授業初日~体力測定
年越し前までに間に合うかな~?って書いてたけど、間に合いませんでしたね。
今年もよろしくお願いします。
翌日、体力測定に使うグラウンドが空くまで教室で待機を命じられる。
今日は体力測定だということで、ナンシーにお願いして男装にしてもらった。
動きやすい格好というのも特に指定はなかった。
なので、アカネに頼んでジャージと運動靴を作ってもらった。
準備は完璧、ダン講師を泣かせに行く気満々である。
待機中の教室では、気怠い空気を感じる中。
一人やる気満々の俺が異質に映ったのか、女生徒が話しかけてくる。
「でぃ、ディーノ様?どうしてそんなにやる気いっぱいなんですか?」
「ん?敬語はあまり使わなくてもいいよ?
状況に応じて、使い分けてくれればいいから」
「あ、はい。いや、違う。うん」
「それで、どうしてやる気いっぱいなのかだったね?
ちょっと、ダン講師を泣かそうかなって思ってさ。ははっ」
「ダン先生を泣かす、ですか?なんでそんなことを…?」
「ちょっと、悪戯心が湧いたのと主導権を握っておこうかなって」
「悪戯心が湧いたって、面白いね。ディーノくんってば、ふふっ」
「それに秘密兵器の動きやすい格好も用意してきたからね。
勝利は確実だよ、ふふふっ。何してもらおっかな~、あははっ」
「秘密兵器ってなんだい?ディーノ君」
「おっ、グリドール。興味があるかい?」
「とても興味があるね。
君の趣味はモノづくりとも聞いているから、共通項があって嬉しいよ」
「ははっ。とは言ってもただの服と靴だよ。
ただ素材とかが特殊なだけ。本当にただ動きやすい格好ってだけだよ」
「へえ、あとで確認させてくれるんだろ?」
「ああ、あとで着替えの時に確認してくれて構わない。
俺がズルしたって、言われたくないしな」
「俺たちも確認してもいいのか?それだけ豪語するんだ。
ズルなしで、あの先生が泣くところを見たい」
「わ、私たちも素材の確認だから、いいよね?」
「ああ、もちろん!」
こんな会話を教室でしていたせいか。
みんな、憂鬱そうな雰囲気から面白がっている空気になる。
遠くの席では不満そうにこちらを睨む奴がいたが、俺は無視した。
しばらくして、ダン講師がグラウンドが空いたことを知らせてくれた。
着替えてこいと大声で教室にいる生徒に声をかける。
ダン講師は生徒たちが面白がっている空気を感じて、不思議そうな顔をする。
毎年嫌そうな雰囲気を出す教室が、今年は明るい。
今年は何かあるなと感じたが、違和感程度にしか感じられなかった。
グラウンドに出た俺たち。
俺の服装は芋っぽいジャージ姿と運動靴だ。
なんだあれは?と笑うのは、バリトーだけだ。
ほかの生徒は服や靴を触らせてもらい、納得していた。
特に靴は全く違うと騒ぎになるほどだ。
そして、中には上映会の冒険者たちが使っていたものだと気付く者もいた。
グラウンドにダン講師が現れ、体力測定の内容が説明される。
とにかく走り続ける、それだけだ。全員が脱落した時点で、測定終了とのこと。
生徒たちのニヤニヤした顔に、ダン講師は勘違いし嬉しそうにしていた。
今年の生徒はひと味違うぞと。
「よーし、じゃあ、始めるぞ!ゆっくりでいいからな?
