領地運営に向けて
領地運営のために先に処理しないといけないことが多いな。
侍従たちに動いてもらおうか。
学園は休みがちになるだろうから、学園長との交渉をしてもらおうかな。
寮の荷物の整理もしておいてもらおう、しばらくは使わないだろうしな。
クラスメイトにも挨拶しておかないとな。
あいつに関しては、おっちゃんに預かってもらおうかね。
そのために手紙を書いておかなきゃなあ。
よし、まずはおっちゃんへの手紙を書こう。
「よし、手紙も持ったし、学園に行くか」
「いってらっしゃい」
「ああ、いってくる!すぐに戻ってこれるといいんだが…」
「大丈夫。こっちでも、動ける範囲で動いておくから!」
「すまないな。任せた!」
「あ、まって!」
「ん?…」
「へへっ、やる気チャージ!いってらっしゃい!!」
「ああ、いってくる!」
最近は学園卒業まであと何年って、わかってから嬉しいのか。
それとも、あの日からかわからないが、スキンシップが増えたなあ。
まあ、嫌なわけじゃなく、嬉しいからいいんだけどね。
さあ、この扉を開けたら学園だ。諸々と処理してしまおう。
「ナンシー、ヴォルクス。学園長との交渉は任せたぞ」
「はい!任せてくださいっ!」
「なんか、やる気一杯というか、元気だな?
何か嬉しいことでもあったか?」
「…」
ん?どうしてそこで赤くなる。
咳払いが聞こえる。ヴォルクスも顔が赤い。
二人して風邪か?
って、そんなわけがない。この間の攫われた際に、何かあったな?気になる。
「んんっ!では、ディーノ様。我々は学園長の下に行こうと思います。
ナンシー?行きますよ」
「あ…、はい!」
「ああ、そういえば…
ディーノ様、クラスメイトの方々が随分と心配されていましたよ?
元気な顔を見せてあげるとよいかと思います。
学園長との交渉が終わり次第、アカネ様と合流しようと思います。
諸々の手続きのお手伝いに回ります。ナンシーはこちらで待機させておきますね?
それでは、我々は行きますので、失礼します」
「ああ、すまないな。頼んだ。
ナンシーは待機している間に、ここで使わない荷物をまとめておいてくれ」
「はい、わかりました。失礼いたします」
ナンシーは置いていかれることに不満そうだったが、すぐに表情を戻していた。
ナンシーには荷物をまとめてもらわないといけない。
しばらくは、ここで生活しないからな。
俺はヴォルクスの残した言葉通りに、クラスメイトに会いに行くことにする。
気分的には、久々の教室だな。
俺は自身のクラスに向かう。ちょうど朝の連絡事項が伝え終わった頃だろう。
忙しくなることを伝えて、アカネの下にさっさと戻ろう。
「ディーノ様!?ご無事だったのですね!!」
「ディーノさん!?よかった、心配で心配で…」
「ああ、すまない。みんな。心配かけてしまって」
「ディーノ、すまない。あのとき、助けられなくて…」
「グリドール、いいんだ。わかっていたことだから」
「わかっていたのに、わざと毒を受けたのか!?」
「ああ、助けてもらえることもわかっていたからな」
「無茶をするんじゃないよ、まったく…」
「お前はお前で今、大変なんじゃないか?」
「大変だが、親父の自業自得だ。それに、俺にも責任はある」
「あまり自分を責めるなよ?そのために、お前にこれを渡すんだからさ」
「これは?手紙?」
「ああ、魔道具屋のゾロのおっちゃんに手渡してくれ。
色々と面倒を見てくれるはずだ。俺からの贈り物だ」
「贈り物って、いなくなるみたいな物言いだな」
「実際、しばらくは会えなくなる。複数の領地の運営を任されたからな」
「ええ!?じゃあ、ディーノさんにしばらく会えないの?」
「ディーノ様、我々にも何か手伝えることはないでしょうか?」
「うーん、難しいな。
人手は欲しいが、君たちに頼むわけにはいかない」
「そんなあ…」
「ですが、ディーノ様。
我々に手伝えることがあれば、いつでも頼ってください。
我々はあなたの手足になることを望んでいます」
「ふふっ、ありがとう。気持ちだけでも受け取っておくよ。
じゃあ、俺は行くよ。
みんなも頑張れよ、またな!!」
「ディーノ様…」
「我々にできることは、ないのか…」
「ディーノ、君は…」
学園に残された者たちは何もできないことを悔やむ。
彼のために何かできないかと、必死に考えることになるのだった。
俺は自室に戻り、ナンシーと合流してから、アカネの下に戻った。
「アカネ!ただいま!!状況は?」
「おかえり、カオル。
ヴォルクスさんがさっき来て、学園を休学できるようにしたって言ってたよ?
あと領民に必要だろう物資を、ドールと話しながらリストにまとめていたよ」
「そうか。物資は魔力で生産することになるな。
じゃあ、まずは冒険者を各地に派遣するために集めないとな。
『黄金商会』として動くぞ」
「わかった。
でも、誰でもいいってわけじゃないよね?
