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【本編完結】異世界男の娘【連載版】  作者: 物部K
魔法学園入学~王都の危機

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領地の安定と王家の責務

あれから俺たちは精力的に働いた。

各領地の街と村に物資を十分に届け、村々にはご神木を植えて回った。

村の畑のために種も物資として送り、畑は耕し、早い作物は立派に実っていた。


そんな村の娯楽に一役買ったのが、上映会だ。

法律で二次上映会は禁止されているが、高額な使用料を払えば可能なのだ。

街から村に商人が派遣され、年に数回だが銅版の記憶版の上映会が行われる。


『黄金商会』から大型スクリーンを貸し出された。

それをポールのような棒に引っかけて、夜に上映するのだ。

村からするとかなりの大金だが、なるべく格安料金になるように調整している。

村人たちの息抜きになり、その晩は娯楽のない村ではとても盛り上がるらしい。




各領地の運営も安定化し、徐々に俺たちの手を離れていった。

物資もこれ以上は過剰だと、各領地をまとめる商人たちがストップをかけた。

たしかに過剰供給すると、今度はそれに頼り切ってしまうだろう。

ここらが引き時なのだろう。



そんな中、エンダーの領主館でたった一人の侍女として働いていたアマンダ。

彼女は領地の安定化を機に、館を去ることを決意した。

多くの者から涙を流され、引き留められるも…

彼女は広いお屋敷を一人で使うことに抵抗があったらしい。

今後はこじんまりとした家に、妖精たちと共に住みたいとのこと。



ここで少々おっせかいだと思ったのだが…

ストルンの領主館がうまく回っていないので手伝ってくれないか?

