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10.防御結界魔法

昨日はいつも通りのメニューを終えてから魔力で遊んでいた。まずは自分の身を守るための防御系。


闇霧(ダークネスフォグ)はすぐに出来たのだが、命があるものには効果があるそうだが、弓矢なんかの物理攻撃が飛んできた場合は意味がないことが分かった。今のところは、土のマナで壁を作ったほうが良さそうだった。


あとは攻撃系。これは闇の魔力を適当にとばすだけで、致命的な一撃になる。なにせ闇属性は死を司るのだから。ルーのほうも、石のような硬さにした土を飛ばす石礫(ストーンブレイク)を試してみたが、今のところはこれで充分そうだった。


お互いに石礫(ストーンブレイク)を飛ばして、ぶつけ合う遊びはなかなかに楽しく白熱した。いや、盛り上がっていたのは俺のほうだけかもしれないが。



「では、集まったようですので紹介しておきましょうか。彼は、トライ。そこの小さな少年と組んで一角を任せる予定です。彼は冒険者ですが、極みの称号を持っています。国からの要請でここに来てもらいました」


「どーも、トライです。ディス、堅苦しいのはやめだー。そういうの面倒で嫌いだからな。さっさと結界張りに行って終わらせよーぜー」


俺とルーは軽く挨拶をしておく。


「俺がユリウスでこっちがルー。いろいろあってこいつ喋れないから宜しく」


「しゃべれないのかー。じゃあルー、お前は俺の言うとおりにしとけなー」


『あら、ルーは話せるわよ』


「「え!?」」


「ルー!話せるようになったの!?」


俺は慌ててルーに尋ねる。


ルーがコクリと小さく頷く。


「そっか、よかったな」


『この子ったら、話せるようになったらユリウスに捨てられるんじゃないかって怖がってたのよ』


「ん? どういうこと?」


『話せるようになれば、孤児院に置いてかれると思ってたんでしょう?ねぇ、ルー?』


また小さくてコクリと頷く。そしてポツリポツリと話し始める


「…かぞくはいない…ユリウスと、いたい」


まだ感情は見えない。完全には心を開いてないということだろうか。


「別にそれは構わないよ、ルーの人生ルーの好きなようにしたらいい。ただ一人でも生きていけるようにはならないとダメだけどな」


また小さくコクリと頷き、少し顔を上げる。


〈歓喜〉


あれ?今度は見えた。顔は相変わらず無表情だが目がキラリと光り、喜んでるようだ。


「あ!!!というか、ルーの本当の名前は?何て名前なの?」


「…ルーがいい…ルーのままがいい」


んー。家族を失ったから忘れたいのだろうか。まあともかく、話せるようになったしルーがそれで良いならいいか!


「よしっ!じゃあ、さっさと結界張って外に出よう!」


「あ、いやーちょっと、あのー…」


先ほどからずっとソワソワしていたトライがしどろもどろになっている。


「なんだいトライ。何かあるならはっきり言いな」


シスがピシャリと言う。


「いやいや、シスもさーオカシイでしょー。ディスからも何も聞いてないし。ダース様ですよね? なんかユリウスって子に宿ってるように見えなくもないんですが… 」


「「あ、」」


どうやら、2人とも言うのを忘れていたらしい。というか、この人もダースが見えるのか。そういえば極みの称号を持ってるって言ってたな。


極みの称号とは国から認められた冒険者に贈られる称号のことで、一般的には(ごく)Sランクと呼ばれている。ちなみに、冒険者ランクは見習い冒険者のFランクから始まり、下級冒険者と呼ばれるEランク・Dランク、中級冒険者のCランク・Bランク、そして上級冒険者のAランク・Sランクがある。



『あら、ワタクシはユリウスに宿ることにしたのよ』


「えぇぇぇぇえええ!!!!それってなんかヤバくないです? バレたら大変なことになるんだけど…」


「そうでした。すっかり言うのを忘れていましたが、その件は自分でなんとかして下さい。今は結界が先です。ここの衛兵は本当にクズしかいないので、私がいなければ1時間と持たないでしょう」


