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17.王城散策

案内された客室がすごい。


居間にはソファに暖炉、奥が寝室になっておりベッドには子供3人は余裕で寝られる広さがある。もちろんバスルーム付き。こんな広いというのに、俺とルーには別々の部屋を用意してあるというもんだから、流石に断った。


「何かあれば、そちらの呼び鈴に魔力を流してください。使用人が参ります。それではまた夕食で」


ノア団長が一礼し部屋を出て行く。



「こんな魔道具見たことないな」


流石は王都といったところだろうか、呼び鈴の魔道具なんて初めて見る。


「魔道具ってどうやって作るんだろうね」


ルーを見ると、ルーも考えているようだ。魔力から製成する魔法は自分のイメージで形作られる。魔法陣からの魔法は、文字からのイメージで具現化される。ならば魔道具はどうやって作るのか?


「…ませきになにかする」


「うん、そうだろうね。魔道具には必ず魔石が使われている。そして大抵はどこかに魔法文字が書かれている」


よし、決まりだ!明日は魔道具屋に行ってみよう。王城の魔道具屋ともなれば珍しいものばかり置いているに違いない。ついでに教えてもらえるか頼んでみよう。


そのあと俺たちは呼び鈴の魔道具をあれやこれやと調べ、いつの間にか夕食の時間になっていた。


用意された食事を堪能し、夜の鍛錬をしてから、少しばかり落ち着かない部屋でルーと眠りにつく。





「おはよう、ルー」


朝食前の朝の鍛錬。これぞまさに朝飯前。魔力循環に、走り込みをしながら魔法の撃ち合いをして、最後に剣で模擬戦をするのがいつもの日課だ。


「一度、外に飛んでも良いけど、せっかくだしあの噴水の前でやろっか。魔法の打ち合いはできないから、今日は走り込みだけにしよう」


普段は森の近くまで転移し鍛錬しているのだが、せっかくなので中庭で魔力循環を行ってから、王城の中を走ることにした。走りながら今日まわる店をチェックしていく。


「ノア団長が紹介してくれた魔道具屋も良かったけど、ここ良さそうじゃない?」


店はまだ閉じているが、中で店主らしき人が熱心に作業をしているのが見える。店の中は物で溢れていて王城らしからぬ様子だ。


「あ、気づいてくれた」


薄汚れた窓から2人で必死に覗いていたので店主も流石に気がついたようだ。


「なんだ?坊主たち、なんか用か?」


これまた煌びやかな王城には似つかわしくないおじさんが出てきた。デルメインの採掘場に居そうなほどガッチリとした体格である。


「今日また後でお邪魔しても良いですか?魔道具を作っているところを見たいんだけど」


「ん?別に構わねえぞ、こんな店誰も来やしねぇかんな!ガハハハ」


キャリッジで一緒になったおじさんを思い出す。笑い方がそっくりだ。


「じゃあ、また鍛錬が終わったら来ますねー」


手を振りながら早々に立ち去る。さっさと鍛錬を終わらせてあの店に戻ろう。ルーに声をかけスピードをあげながら王城の中を走り抜ける。



「ん?あそこ訓練場だっけ」


しばらく走ったところで剣を交える音が聞こえてきた。昨日紹介されたような気がするが興味もなかったのでうる覚えだ。


「ルー、俺たちもあそこを借りて模擬戦やろう。その辺でやろうと思ってたけどまた変な勘違いされても困るしね」


警備してる人もいなかったので勝手に中に入っていく。大きめの扉を開け、剣の音がする方へいくと円形の訓練場にでた。騎士たちが2人1組で打ち合っている。


「これはユリウス様、ルー様。昨日はご無礼を働き大変申し訳ございませんでした。訓練場へようこそいらっしゃいました」


「えっと、ブラウン隊長…だっけ?おはようございます」


早速、ここを使わせてもらえないか聞いてみる。


「それはもちろんでございます。自由にお使いください。広場を空けろ!ユリウス様とルー様がお使いになる!」


隊長の号令にさっと騎士たちが動く。野球場くらいの広さのある訓練場がぽっかりと空いてしまった。


「いやいやいや、そんなに場所を空けられても。どうぞ皆さんも訓練されてください」


声をかけてみたが誰も動く気配がない。仕方がないので俺とルーは模擬戦を始めさせてもらう。


俺が使うのは愛用の闇黒刀(あんこくとう)。トライには普通の剣の方が扱いやすいと言われたが、やっぱり刀の方がカッコいい。寿命も長いことだし刀を極めたっていいだろう。ってことで、独学で刀を練習している。


ルーはトライからもらった短剣を使っている。剣先が弓なりに曲がっていてこちらもなかなかのカッコ良さだ。ちゃんとした剣をルーに持たせたいとかで、トライが探してきた代物だ。


軽く打ち合いをした後、いつも通りの3本勝負。もちろん真剣なので、すんでのところで止めている。


俺とルーの剣技レベルはほぼ同じだが、俺の方が体格の大きさや刃先の長さから有利になる。だが、ルーは危機察知能力が俺よりも高い。その為、俺が切り込んでも上手くかわし逆に飛び込んでくるのだ。初めて模擬戦をやった時には、俺はその動作についていけずルーが勝った。


そんなこんなで今までの勝敗は16対17。取っては取られをくり返している。


「よしっ!!!今日は俺の勝ちな」


「……」


負けた日は明日は相手にどう勝つか、どうやったら崩せるか考えながら過ごす。逆に勝てば、明日はどんな手を使ってくるかを考えながら過ごすのだ。


「ブラウン隊長、お邪魔しましたー」


「あ、はいっ、あのう…」


「ん?」


ブラウン隊長が何か言いたそうである。


「わ、私と手合わせ願えませんか!!!」


ん?手合わせ?