とアマンダに俺は声をかける。

彼女は悩んでいた。

だが、自身と同じ状況で頑張る者がいると知り、手伝うことを快諾してくれた。


俺は彼女をストルンのキルシュに紹介する。

キルシュは彼女を見た瞬間に固まり、ぎこちない自己紹介をし、館に案内した。

住処は館内の小さな部屋になると、残念そうに言うキルシュ。

だが、逆にアマンダはそれを喜んだ。

ここには同僚もいるのだ、それは嬉しいのだろう。


仕事になると、アマンダはスーパーメイドとして遺憾なく力を発揮した。

力仕事はキルシュたちに指示を出して、運んだものを綺麗に整理する。

書類仕事は商人たちと打ち合わせを行い、綺麗に結果をまとめる。

くるくると働きまわる彼女。

そんな彼女を見て、キルシュも気持ちを入れ替え、仕事に励んでいるようだ。

数年後には二人のいい話を聞きたいものだ。



妖精たちだが、彼女が一人ではないとわかると彼女になにも告げずに去った。

去ったと言っても、アカネの下に戻っただけだが…

アマンダに何かがあれば、あの妖精たちはアマンダの下に駆け付けるだろう。

彼女と繋がる絆が消えたわけじゃない。

今もあの妖精たちは彼女を心配しているのだから…




一時はどうなることかと思った過激派殲滅事件もようやく落ち着いた。

ここまでで一年が経過している。現在、学園は長期休暇を迎えている。

アレクとティナは十四歳、俺は十一歳、コルネリウスが六歳になった。

アレクたちはもうすぐ四年生。

あと二年を学園に通うことになるが、卒業資格は二人とももう取ってあるらしい。

残りの期間は、有望な少年少女をスカウトする期間として過ごすようだ。






久しぶりの王城。

今日はアレクとティナにお茶会に誘われている。

参加者にはコルネリウスの名もあった。

なんだか懐かしいな、と思いながらも王族のサロンに向かう。

格好は女装だ。

コルネリウスには女装だとは伝えたことがないからだ。




アレクとティナがすでにサロンで待っていた。

仲良くお茶を飲んでいるようだ。


俺はつい癖で、探知と探索の魔法を使う。

そして、微弱な反応を見つけ、盗聴器をヴォルクスに見せる。

視線をアレクに向け、険しい顔をしたアレクは頷く。

ヴォルクスは盗聴器を破壊して、そっと席を外した。


アレクは俺に顔を向け、防音の結界を張ってほしいと頼む。

俺は結界を張り、もう一度探知と探索の魔法を念入りに使う。

準備が出来たことをアレクに言ってから、席に着く。

アレクが重々しく口を開く。




「大臣のディードがどうにも怪しい動きを見せている。

何かに脅されている、と言ってもいい」


「そんな。あの大臣さんが…」


「ああ、ディーネからすると信じられないだろうな。

あの有能な彼が最近何かに振り回されている様子が伺えるんだ。注意してくれ」


「何があったのかと問いただすわけには参りませんわよね?」


「そうだな、聞いても答えてはくれないだろうな。

逆に、妙な動きをされてしまうかもしれない。注意しろ。


まあ、可能性としては、帝国だろうな。奴らのやりそうなやり口だ」


「重要な重役を脅し、国を徐々に不安定にさせ、そこを突く。

帝国のいやらしいやり口ですわ」


「お姉様…」


「今、私たちは本当に危険なのです。特にコルネリウスが。

あの子はまだ純粋な子供ですから。惑わされなければよいのですが…」




そんな中、コルネリウスが走ってやってくる。

今までの会話なんてなかったかのように、顔を笑顔に切り替える。

アレクだけは無表情だ。

コルネリウスは久々の再会が嬉しいのだろう。

行儀作法が頭から抜けているようだ。



「アレク兄様、ティナ姉様、ディーネ姉様!お久しぶりです!!」

「ええ、久しぶりですね。コルネリウス」

「コルネリウス、走ると危ないですわよ?」

「えへへっ、みんなに会えて嬉しくてつい…」




「コルネリウス、気をつけろ。お前は私の予備なのだから」


「お兄様!?その話はコルネリウスにはまだ早いですわ!!」


「ディーネ?お前にもこの年くらいには、同じことを告げただろう?」


「私とコルネリウスでは訳が違います!」


「兄様?姉様?何を、言っているの…?」




「コルネリウス、お前には失望したぞ。

周囲が褒め囃す魔法の訓練では力に振り回されて…

王族の責務からは逃げ出しているそうではないか?」


「コルネリウス?」


「俺は逃げ出してなどいません!休憩がしたいと言っているだけです!」


「それが逃げ出していると言っているのだ。

俺とディーネは文句は言っても、休んだことなどないぞ?」




「お前は自分の立ち位置が理解できているのか?」


「立ち位置?」


「お前は私にもしもがあった場合に、王になるのだ。その覚悟が出来ているか?」


「お、俺は…」


「周囲の声に惑わされずに、自分の考えを正しくしっかりと持ち、自身の有能さを見せつけ、頼れる部下を作ろうとしているか?」


「お兄様、厳し過ぎます!」


「何を言っている、ディーネ?

私もお前も、この年齢のときには出来ていたことだ。

コルネリウスにもできるはずだ」


「ですから、私を引き合いに出すのはおやめください!

私では参考にならないのですから!」


「…そうだな。お前では参考にできんな。

だが、私は出来ていた。そこは忘れるな」


「お兄様…」




「コルネリウス、私と力比べをするか?

お前が周囲に言われている言葉を、私が否定してやろう」


「…いいのですね、兄様」


「ふっ。力に振り回されているお前に、私をどうにかできると思っているのか?」


「いいでしょう!訓練場で俺の力を見せてやる!!」




どうしてこうなった。

俺たちは今、訓練場にいる。

ティナが審判役を務めるようだ。




「これは力比べです。お互いに命を奪う行為を禁止いたします。双方、準備を」

「いつでもいいぞ」

「俺だって!」

「では、開始!」



「くらえ!炎よ!すべての敵を飲み込み!溶かし尽くせ!グランドフレイム!!」




ダメだ、コルネリウス!