体力を計るってことを意識しろよ~?」
「さて、いっちょやりますか!」
そして、始まる体力測定。最初は普通に走る。
しばらくして、女生徒たちが脱落しだす。
女生徒が全員脱落して、少しして男子生徒も脱落し始める。
仕掛けるならここくらいかなと思い、俺はダン講師と並走する。
そして、身体強化の魔法のギアを少しずつ上げていく。
ダン講師が俺に気付き、笑顔を向ける。
だが、俺はその笑顔を凍らせるために並走をし始めたのだ。
「ダン講師?ハンデをあげますね?五周でどうですか?」
「は?ハンデ?五周?どういう意味だ?」
俺はそれには答えずに、速度を上げて先を走る。
「お、おい!これは体力測定だぞ!?」
ダン講師の慌てる声が聞こえるが無視して走る。
そして、ダン講師を追い抜いてから、追いつく。
「まず、一周ですね?」
「お、おう?」
「では、二周目いきます!」
「二周目ですね」
「お、おい、無理しなくていいんだぞ?」
「三周目っと」
「何がしたいんだよ…?」
「四周目」
「…」
「五周目っと。ダン講師、俺以外の生徒は脱落したようですよ?」
「そ、そうだな。も、もう終わりにするか?」
「何言っているんですか?俺はまだ余裕ですよ?先生は疲れちゃいましたか?」
「馬鹿を言うな、この程度で根をあげるわけないだろっ!」
「そりゃそうだ、俺との差は五周。いいハンデですね?」
「!?」
ここでさっき言った俺の言葉の意図に気付くダン講師。
俺はニヤニヤと笑い、ダン講師と並走する。
「お前、もしかして計画的にやっているのか?」
「いいえ?ちょっとクラスのみんなと仲良くなるために…
ダン講師に犠牲になってもらおうかなってだけですよ」
「犠牲、だと?」
「ええ、先生が泣いて許しを請う姿を生徒たちの前で晒すだけです」
「この野郎、舐めやがって。王族と現場で働く俺の体力を舐めるなよ?」
「はい、そのためのハンデの五周ですからね。頑張ってください」
「ちっ、舐めやがって!」
ここで並走していたダン講師の速度が上がる。
俺も速度をあげて並走する。
驚いた顔をするダン講師。
しばらく走り続けると、少しずつ余裕がなくなってきているのがわかる。
だが、このままだと時間がかかりすぎる。
とある提案をダン講師にする。
「ダン講師?このままでは時間がかかりすぎます。
なので、この笛を鳴らしたら全力疾走しましょう。
次に鳴らしたらペースを落とす。
それを繰り返すだけです。ねっ、簡単でしょ?」
「お、お前。マジか…」
「じゃあ、いきますよ?」
『ぴっ!』
笛の音に合わせて、全力疾走を始める。
ダン講師の足は、全力疾走の割には遅い。
仕方ないので、追いついてから笛の音を鳴らす。
『ぴっ!』
「ダン講師?これで六周目ですね?」
「お前…」
ニヤニヤとした顔を向ける俺。
俺が生徒たちに視線を向けて、ダン講師の視線を誘導する。
生徒たち全員がニヤニヤしているのを見せて、ダン講師を絶望させる。
「お前は鬼か何かか?」
「いいえ?ごく普通の王族の生徒ですよ?」
「こんな生徒が普通とかおかしいだろ」
そして、再び笛の音を鳴らす。しばらくそれを繰り返す。
生徒たちすら青い顔をし始めるが、俺は気づかない。
「ダン講師、十周もハンデがありますけど、意外と粘りますね~?」
「誰が、泣いて、許しを請うもんか…」
「じゃあ、次の笛鳴らしたら、倒れるまでお互いに全力疾走です。
あんまりに遅かったら、ダン講師の尻を叩きますからね?」
「は?マジかよ…」
俺は容赦なく、笛を鳴らす。
『ぴっ!』
全力疾走する俺とダン講師。
ダン講師はやはり遅い。
十一周目になり、ダン講師の尻を叩きながら笛を鳴らす。
『ぴっぴっ!ぴっぴっ!』
俺は執拗に追い回すように走り続けながら、笛の音とともに尻を叩く。
もうちょっと持つかなって思ったところで、ダン講師が倒れる。
その顔は泣いている。
俺はその顔を見て、満足そうにニンマリと笑う。
「あーはっはっは!」
あー、走ったから暑いな。ジャージの上を脱ぐ。
汗もさすがにびっしょりとかいているな。
タオル、タオルっと。振り返るとナンシーがタオルを持っていた。
「ありがとう。ナンシー?」
「ディーノ様?ここまでする必要があったのですか?全員ドン引きですよ?」
「え?そんなはずは…」
タオルで汗を拭きながら、ほかの生徒を振り返る。
青い顔でみんなが震えて俺を見る。
あー、やりすぎちゃったかな?てへぺろ!




