対決 後輩冒険者!恐怖の堕落
二投目!
Side 冒険者
「な、なあ、お前ら?一体、何があったんだ?表情が抜け落ちてんだけど…」
「…聞かないでくれ」
「黄金の爪主催、対決シリーズ!第二弾!開催しまっーす!!」
「はあ。この先輩は呑気なもんだなあ?」
「絶対に、許さねえ。絶対にだ…」
「今回の対決内容はああああ?」
「ほんっとにうるっさいな」
「絶対に負けねえ…」
「リレーでぇええっす!」
「リレー?なんか渡すのか?」
「なんでもいい、負けは許されない…」
「今回のルール説明をいたします!
この楕円状に線が引かれている線に沿って、パーティで走ってもらいます!
ただし、ただ走るだけではありません!
こちらの『バトン』を持って走ります!!」
「なるほど?その『バトン』とやらを渡すのか」
「体力系の勝負なら絶対に負けねえ!!」
「その通り!この『バトン』を各走者に『順番』に渡してもらいます!
触れてさえいれば大丈夫です!
『順番』を抜かしたり、飛ばしたりしてゴールするのはダメです!」
「ふむふむ」
「めんどくせえな」
「魔法の使用についてですが、何でもありです!
直接攻撃の殺傷系さえ使わなければ、妨害などなんでもありです!」
「へえ…!」
「ほお…!」
「では、走る順番などの作戦会議も含めて、走りやすい服装にお着換えです!
はい、走って!!」
「こんなとこで無駄な体力を使わなくていい、着替えるだけだ!
走る順番は僕が考える!」
「お前ら!いいな!絶対に勝つぞ!!」
「さてさて、今回はディーネさんですね。お越しいただきありがとうございます」
「はあ、私も暇ではないのですが…」
「見どころはどこになりますかね?」
「まあ、魔法での妨害じゃないですかねー?
なんでもありですから、転ばせるのもありですし…
何らかの魔法で一気にゴール、ってのもあり得るでしょう」
「さあ、両パーティ、着替え終わり、作戦も考え抜いてきたようです!」
「勝ちはもらったよ」
「うるせえ!俺たちはもう負けられねえんだ!!」
「第一走者から最終走者まで、位置に着きました!
負けた方には罰ゲームです!
どちらに勝利の女神は微笑むのか!?」
「僕の考えた作戦なら、負けはしない!」
「こんなのは基本を押さえてゴールすればいいんだよ!」
「位置について!よーい!」
『パン!』
「お先!」
「意外と速いっ!?」
「ははっ、僕がいつから体力なしに見えたのかな!」
「くっ、くそっ!?なーんてなっ!」
「なっ、足元に『バインド』だと!?くそっ、両手まで!」
「ははっ、亀のように這いつくばってな!!」
「くそっ、片手さえ抜ければっ!」
「お前ら!さっさとゴールしろよ!」
「ぐぬぬ!」
「ほらよ!」
「これは決まってしまうか!?」
「まあ、あのまま動けなければ、負け確定ですわね…」
「もうちょっとで…」
「うぉぉぉぉお!」
「よ、よし、抜けた!これなら!」
「おらよ!もう少しだ!」
「飛べ!彼方へ!『順番に』!バトンシュート!!」
「な、なにっ!?」
「ほおっ!考えましたね!!」
「必ず手渡しする必要はなく『順番』に触れていればいいルールですからねえ。
まあ、ゴールするには、最後は走らないとですが…
それにしても、咄嗟に独自の魔法を作る姿は素晴らしいですわね」
「いっけええええ!」
「ちくしょう!それで最終走者をあんなゴール手前に!」
「よし、あとはこの距離を走るだけ!」
「くっ、あとは頼んだぞ!」
「おおおお!」
「くそっ、くそっ、さすがにこの距離は…!?」
『パン!』
「ゴール!勝者、風竜の角!!」
「作戦勝ちですわねえ~」
「やったああああ!」
「うわああああ!」
「さて、今回の罰ゲームですが…
登って登って!トラップタワーです!!