その程度では…

俺がそう思った瞬間、指を鳴らす動作だけで猛り狂う炎を消すアレク。




『パチン!』




「なっ!?どうして!!」

「その程度か?」

「くそっ!なら、これで!焔よ!大地を穿ち!敵を…がっ!!」

「無防備すぎるぞ。せめて、走り回れ」




アレク、お前…。本気で心を折りにいっているのか?

なぜ?どうして?




「お前は周囲に何と言われている?兄よりもできるようになるとでも?」

「くっ!」

「お前はそれを聞いて、努力をやめていないか?」

「そ、そんなことは!」

「考えることをやめていないか?」

「お、俺は…」

「父よりも、私よりも、優れた王になると言われて浮かれていないか?」

「…」

「愚か者めっ!」

「!?」




怒りを露わにしたアレクが、周囲に無数の氷の槍を無詠唱で作りあげる。

コルネリウスは自身を囲むように配置された氷の槍に怯えた。


コルネリウス…

話を聞いている限り、周囲に甘やかされ育ってしまっているコルネリウス。

俺でもそれはちょっとって思ってしまう言葉もあった。

だが、それでも…




「これが俺に今できる『力』だ!わかったか?!甘えを捨てろ!!」

「ひっ、ひぃぅっ!」



『パチン!』



「むっ!」


「お兄様、そこまでです」


「ディーネ」


「お兄様も努力はしたでしょう。

ですが、そこまでの力をつけることができたのは誰のおかげですか?」


「…」


「コルネリウス、立ちなさい」


「ひっ、ひっく…」


「立ちなさい!コルネリウス!」


「!?」


「あなたともっと話す時間があれば、教える時間があればできることです…

腐らずに前を向いて、ジッと見ていなさい」


「は、はい…」


「な、何をする気だ、ディーネ…」




アレクの顔が引くついている。兄弟喧嘩にも限度がある。

俺はちょっとだけ怒りを込めて、魔法を使う。

コルネリウスが腐らずに成長したら、できるであろう魔法を見せることにする。




「コルネリウス。

あなたにもいずれは同じことが出来るはずです。

だから、間違えないで、腐らずに、前を見なさいっ!」




俺は火球を複数作る。

ドーム状にアレクを囲み、完全に逃げ場をなくす。

これは生死を問う戦いではない、力比べだ。

だから、寸止めで魔法を放つ!




「くっ!?」

「アレクっ!?でぃ、ディーネ!そこまでよ!!」

「はい。ここまで、です。」

「…」




魔法はすべて寸止め。髪の毛の一本も燃やしていない。

ティナもホッと息を吐いている。


コルネリウスは膝立ちになりながらも、今の魔法を見てくれたようだ。

これで少しは自信をもって、前向きになってくれればいいのだが…

訓練場に強く風が吹く。



「兄様、姉様、すいませんでした…」

「わかればいい」

「コルネリウス、今度もっとお話ししましょうね?」

「…」



コルネリウスは俺の言葉に、返事は返さずに訓練場から走り去ってしまう。

大丈夫だろうか?心配だな…






Side コルネリウス


『あなた様の姉君は女装をした第二王子ですよ』

『彼の方は常識外れの力を持っているのに、王家の責務から逃げたのです』

『あなた様は間違えてはいけません。

父よりも、兄よりも素晴らしい王にならなければならないのです』



『なら、姉上は…

どうして俺に優しくしてくれるのだ。どうして民のために働いているのだ!』


『彼の方は、ただ好き勝手に動いているだけです。

周りの迷惑も考えずに…

あなた様は誰にも迷惑はかけない、そんな王になるのです』




「姉上、兄上。俺はどうしたらいいんだ…」



「姉上はなぜ、王家の責務から逃げたんだ」



「兄上はなぜ、そんな姉上を叱らない」



「なぜなんだ…」

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