「別にいいですけど、俺とですか?それともルーと?」


「出来ましたら、お二人と…」


正直なところ、この世界で主流の西洋の剣を持つ相手とはほとんど戦ったことがない。こちらとしても良い訓練になる。


「どうするルー?いつもと違う相手とやるのも良いと思うんだけど」


「…ボクがかつ」


どうやら既にやる気満々のルーくん。


「じゃ、ルーが先で俺がその後ね」


「感謝いたします!!!」


「じゃあ、3本勝負でいい?いつも俺たちはそうしてるだけど」


「もちろんでございます!」


「んじゃ、いくよー…始めっ!」



ーーー結果は、ルーの圧勝。


一本目、一瞬のうちにルーが相手の懐に入り込み終了。二本目はブラウン隊長もそれに対応したが、それを見越したルーは後ろに回り、大きく切り掛かるように見せたフェイント。まんまとそれに剣を合わせてこようとしたブラウン隊長の懐に再びルーが飛び込み終了。


三本目はルーは何を思ったのかなかなか決着をつけず、ブラウン隊長の攻撃を受け流す練習を始めてしまった。身体の小さなルーが大人と斬り合えば、どうしても力で負けてしまう。おそらくはそれを想定した特訓をしたかったのだろう。俺が声をかけると、即座にブラウン隊長の心臓のあたりに短剣を突き出し終了した。


「参りました。ありがとうございました」


ブラウン隊長がルーに最敬礼をする。ルーは少し嬉そうだ。


それにしても、弱すぎる。少し異常ではないだろうか。魔法の方は少しチート気味なことは自覚しているが、剣は森での修行から始めたわけだし、ここにいる剣騎士の方が強くてもいいはずだ。それと彼らはずっと、小さな〈恐怖〉を抱えている。


「あのさ、弱すぎじゃない?剣騎士なのに」


「何を!!!貴様、無礼だぞ!!!」


あぁ、またアイツか。俺たちが捕まってた時にも同じように怒っていた。


「下がれ」


「しかし隊長!こんな奴に舐められては」


「下がれと言っている!!!ユリウス様のおっしゃる通りだ。我々は弱い。私たちは長くここを守りすぎたのだ」


「どういう意味?」


ブラウン隊長が言うには、ここは光のマナに溢れている。特にこの王城は怪我をしてもすぐに治癒されてしまうほどなのだそう。ならば、いくらでもトライとやったような特訓ができそうなものだと思ったが逆で、怪我すら恐れるようになり、死への恐怖心が高まってしまうのだという。


「私は昨日あなたにここの騎士が使い物にならないと言いましたが、それは私も同じなのです」


それで動きがぎこちないのか。斬られることへの恐怖、いや戦うことへの恐怖か。


「くそ…ふざけやがって。俺たちがどれだけ訓練を積んできたと思ってる。俺がやります。こんな奴、切り刻んでやる」


〈憎悪〉ですか。はいはい。でもやっぱりコイツにも〈恐怖〉があり、そして〈怯え〉ている。


「どうせなら全員でかかってきてもいいですよ。その場合こっちも本気で()るけど」


「なっ、全員ですか⁉︎ユリウス様それはあまりにも」


「大丈夫大丈夫。俺1人でもいけると思うけど、ルーがいれば確実に勝てるね」


ここにいる剣騎士はざっと40人。油断をするつもりはない。


「やってやろうじゃねぇか。舐めんなよ」


怒り心頭の若い剣騎士は今にも斬りかかって来そうな勢いだ。


「ブラウン隊長いいですか?全員相手だと手加減が難しいし、一応、治癒士を呼んでおいてください」


「心配はいらない、我々がここで死ぬことはない」


本当だろうか。確かに光のマナが多いが、それなら逆にデルメインの人たちはみんな死んでしまうことになるけど。


「覚悟しろっ!」


若い剣騎士が斬りかかってくる。そのほかの騎士たちは剣を構えはしているが動く気配はない。


「(ルー、なるべく殺しは無しだが、もうこれは鍛錬じゃない。本気で殺れ())」


ルーは即座に剣を抜き騎士の間を駆けながら斬りつけていく。俺たちはお互いに距離をとり、囲まれないように気をつける。


「(俺が魔法で奴らを囲う。あとはルーに任せる)」


言いながらも闇霧(ダークネスフォグ)を展開させ騎士を囲っていく。その輪から逃れた者にも、容赦なく魔法を放つ。


ルーはといえば、俺が騎士を囲った瞬間、すぐさまその頭上に巨大な石の円盤を作り出した。円盤は急降下し騎士たちを押しつぶす。一応、殺さないようにきちんと隙間を残したようで、地面から30cmくらいのところで止まった。


