見出す者たちと見守る者
「輪になって踊ろ~♪」
何しているのかって?魔力訓練だけど?
あの魔法理論の講義後、クラスの女生徒たち全員と昼食を外で食べている。
そのために、アカネに出来合いのサンドイッチを魔力で作ってもらった。
女生徒たちは先ほどの件で不安そうにしていた。
だが、サンドイッチを食べて元気を取り戻す。
そして、女生徒たちはどうやって、あの威力を超えるのかと尋ねてきた。
俺はすべてを教えずに、みんなに輪になって手をつないでもらう。
その上で、歌を歌えば超えられるよと誤魔化した。
女生徒たちはみんなよくわかっていない顔をしていた。
期限まで、昼食には全員必ず集まることを約束させた。
体調不良の場合は、誰かに伝えることも約束させる。
この辺りは女性だからか、連帯感がある。
念のため、みんなの最大火力も確認済みだ。
ジェダー講師の火力程度なら簡単に超えられそうで、少し安心した。
「では、今日から危険なことがない限り、魔法の使用を禁止します」
「え?どういうことですの?」
「既存の魔法のことを『忘れて』もらいたいのです。
私の魔法は少々特殊ですからね」
「わかりました!それで単位がもらえるなら頑張ります!」
「ええ、私の退学もかかっているのです。頑張ってくださいね」
「うっ!そ、それで、まずはどうすれば?時間は短いですよね?」
そして、冒頭に戻る。
曲にそって、みんなで輪になって、魔力を俺が送り込む。
体調に不備はないか?痛みはないか?
などとも確認しているが、問題はないようだ。
なので、徐々に送る魔力量を増やして、魔力を送っている。
みんなは俺が魔力を送っていることには、まだ気づいていない。
それよりも地球産の曲に気を取られている。
こちらの言葉に直して歌っているからか。
この曲に秘密があると思って、口ずさむ子もいる。
俺はそんな子を微笑ましく思いながら、魔力を送り続ける。
休憩をはさみながら、夕食の時間までみっちりと魔力訓練を行う。
「そろそろ夕食ですわね?また明日の昼食に集まりましょうか」
「ディーネ様!私たちは夕食後にも集まれますわ!
この輪になることに『意味』があるならば、いくらでも集まります!」
「ですが、よいのですか?私は仮にも男性ですよ?
集まれる場所がないと思うのですが?」
「申請すれば、会議室が使えますわ!
それに、私たちはまだこの集まりの『意味』を理解していません!
この集まりに『意味』があるはずなのです!それを知りたいのです!」
「へえ、これに『意味』があるとよくわかりましたね?
たしかに秘密はありますよ。
歌など歌って誤魔化しはしましたが」
「やはり。『答え』を見出せば、個人でも出来ると思うのです。
私たちはディーネ様の理論を学びたいのです!」
俺はぞくっとした。彼女たちは本物だと思った。
あの脳筋魔法理論を脳死で提唱する者とは違う。
自分で考え、挑み、理論を形にする。
彼女たちこそ、俺の弟子になる資格がある者だと。
「いいでしょう。
私もすべてを一人でするのは、面倒だと思っていたのです。
あなた方に課題を出します。
一週間以内にこの集まりの『意味』を見出しなさい。
『答え』を見出せた者から、この集まりから抜けて結構。
ですが、『訓練』は続けなさい。私の退学がかかっているのですから」
「なるほど。
『答え』を見出せば、多少の自由時間を確保できると。
『訓練』と言いましたね?そこにヒントがあると見ます!」
「ふふっ、頑張りなさい雛鳥たち。あなた達が飛び立つのを待っているわ」
「まずは夕食です!食べ終わった者から第三会議室に集合ですわ!」
「第三会議室ですわね?わかりました。では、のちほど。解散!」
『はい!』
俺はゆっくりと夕食を食べるつもりだった。
アカネに事情を話し、いつもよりも手軽なものをササっと食べた。
そして、第三会議室に移動した。
ほとんどの女生徒が集まっており、『答え』について意見交換している。
この分だと気付くのに三日もあれば十分だろうか。
「では、始めましょうか?
多少遅れても問題ない予定でやっていますから、安心してください。
余裕をもってジェダー講師の火力を大きく超えるつもりですから」
「少し超えるではなく、大きく超えるつもりだったのですか!?」
「ええ。それくらい『これ』には効果があるのですよ?
