魔法学園卒業!そして…
Side アレク
城門前で門番と問答していたが、さすがに飽きてきたな。
そろそろ城内で動きがあるだろうとは思っているんだが、遅いな。
お、ようやく来たか。
コルネリウス。
「どうしたんだ、コルネリウス。こんなところに」
「それは兄上もでしょ、何言っているの」
俺は肩をすくめ、
「それもそうだな」
そう笑って答えた。
「兄上は、姉上のことを知っていたのですか?」
はて?あいつはなにをどこまで話したのかな?
「お前が生まれる前からの仲だぞ?
生まれたときから知っているから、大抵のことはな」
そう、誤魔化した。
「そう言うことを言っているんじゃない!」
ほお、ここで激怒するってことは、色々と話してしまったんだな?
「じゃあ、どういうことだ?」
「姉上が第二王子だとか」
「そうだな、あいつは第二王子だな」
「姉上が責務から逃げているように見えて、逃げていないこととか」
「お前から見たら、逃げているように見えたか」
「それを叱らない兄上に、俺は不満に思っていた」
ほお?ようやく本音か?
「あいつは責務から逃げていないからな」
「姉上はこれからずっとずっと、この先もこの国を見守るとか」
ちっ!あいつ、そこまで話したか。
「そうだな。あいつは大切な人と共に、ずっとこの先もこの国を見続ける。
この国どころか、この世界全体をな」
なら、俺もちょっとだけ真実を混ぜる。
「兄上は止めなかったのですか?」
止めたかったさ。人としての幸せを求めてもいいんじゃないかってな。
「あいつはこの世界から見たら、どうしても異質だからな。
あいつが世の中に耐えられないんだろう」
これはアイツの本音。
「それでも、姉上には幸せになってもいい権利がある!」
こいつも考えているんだな。
「だが、それでも恨んでくるのは、自分の子孫だ。そんなのは報われないだろ?」
そう、ホントに報われない。
「俺たちが子孫を説得すればいい!」
それは理想論だ。それに口にした瞬間にダメなんだ。
口にする前の段階で止まらないと、ダメなんだ。
「アイツはアイツで、大事な人がいるって言ったろ?その人のことは聞いたか?」
アカネ殿のことをコルネリウスは知らない。
「聞いてない」
はあ。教えられないよな。彼女は残酷な運命を背負っているからな。
あいつはそんな彼女と共に、これからを過ごすんだろう。
「教えられないってことなんだろうな、まだ、お前には。
お前が何か間違えたことを言って、怒ってしまうことを恐れたんだろう」
これは本当だろう。他人に言われたくないことだってある。
「俺には、わからない。そこまでして人を好きになることが…」
お前には恋愛結婚して欲しいよ、私は。私は政略結婚だからな、一応。
「お前にも、いずれわかるときが来るさ」
「…兄上と、ここまで話したのは初めてです」
「そうだな」
「俺たちはもっと話し合うべきだった。もっと、早くに…」
「そうだな」
「話さなきゃ、伝わるものも伝わらない」
「そりゃそうだ」
「このままじゃ、知るべきことも知らないままだ」
「お前にも技術を隠さずに伝えなきゃな。アイツの代わりに」
「よろしくお願いします」
「ああ。…ところで、いつまで隠れているつもりだ。ディーネ?」
「え、えへへ…」
「まったく…」
「姉上。姉上のことも、もっと教えてください」
「よーし、私のこといっぱい教えてあげるね!」
まったく、無邪気な笑顔を弟に向けるな。
お前のせいで、『また』歪んでしまうぞ。
Side ディーノ
今日の俺は男装だ!
ナンシーには泣かれそうになったが、弟との交流だからと押し切った。
俺はコルネリウスの部屋にさっそく向かった。
ノックをして、許可をもらい入室する。
「よお、愛しの弟コルネリウスよ!」
「…」
「ん?どうした?弟よ?恥ずかしいのか?兄上だぞー!」
「い、いえ…」
「どうしたっていうんだよ?調子が狂うじゃないか!はっはっは!」
「自分の姉上だと思っていた兄上が、こんなにお調子者だと思わなくて…」
俺は空気がピシッとひび割れる音が聞こえた気がした。
心なしか視線を逸らし始めているコルネリウスの肩を掴み見つめる。
「いいかー?これにはな?深ーい事情があってな?