罰ゲーム会場には、後日案内します。では、また会いましょう~!!」
「ふう。なんとか今回も勝てたね」
「また、あんな目にあうのか、俺たちは…」
Side 風竜の角
「なあ、ヒューイット?なんで勝者の俺たちも呼ばれてんの?」
「知らないよ、デビット。だけど、僕たちは別口のようだよ」
僕たちは地下への道を通ったあとに、階段をのぼってる。
下がったり上がったりと忙しいな。
「なにか手伝わされるのかねえ?」
「アニー姐さん、どうせ手伝わないじゃん」
「何か言ったかい?テリー?」
「いいえ…」
まったく。あの二人も、もう少し仲良くしてくれてもいいのにな。
お、ついたようだ。
ここが今回僕たちが滞在する部屋のようだ。
結構な数の動く壁画がついてるな。
これで罰ゲームを受ける彼らを監視できるようだ。
なんか面倒な仕事な気がしてきたぞ?
「おー!結構快適そうな空間じゃん!
見ろよ!風呂もついてるぜ!景色が最高だな!!」
「アニー姐さん、風呂好きだもんね。よかったね」
「なんだい、テリー坊?一緒に入りたいのかい?ははっ」
「ひ、一人で入ってよねっ!」
「やれやれ、このテーブルの上にあるのが『指示書』かな?」
「なんて書いているんだ、ヒューイット?」
「どうやら、僕らは彼らがこのタワーを登ってくるのを妨害する側らしい」
「楽しそうじゃん?」
「いや、一見楽しそうだけど、ホントに楽しいのかな?」
「何か引っかかるのか?」
「何か、すごく、とても大事なことを見落としている気が…」
「あ、ドールさん!お茶くださーい!」
「もう、お茶くらい自分で淹れなよ」
「いいじゃないかい、テリー坊。
ドールさんもそのためにここにいるみたいだし」
「あ、ドールさん、僕も手伝います。お茶菓子はこれですね?」
「ヒューイット、暇だぞ?」
「デビット。なら、あの動く壁画『モニター』とやらを監視するといいよ」
「へいへい。お、奴ら頑張ってるじゃん。もう十階だぜ?全部で五十階だろ?」
「そうだったはずだよ。クリアするまでの『耐久』って聞いているよ」
「ふーん、この手前についてる出っ張りとか色々あるけど、なんなんだ?」
「んー?この『手引書』によると、妨害ユニットとかを操作できるようだよ?」
「へー!楽しそうじゃん!じゃあ、さっそくこれだな。ポチッとな!」
「お、何したんだい?デビット坊。あいつら、弓矢に撃たれて消えたけど」
「わからん!」
「デビット…
なんでも『転移の矢』らしいよ。
あれに当たると、強制的にスタート地点に戻されるらしい」
「え、えげつないね、ヒューイット」
「僕が考えたわけじゃないし、操作したわけじゃないけどね」
「お、これって記憶版って奴じゃないかい?しかも、金版じゃないかい!?」
「え?すごい!金版ってかなり高いんだよ!み、見れるの?」
「ドールさん、これ見れるのかい?
へ?この最新式の上映装置で見れるのかい!?
おー、すごい綺麗に映るじゃないかい!
テリー坊、お茶菓子だよ!!」
「なんで僕が…
僕も見たいから、待っていてよ!?アニー姐さん!!」
おかしい。なんだ、この至れり尽くせり空間。
まるで、長時間ここで過ごします!と言っているようじゃないか?
僕たちが呼ばれた理由はなんだった?
罰ゲームを受ける彼らを妨害するため?
そして、彼らはクリアするまで『耐久』。
…ま、まさか!?
僕ら、彼らがゴールするまで、ここに滞在することになるのか…?
う、嘘だろ…?
「ヒューイットー、妨害飽きたー。
あいつら、おんなじのに引っかかるんだもん。つまんねー」
「で、デビット…?彼らは最高何階まで来たんだい?」
「えー?十三階?」
「デビット、いいか?もう『妨害』はするな。
本当にやめておけ。僕たちが『苦痛』を味わうぞ」
「えー?たまに覗いて妨害するくらいでいいんじゃねーの?」
「いいから、やめるんだ。いいね?」
「はあ。ヒューイットがそう言うならやめとくわ。
なんか暇つぶしないかなーっと。
お、ドールさんなにそれ?ボードゲーム?
ご主人様たちが作ったの?いいぜ、やろうぜ!」
こうして、一日目が過ぎていった。
「おはよ~。お布団気持ちよかったねー」
「テリー坊!朝風呂入るよ!今なら景色が最高さね!!」
「もうっ!一人で入ってってば!」
「おーい、ヒューイット?頭働いているか?」
「…ぅ、うん。働いているよ…
あ、ドールさん、ありがとうございます。
なんです、これ?すごく香りがいいですね、目が覚めるいい香りだ。
『コーヒー』って言うんですか?
