いに行った日用品店の店主に聞いてみる。


「おぉ!こないだの坊主たちか! 闇魔法士だぁ? それなら13階層にいるシスばーさんだな! せっまい洞窟路を進んだ先に住んでるらしいから、13階まで降りたら誰かに聞いてみな!」


「…あ。どうもありがとうございます」


「おう!礼はいいから、また買いに来てくれ!」


まさか、1人目で情報が手に入るとは思っても見なかった。ダメもとで聞いただけで、情報を持ってそうな人を教えてもらうつもりだったのだ。


シスさんという人がどのような人かは分からないが、行ってみる価値はあるだろう。やはり、闇魔法で覆われている穴だけに、闇魔法士は多いのかも知れない。


「13階層か…」


昇降盤で13階層まで降りる。観光客向けの店が少なくなり日用品を売っている店が多くなっていた。


「シスおばあさんの家? 家があるのかは知らないけれど、西区にいるはずよ。細い洞窟路を進んだ先にいると聞いてるわ。冒険者なんかがよく訪ねていくみたいね」


「ありがとうございます。行ってみます」


とりあえず、西区に向かって歩く。デルメインは東西南北で地区が分かれており、俺たちは今南地区にいる。

デルメインに入るには、森に面している南地区にある門から入るか、北地区にある王都に続く門から入るしか方法がない。


西区に着いたらまず、シスさん家を確認する必要がある。同じ西区でも北区に近い場所だとかなり遠い。今日中にはつかないだろう。


心を見ながら、親切そうな冒険者に声をかける。やはり冒険者の中ではシスさんは有名らしく、すぐに教えてくれた。西区と南区の境あたりに住んでいるらしく、今日中に行って来れそうだ。


教えてもらった細い洞窟路を進む。小さな露天がところどころに並んでいるが、ひとけは少ない。ずいぶんと奥まで続いていようで、だんだん道が狭くなっている。


「ん?行き止まり…ではないか。」


俺とルーがギリギリ並んで歩けるくらいの道をひたすら歩いてきたが、ここがそのシスさんの家なのだろう。行き止まりになっているが扉がある。


「すみませーん、シスさんはいらっしゃいますかー?」


ノックし呼びかけてみる。


するとすぐに扉が開いた。


「入りな」


とりあえず、中に入る。入口は小さかったが室内は広い。


デルメインの住宅はたいてい洞窟型で、壁面をくり抜くように作られている。壁や床はきちんと木材やタイルで装飾されていることが多く、洞窟の中とは思えない内装になっている。


しかしこの人は、洞窟をそのまま住処としているらしい。石の混ざった土がむき出しだ。テーブルや椅子、壁には絵も飾られており生活感はある。住んでいるのは間違いないだろう。


「あなたがシスさんでしょうか。闇魔法士だと聞いてきました。」


「そうさ、私がシス。闇魔法を習いにきたんだろう?」


おばあさんだと聞いていたので、もっとこう魔女みたいな腰の曲がったお婆さんを想像していたが、

背筋がピンと伸びた白髪の美人が立っていた。


この世界はマナに愛されているほど、寿命が長くなる。普通の人で300年くらいだ。

この人はお婆さんと呼ばれていることから、300歳くらいなのかも知れない。


「はい、闇魔法の師を探してここにたどり着きました」


「みなに教えられたらいいんだがね。そうもいかない。付いてきなさい」


左側の部屋に入っていく。が、扉の先に部屋はなく、階段が続いていた。


かれこれ3時間くらい歩いた気がする。おそらく20階層くらいまで降りたであろうというところで、ようやく階段は終わった。


「さあ着いた」


階段の先に続く洞窟路のさらに奥、闇霧(ダークネスフォグ)に覆われているのが見える。


「あれは…?」


闇霧(ダークネスフォグ)だね。おまえが善人であれば問題はない。やることは簡単さ。あれをくぐり戻ってくれば良い。」


闇霧(ダークネスフォグ)は洞窟路を遮るように広がっている。その先は全く見えない。


「あの奥には何が?」


「ただ洞窟が広がっているだけさ。ただ、」


シスさんが言うには洞窟の広さは人によって変化するという。1日で戻ってくる者もいれば、10日かかる者もいる。戻って来れない場合もあるのか聞いてみたが、それは悪人だった場合に限るそうだ。稀に、洞窟を何日も歩き続け瀕死の状態で見つかる場合もあるそうだが…。


「戻って来れれば良いのですね?」


「いや、そういう訳ではないね。闇魔法を教えるに値するか魔源様が判断しなさる。」


「魔源様…」


魔源様とはマナの源であり、マナそのものである。かつて、世界の誕生とともに生まれたとされる、6つのエネルギーはその力のままに秩序なく荒れ狂ってたという。それを治めたのが魔法神であり、エネルギーを世界に順応する形「マナ」へと変質させ、のちに大地や草木、様々な生き物が誕生した。


というのがこの国の神話だ。

魔源は魔法神とは別に、その土地によって信仰されていて、このデルメインはもちろんだが闇の魔源を祀っている。確か、どこかに神殿もあったはずだ。


「合格すれば、今よりも闇のマナが集まるようになる。そうすれば私がおまえにマナの使い方を教えてやるさ」


「なるほど、分かりました。ルーをよろしくお願いします。万が一の場合には、ルーを教会へ。」


それから、教会に言伝を頼んでおいた。数日戻れないとなると心配して探しに来てしまうだろう。


「はいよ。まあ大丈夫だろうがね…。じゃあ、上で待ってるさ。」


俺は闇霧(ダークネスフォグ)向かって歩く。恐れはない。死ぬのが恐くないという訳ではないが、生きることにも執着心がない上に、何ならすでに一度死んでいるのだから。


身体がすべて霧に包まれ何も見えなくなった。とにかく真っ直ぐ進んでみるしかないだろう。


「何も見えないな」


闇霧(ダークネスフォグ)は抜けているのだろうが、洞窟内に灯りはなく依然として先は見えない。


「っと思ったが、抜けたようだ」


数歩歩いたところでぼんやりと明るくなってきた。


そしてしばらく進むと(ひら)けた空間に出た。洞窟とは思えないほど広く、そして明るい。どうやら光は、中央にそびえ立つ虹色のクリスタルから発せられているようだ。


「なんだこれ」


高層ビル並みの高さはあるかというクリスタルは、空間の中央に立っており、そこから何本か光が伸びている。

エーナ村の本は読み尽くしたつもりだが、これが何なのかさっぱり分からない。


『こっちよ』


「!?」


呼んでる、のか?


『ほら、早く奥に来なさい』


奥ってどこだよ。と思いながらも、とりあえず、中央に立つクリスタルに向かって歩く。


それにしてもデカいなこれ。近づけば近づくほど、虹色に輝くその異様な光とその大きさが際立ってくる。


『そうそうそっちよ。その奥の扉から入ってらっしゃい』


ああ、あそこか。


俺の立っていた場所の真反対。クリスタルをぐるっと避けるように進んだ先、壁の一箇所に木製の扉がはめ込まれている。


ノックし扉を開ける。


「お邪魔しまー…えっ!!!?」


『待っていたわよ坊や! もちろん、合格よ』


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