「このまま潰れても回復するのかな?もう少し下げてみようか」


ルーは構わずもう10センチくらい下げる。


「「「がはっ」」」


頭が少し潰されたのだろう。中から呻き声と命乞いをする声が聞こえてくる。


「お許しください。この通りです」


ブラウン隊長が深々と頭を下げている。


〈後悔〉〈畏怖〉。


別に俺たちもここで人殺しをしたい訳ではない。ただ少し俺たちへの対応を改めさせる必要があると思ったのだ。どいつもこいつもプライドが高いのか、俺たちへやたら突っかかってくる。


「ルー、許してやろうか」


俺とルーは魔法を消し、広場の様子を観察する。潰されていた騎士たちは血反吐を吐き、その場から動かない。急降下してきた石盤に反応しきれなかった者たちは頭を強く打ち付けられたようで、気を失っている者も多かった。


「んで、どうやって回復するの?」


しばらく待ってみたが回復する様子はない。確かに少し光のマナが集まってきているが、マナが勝手に治癒するなど、そんなことがあるのだろうか。


「た、助けてくれ」

「苦しい……」

「治らない、のか?」


ブラウン隊長も右往左往しながら騎士の様子を見ている。


「何故だ何故治らない!!!魔源様が私たちを見限ったとでもいうのか!?」


「いつもは治るの?というかマナが勝手に治すなんてことはきっとないし、魔源の力ってのはあるかもしれないけど。王かエルバとかいう人の魔法なんじゃないの?」


もしくは、トライが何かしているということもあり得る。これだけ光のマナがいれば王城全体にそういった治癒の魔法をかけることだって簡単だろう。


「それは…」


「そんなことより早く治癒士なり回復薬なり持ってきた方がいいんじゃない?ホントに死ぬよ」


そう言った途端、倒れている人たちの〈恐怖〉が大きくなり恐慌状態となった。泣き喚き、助けを求め、必死にもがいている。


俺もルーも死ぬギリギリを知っている。これだけ動く元気があれば大丈夫だろう。一部ヤバそうな人もいるが治癒士が来れば問題ない。


『哀れね』


いつの間にかダースも観戦していたようだ。


「あぁ。本当に哀れだよ。」


本当に死人が出ては俺たちも後味が悪いので、治療が終わるまで見ていることにした。治癒士や製薬士が必死に治療を始め、しばらくしてほとんどの騎士の傷が治った。腕や足を切り飛ばしてしまった者たちについては、ここにいる治癒士では治せないらしく後でトライに頼むことになった。


「ユリウス様、ルー様!」


途中、ノア団長が血相を変えてやってきた。


「あーー…ノア団長。なんというか、すみません!」


こちらが悪い訳ではないのだが、なんとなく謝っておく。この人たちを怪我させたのは俺たちだしな。


「何があったのですか」


「ノア団長、私から説明しましょう」


ブラウン隊長がやってきてことの顛末を説明してくれる。


「…なんと愚かなことを。しかし、あなたたち城門騎士には良い機会になったでしょう。少なくともあなたの隊はこれで大丈夫そうですね」


「はっ、これまでの訓練を見直します」


「それが良いでしょう。ユリウス様、ルー様、謝る必要などございません。むしろ感謝しております。あなた方のおかげで彼らはこのまま騎士を続けられるのですから」


「ん?どういうこと?」


「ご存知の通り、王宮では今、戦えない城門騎士が問題になっています。加えてここ光城(ルクスパレス)は強固な結界に守られていることから、城門騎士を減らすという動きがあるのです」


騎士団は何個かあって、王宮騎士団が最高峰でノア団長はここのトップだ。そのほか、王城周辺を守る城門騎士団、地方に派遣されて国を守る辺境騎士団とある。


「戦えない騎士は、騎士を脱隊するか、辺境騎士団に行って矯正されるかどちらかです。しかし、辺境に行っても戦えない者には死が待っています。これまで向こうへ送られて戻ってきた者はいません」


我々の隊も元は50人以上の隊でした。とブラウン隊長がつぶやく。


ここの人たちは戦う前から小さな〈恐怖〉が見えていた。それは死への恐怖だけではなく、騎士の身分を剥奪されることへの恐怖心もあったのかもしれない。


「じゃあさ、みんなで特訓して強くなればいいじゃん。治癒士もこんなにいる訳だし、死ぬ直前まで鍛えたらいい」


「え?死ぬ直前、ですか?」


ブラウン隊長が〈驚き〉で目を見開いている。


「ちなみに、俺とルーはそれで強くなった。トライに何度殺されかけたか分からない。でも結局さ、こうやって何かがあれば強い人が生き残るんだよ」


こうしてなんの縁か俺たちは王城にいる間、ブラウン隊長の隊を特訓することになった。俺に何度も突っかかってきた奴も〈尊敬〉の眼差しで見てくるようになったし。狙い通りだった、としておくとしよう。

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