淹れ方も色々あると?興味深いですね…」
「朝風呂は気持ちいいねー!お、ドールさん、朝食かい?おいしそうだね!」
「ちょ、ちょっとアニー姐さん!前、はだけすぎ!!」
「いいじゃないかい、テリー坊。湯上りで暑いんだよ!
それとも、興味があるのかい~?にひひっ」
「そんなんじゃないやい!」
「あ、ドールさん、わざわざありがとうございます。
この朝食もおいしいですね。
この緑色のお茶の苦みがまた…
え?このお茶でさっきのコーヒーの様に飲める?あとで飲ませてください!」
「ヒューイット。
なんて書いているかわからんけど、絵だけでもなんとなくわかる本があるぞ!
結構面白いぞこれ!
あ、ドールさん。え?文字表がある?
かー、めんどくさいけど、解読しながら読むか!絶対面白いもんなこれ!!」
二日目が過ぎ、この時点で罰ゲームを受けている彼らのことを忘れ始めていた。
三日目、四日目と快適に過ごし、僕らは気づかずにここを満喫していた。
そうして、日付感覚を失くした頃に、アニーがキレた。
「ヒューイット!もうあたしゃ、飽きたよ!いつまでここにいるんだい!?」
「え?僕はまだここで滞在してもいいんだけど…」
「アンタ、大丈夫かい!?もう何日ここにいると思っているんだい!」
「ええーっと、何日経ったんだろう?」
「ひゅ、ヒューイット?ホントにどうしたんだい?アンタらしくないよ?」
「い、いや、ここの生活が快適すぎて…
なんか忘れてるなあ程度には思っていたんだけどね?」
「あたしたちは罰ゲームを受けているあいつらを監視する。
そして、妨害するっていう仕事じゃなかったかい!?」
「で、でも、監視はデビットがして、妨害を楽しんでいたはず…」
「ヒューイットぉ、そんなもん、とっくの昔に飽きたぜ?
今、俺はこの『マンガ』って奴に夢中なんだ、邪魔しないでくれ」
「だ、そうだよ?アニー?」
「かー、デビットまでここでの生活に麻痺してる!
テリー!テリー坊は何しているんだい!?」
「うーん、この手ならどうです?ほお、そう返しますか…」
「あーもう、ああいうおもちゃが好きなんだから!!
なに、ドールさんと真剣に遊んでいるんだい!?」
「あ、アニー姐さん、今いいとこだから邪魔しないで」
「かああああああああ!どいつもこいつも!!
あいつらもあいつらだよ!!いつまで攻略にかかっているんだい!?」
「まあまあ、アニー。この『カフェラテ』でも飲んで落ち着きなよ?
甘めのがいいなら、『フラッペ』でも作ってあげようか?」
「アンタはいつまで、その『コーヒー』にハマっているんだい!?
ドールさんに作り方まで教わってさ!!」
「いや、このコーヒーという飲み物は実に深いんだよ。
まずは豆からなんだがだね…」
「いいよ、今はそんなウンチクはああああ!!」
こうして、アニーがキレた。
また日付感覚が薄れたころに今度はデビットがキレた。
「もう読む『マンガ』がねえ!暇だぞ、ヒューイット!!」
「今度は君かい、デビット?」
「アニーは…?壊れたように金版の記憶版見てやがる…
あいつの方が先にキレたんだよな…」
「いつからだったかなあ?
仕方ないって言って、記憶版をずっとずーっと見始めたのは?」
「んで、お前は何してんだよ、ヒューイット」
「僕かい?ドールさんに豆の挽き方を教わってね?
どうにかうまいコーヒーを淹れようと頑張っているんだ」
「妙なことにハマりやがって…
テリーは?」
「うーん、ドールさんならこういうとき、どういう手を打つんです?」
「ダメだ、あいつもドールさんと何か真剣に語り合ってやがる…」
「真面目なタイプの僕らは凝り性だから、いつまででも続けられるよ?
罰ゲームの彼らを監視でもしたらどうだい?」
「くそっ、あいつら、いつまでかかってやがる!?
最高階数は…
三十四階!?
マジかよ、この生活がまだずっと続くのか…」
こうして、僕らは大切な何かをどんどん失いながら、ここで過ごしていた。
二か月経ったらしい頃に、先輩が来て
「すまん、この企画没にするわ!」
と笑顔で言って、
「まさかクリアできんとわなぁ。じゃあな、お前ら。解散!」
と言い、僕らはお互いに真っ白になり、地上に戻って宿をとって休んだ。
宿のベッドはとても固かったよ…