指名依頼にするの?」
「ああ、『彼ら』にお願いするつもりだ。面接の準備も進めておいてくれ」
「わかったわ」
Side 冒険者
「今度は指名依頼か。不安だぜ…」
「大丈夫よ、リーダー。今回は依頼内容もしっかりしていたし」
「そうだな、領地の治安の安定化が目的らしい」
「普通の依頼」
「でも、一度面接するから、集まってくれって。また騙されるんじゃないか?」
「依頼内容的に、合同パーティで動いてくれ、ってことなのかしらね?」
「そう考えるのが妥当だろう」
「人手が欲しい依頼?」
俺たちは黄金の爪と呼ばれるCランクの冒険者パーティだ。
今回は緊急の指名依頼を、あの『黄金商会』から出されたのだ。
一度集まってほしいとのことで、面接に使われた家屋に向かっているところだ。
ここまで来たんだと腹をくくって、扉を開けて地下へと下っていく。
前回と違って随分と広い部屋だな…
すでに待機している冒険者たちを確認する。
全員あの『黄金商会』の企画の餌食になったパーティじゃねえか!?
やっぱ、騙されたか!?
そう思っていると、正面の大きな額縁から声が聞こえる。
以前と違って、音声がはっきり聞こえる。若い女性の声だ。
「こんにちは、集まってくれてありがとうございます」
「おいおい。今度は何をやらせる気だ?もうあんなことはこりごりだぞ」
「そうだぜ?まともそうな依頼だから、今回は集まったんだ。
さすがにふざけた依頼だったら帰るぞ?」
「今回集まってもらったのは、依頼通りのことをお願いするためです」
「ふむ。話を聞こう」
「現在フォルト、ドーン、ストルン、エンダーの四つの領地で領主が不在です。
そのため、治安が悪化しています」
「ほお?だが、それはもはや国の案件なのでは?」
「はい、国からの依頼と思ってもらっても大丈夫です」
「それで?
この少ないパーティで向かって、現地の治安の安定に協力してくれってか?
いくらなんでも人数が少なすぎだろ…」
「人手が足りないのは承知しています。
そこで、あなた方、冒険者の縁のある方を連れて、各地に向かってほしいのです」
「俺たちの伝手を使うってことか。報酬が必要だぞ?」
「依頼はすでに出しています。ですが、表には出していません。
今回の依頼は信頼のできる方にお願いしたいのです」
「なるほどね?
変な輩にやらせるわけにはいかない依頼だ。
どれだけ人手が欲しいんだ?」
「出来る限りです。
あなた方が本当に信頼できると思う方にお願いします。
民のためなのです」
「民のため、ねえ。
アンタはなぜ、この依頼を出したんだ?
何か思惑が違うように思える」
「その四つの領地の領主は、第三王子の過激派だったのです。
第二王子を亡き者にしようと、罠を張り、毒を使ってまで…」
「おいおい。俺たちが聞いていい話じゃねえぞ」
「私の大事な人が死にかけました。
そして、私は怒りのままに過激派のすべての貴族に制裁を与えました」
「…」
「残ったのは、命が助かった私の大事な人。
そして、過激派の領地の民です。
過激派の領主は重税で民のことを何一つ考えていませんでした」
「…」
「第二王子は重税で苦しむ四つの領地すべてを救うと決めました。
以前の領主によって歪められた統治を、正しく運営するために動くと」
「…」
「私はそれを手助けするために動いています。
偽善などと呼ばれようとも、『私たち』は救うのです。
助けられる人たちを、助けない手はないでしょう?」
「…いいだろう、アンタのつたない説明でも、心意気は買ったぜ?」
「俺たちの伝手を使ってくれ。報酬はもらうがな!」
「最後の一言がなければかっこいいのにねえ」
「みなさん。ありがとうございます…」
その瞬間、画面に映ったのは凛々しい顔をした少女だった。
彼女が『黄金商会』の商会主なのだろう。
こんな少女が「民のため」と言って動くんだ。
俺たちがうだうだ言って、動かないのはカッコ悪すぎだろ…
「俺たちは冒険者どもをどこに集めればいい?
アンタに会わせたほうがいいのだろうか?」
「いえ、会う必要はありませんが、集まるのはここです。
ここにいるパーティの代表方にどこに向かうかをまず決めてもらいます」
「じゃあ、俺たちはフォルトだ」
「なら、ドーンに向かおう」
「ストルンだね」
「残りはエンダーだな」
「では、あなた方を代表者パーティとして、冒険者を集めてもらいます。
集まり次第、現地に扉を使って移動してもらいます」
「扉?」
「まさか、今までの扉って…」
「ここからは早さが求められます。
遅くなればなるほど、現地では暴動が起こってしまいます。
冒険者を集めてここに集合です。
できる限りの支援はするので急いでください。
私からは以上です」
画面は暗くなる。
代わりにダモナーやドールたちが出てくる。
「急ぐんダモナー!」
「必要な物資があれば承りマス。迅速な行動をお願いしマス」
本当に物資などは支援してくれるようだ。
なら、荷物は最小限でいい。
俺は頭の中で誰を誘うかを考えながら指示を出す。
「ジュリー、ガンツ!
お前らはドールに必要物資をお願いしろ!
向こうで必要なものとか使えるものをできる限り考えろ!
ドールと相談しながらでもいい、領民のための物資も含めて用意しろ!」
「わかったわ!」
「わかった!領民の物資も含めてだな!」
「デン、お前は宿を引き払ってこい!荷物もここに運び込め!」
「わかった」
「任せたぞ!
俺はギルドに行って、出来る限りの最高のメンバーを集めてくる!!」
俺が指示を出しているのを聞いて、ほかのパーティも動き始めた。
俺はギルドへ向けて走り出す。
今回の依頼は長くなりそうだと思いながら階段を急いでのぼる。