母上や王宮メイドたちに矯正されたんだ。
俺は頑張ってしまったんだ。そこで。なぜかな!!」
「兄上はイヤイヤだったんですよね!?よかった!!」
「いや、前世でも結構ノリノリでやっていた節もあるから…
案外気に入っているのかも?」
「あ、に、うえ…?」
「まあ、細かいことは気にすんな!はっはっは!」
しばらく、フリーズしてしまったコルネリウス。
そんな弟を見て、どうすればいいのか困ってしまった俺だった。
そこからは俺がどんなことをしてきたのかを教えてやった。
ホントに色々作ってきたよなー、俺も。
ゲーム機に料理と美容製品とか…
「え?あの体感訓練機って、兄上の発想から生まれたんですか!?」
「ああ、正確には前世のものからだがな」
「兄上がいた世界には、ああいうもので溢れていたんですね!」
「そうだなあ?いっぱいあったなー。
知識の破片はばら撒いているから…
これから、こっちでも色々と出てくるかもな!」
「ピザとフライドポテトの発想も兄上だったんですか?」
「俺が食べたくてなー…
あの頃の俺は食いしん坊って思われていたんだろうな。ははっ」
「『グラタン』とかも作っていたんですね…」
「あー、あれには苦労した。曖昧過ぎる知識はホントに使えん」
「そ、そんなにですか…」
「そんなにだ。今ならレシピを取り寄せられるから、色々と作れるんだがなあ」
「ほ、ホントですか?!」
「あー、期待しているところ悪いが…
材料や調味料がないんだ。こっちの世界ではな」
「向こうの世界の調味料ですか…」
「機会があれば、食べさせてやるさ。いずれは『紹介』しておきたいしな」
「え!魔法に詠唱って必要ないんですか!?」
「ああ、必要ないぞ?アレクも俺も使っていなかっただろ?」
「ど、通りで、好き放題されるわけだ…」
「ははっ、そう落ち込むな!これから意識すれば、お前にもできるさ。
まあ、『王家の神髄』ってことにしておけ?」
「『王家の神髄』?」
「ああ。その方がかっこいいし、何より敵にマネされたら怖いしな」
「そ、そうですね…」
「あ、あとお前が儀式受けるまで俺と手をつないではしゃいでいた『あれ』。
『あれ』にも、実は意味があるからな?」
「え?あれにも意味があったんですか!?」
「ああ、あれは魔力訓練だ。しかも、聖女式のな」
「聖女式…」
「まあ、元々は一人でしていたものが、複数でできるようになったものだ。
詳しくは聖女アンナに聞けって言っても、アイツ、引きこもり始めたからなー」
「聖女なのに、引きこもり…」
「それも教えておいてやるよ。一人で出来るようになっとけ。
あんまり、他人にはベラベラとはしゃべんなよ?」
弟との時間が過ぎていき、俺の残り少ない自由時間はなくなっていった。
残りのわずかな時間で、体感訓練機はゾロのおっちゃんを軸に譲った。
母上の専属の音楽家には、録音事業を引き継がせた。
スラム街に関しては、アレクが継続して事業を続けることに。
四つの領地運営は、コルネリウスに相談して受け継いでもらった。
黄金商会も王都本部の冒険者ギルドに任せることにした。
あの笑いは、代々の冒険者たちが引き継いでいくことだろう。
だが、名誉会長という形で写真と名前を残すことにした。
代々のギルドマスターには顔を出すことをなるべく約束した。
何かの理由で、ひょっこりと顔を出すための布石だ。
そして、いよいよ!
学園に戻り、卒業までの『単位短期取得計画』の実行なのだ。
計画案はナンシーとヴォルクスが、頑張って考えてくれた。
す、すまんと思っている。
俺たちのクラスは一人欠けちまったが、それ以外は全員無事に卒業した。
あの七人は俺が王都騒動のときに鍛えただけあってか…
魔力量がちょーっと異常な量になってしまったのだ。
彼女たちの魔力量は、俺に迫る量だ。
まあ、魔力の質はまだまだ俺のが上だがな。今のところは量だけだな!
師匠として、弟子に負けるわけにはいかないのだ!
これからも魔力は鍛え続けようと決め、内心焦りを覚えている俺だった。
国としても扱いに困ってしまう程の存在になってしまった彼女たちだが…
比較的仲が良かったティナに、彼女たちは近衛隊として拾ってもらえた。
彼女たちの就職先を見つけ、縁をなんとかつなげることが出来た。
いやー、よかったよかった。
うんうん、マジで彼女たちに恨まれるところだったよ…
卒業パーティの途中で俺は抜け出して、アカネの下でパーティをした。
これにはアレクやティナ、コルネリウスも参加した。
コルネリウスにはアカネを紹介した。
俺たちはアカネの料理に舌鼓を打ち、コルネリウスはその味に驚いていた。
護衛や侍従たちも一緒になって、俺を祝福してくれ、食事を楽しんだ。
父上や母上も少しだが顔を出して、俺を祝ってくれた。
みんなでボードゲームもして、楽しく夜を過ごした。
この日、この後に待つ別れを感じさせない一日となった。
そして、無事に魔法学園を卒業したことで、俺は表舞台から姿を消した。