「そうだねぇ。まずは結界だね。じゃあさっそく魔石の地点に運ぶよ。トライの光魔法の合図で一斉に発動開始って事でいいかね?ルーはトライと同じようにやればいい。失敗しても、トライがなんとかするから心配いらないからねぇ」


「俺は?」


「お前にはダース様がいるでしょう。ダース様が教えて下さりますよ」


少し悔しそうにディスが教えてくれる。


「じゃあ、行こうかねぇ」


シスの言葉と共に、それぞれの足元に魔法陣が描かれる。


そしていつの間にか俺は魔石の前に立っていた。


「転送魔法か…」


『そうね。空間転送(トランスペース)ね。移動にはかなり便利だから後で覚えたらいいわ。あ、そうだわ。ワタクシ、魔法陣を使う魔法はあまり得意じゃないからあの子に聞いてね』


「わかった。で? この魔石に魔力をこめればいいの?」


『そうね、合図があったら適当に込めてみて。多いとか少ないとか教えるわ』


「りょーかい」


合図を待ちながら周りを見渡してみる。俺は北東が担当だ。魔石の周りにも結界が張ってあるらしく、ここは安全らしい。


だがデルメインの1階層目は道端の露天が見る影もないほどに潰され、多くの動物や魔生物がばっこしているのが見えた。


「ひどいな…」


『そうね。だけれど人間のほうがもっとひどいことをするわ。あの生き物たちは、純粋に力比べをしているだけですもの。人間はもっと醜い争いをする』


確かにダースの言うとおりかもしれない。人は相手の弱みを握り、隙を突くことを平気で行う。卑怯だろうがなんだろうが、勝つためには手段を選ばないのが人間だ。


「そうかもね」


『さあ、そろそろよ』


ダースから促され、俺は身体の魔力に集中し始める。すると、北西の方角から一筋の光が空に向かって走るのが見えた。


それを確認するなりすぐに魔石に魔力を注ぎ始め、デルメインの大穴を塞ぐように張られた魔法陣が光り始めた。


『良い感じよ、そのまま送り続けて。』


魔法陣の上に少しずつ結界が作られ始める。数分後には、デルメインの大穴をドーム状に囲うように結界が張られた。


「もうそろそろいい?」


『魔法陣の光が消えたら止めても大丈夫よ。それが完全に結界が張られた証になるわ』


それからまた数分後、ダースの言葉通り徐々に魔法陣の光が消え、ドーム状の結界だけが残った。


「やっと終わったか…」


ルーは大丈夫だっただろうか。難しい事をやった訳ではないが、緊張していたのか少し疲れた。


「お疲れさん。本当に良くやってくれたねぇ」


突然、目の前にシスが現れる。


「さあ、帰ろうか」


来たときと同じように足元に魔法陣が描かれ、次の瞬間にはシスの家に戻っていた。ルーはトライに連れてきてもらったようだ。


「ルー、大丈夫だった?」


ルーはすぐにコクリと頷く。大丈夫そうだな。


「あのさー大丈夫も何も、何者だよこいつ。俺と同じ量を普通にこめやがったぞ? おかしいだろーがー」


『あら、ルーはワタクシの弟子だもの。本当は一人で一角をまかなえるくらいの力はあるわ』


ダースが当たり前だという素振りでトライに言う。


「人間の…しかもこんなちっこい奴が一角をね…俺は帰ってなんて説明したらいいもんか…頭が痛いぜー」


「分かっているだろうがトライ。この子たちのことは上手く隠すんだよ」


シスが釘を刺すようにトライに言う。


「わかってるわかってる! ただ、王には無理だ。それと側近の一人にもだな」


「それはしょうがないだろうねぇ。お金も出してもらっているし。まあその者たちにバレても、この子たちへの障害にはならないだろうよ」


「それは保障する。こいつらが不利になるようなことは一切無いと誓うよ」


「それじゃあ次だねぇ。


トライ、2人を連れて動物の暴走を止めにいってきておくれ。」


「「えっ・・・」」


どうやら俺たちの平穏は、まだ訪れないようだ。

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