真剣に『答え』を探してみなさい」
俺たちは再び輪になってから、俺が魔力を送る。
今度は歌を歌うなんてことはしない。
遅れてきた者も輪に加わっていく。
俺は徐々に魔力を増やして送る。
その際に、痛くないか?気持ち悪くなってないか?と、必ず確認する。
俺は遊び心で魔力を送るときにリズムをつけたり、強弱をつけたりしてみた。
そのたびに
「んん?」「なに、今の?」
と疑問に思う女生徒が出る。
「どうかしましたか?」
なんて、わざとらしく声をかける。
違和感に気付いた女生徒が
「遊んでいますわね?」
と頬を膨らませる。
俺は彼女たちを応援する。
「ヒントですわ?頑張ってくださいませ」
と、誤魔化すが。
結局、一日目では『答え』を出せなかったようだ。
悔しそうな彼女たちに、寝る前の挨拶をして自室に向かう。
明日には違和感の正体を掴める者が出そうだなと考える。
翌日、アカネとポチにちょっとしたお願いをしておいた。
念のためだと言っておいたが、そこまでする相手なのか?と疑問をこぼす。
あのおばさんは、気に入らない者にはとことん嫌がらせをするタイプだ。
だから、俺は念のための保険をかける。
別に、何もなければいいのだ。何もなければな…
魔法学園の講義は毎日あるわけではない。講師の人数のせいで休みが多いのだ。
他の学年も見ないとだからね、仕方ないよね。
その分、俺たちは魔力訓練に集中できるわけだが。
三日目になった。今日は講義が休みのため、朝から訓練している。
いつも通り輪になってから、俺が魔力を送る。
何かに気付いた女生徒が、自分もと魔力を送ってきた。
俺はニヤリと笑った。
そして、面白がって魔力にリズムをつけたり、強弱をつけて送ってみる。
完全に理解した女生徒は、輪から外れると言いだした。
自身の中で魔力を巡らせている姿を俺は見る。
俺は彼女に伝える。
「あなたは合格ですわ」
昼食後に、魔法を禁止させた理由を話すことも伝える。
再び輪になって俺は魔力を送る。みんなが真剣な顔になる。
一人合格者が出れば焦るのだろう。
だから、俺はわかるようでわからない注意をする。
「焦ってはなりません。見えないものを見落としますわよ」
と、さらにヒントを出す。
魔力自体は感覚的なものなのだ。
俺は再びリズムをつけたり、強弱をつけたりする。
昼食までに答えを出せたのは、七人中の三人だ。
彼女たちは魔力的な感覚に優れているのだろう。
試しにと、微力な魔力を置いた場所を指差した。
あそこに『何かあるか』『感じるか』と質問した。
三人とも、『何かある』と答えた。
『答え』を見出せてない者で、先に輪になっていてくれと伝えた。
昼食までに『答え』を出した者たちに、魔法を禁止させた理由を説明する。
「魔法を禁止させた理由について、『答え』を出せた者はいますか?」
「私は『既存の魔法を忘れてほしい』という意味を考えていました」
「私も同じことを考えていました」
「どうして『忘れる』のか、そして『何を忘れる』というのかですわね」
「よく自分たちでそこまで考えましたわね!
あなた方が頑張れば、学者の道もありますが…
近衛の道もありますわよ?私のお墨付きで!」
「え?」
「そこまで、ですか?」
「信じられません」
「アレクお兄様やティナお姉さまの世代になりますけどね。
それとまだこの話はしていません。
過度な期待はしないでくださいませ?」
『はあ、安心しました』
三人は揃って安堵していた。それがおかしくて笑ってしまう。
そして、俺は自身の魔法を見せる。
「それでは私の魔法を簡単にですが、見せますわね」
少し離れた場所に、『無詠唱』で土の的を作り出した。
その後に『無詠唱』の風の刃で切り刻んで元の土くれに戻す。
「今のを見てわかりましたか?」
「『無詠唱』の魔法…」
「それが私たちにできると言うのですか?」
「だから、『忘れろ』ですか…」
「ふふっ、今のあなた方は本当に理解が早い。その通りですよ?」
「たしかに、今の私たちでは既存の魔法の『使い方』をしてしまうでしょう」
「それを『忘れる』ための期間が必要なのですね」
「少しでも『忘れて』しまえば、自然と『無詠唱』の方が身につく…」
「私からは以上ですわ。
大事な話をするときは、先ほどの魔力の探知と探索を行いなさい。
身を守る為にそちらも鍛えなさい」
『はっ!』
三人はそのまま訓練すると言うので、私は三人の下から離れた。
残りの四人の下に戻ると、ニコニコとしている彼女たちがいた。
「ディーネさん、私たちも『答え』がわかりました!」
「『魔力』を輪になって送っていたのですね」
「もしかしてですが、魔力を多く送ることで効果があがりますか?」
「私は素早く送ることで効果があがると思っているのですが…
どちらも効果がありそうなのです」
私はその場でため息を吐いてしまい、彼女たちを不安にさせてしまう。
「もう少し早く気づいてくれれば、二度手間を避けれたのですが…」
まあ、いいかと思い直すことにした。
「彼女たちも呼びましょう。
今の質問も彼女たちに聞かせないといけません。
二度手間はいやですからね」
『はい!』
喜んでいる彼女たち。
これでジェダー講師の最大火力を超えるなど…
鼻で笑ってしまえるほどのヌルゲーだ。
たった三日でここまでの成果を出せた彼女たちだ。
大事に見守り、育てようと俺は誓った。




