体感訓練機の新型に向けて
モノづくりってワクワクしますよね、こうやって小説を書いていてもワクワクします。
創作が好きなんでしょうね、きっと。
新年を迎え、アレクが十歳、私が七歳、コルネリウスが二歳となる。
コルネリウスは二歳と言っても、まだ一歳と少しという年齢だ。
もうじき単語をしゃべるのではないだろうか?
しゃべれるようになったら、魔力訓練のことを伝えてあげようと思う。
アレクとティナは少し早いが、寮の準備や試験もあるため、魔法学園に出発した。
二人がいなくなったせいか、城内が少し寂しい雰囲気を感じる。
あの二人といる時間がここ最近多かったもんな。そら、そう感じるよな。
部屋に戻り、今日の予定を確認して、雑務を処理する。
雑務も終わり、まったりとした雰囲気でお茶を飲む。
これで緑茶を飲んでいたら、完全に爺さんだな。
なんて考えていると、部屋がノックされる。
誰だろうと思いながら、ナンシーが訪問者を教えてくれる。
「第三魔術師支部の面々と以前までは魔道具屋のゾロでしたが、現在は特別顧問のゾロ様という方が、体感訓練機の件でお嬢様に会いに来たようです」
「あら、以前からお母様が頼んでいた部署ですわね。
ゾロのおじさまは出世しましたわね!ぜひ、お会いましょう。
体感訓練機は少々放置していたので、現在の状況を聞いておきたいのです」
「かしこまりました」
うーん、正直色々あって忘れていたよ。
そろそろ新しい録音機も出来ているだろう。
バージョンアップが必要かなって思ってはいたんだよ?
「ディーネ様、お久しぶりでございます」
「ゾロのおじさま、お久しぶりですわ」
「ディーネ様、お初にお目にかかります。
第三魔術師支部をまとめるディオでございます」
「ディオ、ね。覚えたわ。今日はどういう件で来たのかしら?」
「あー、ディーネお嬢様。しばらく見ないうちに随分と淑女になっちまったな」
「あら、おじさま失礼ですわ?私は以前から淑女でしたわよ。ふふっ」
「そいつは失礼した。実は体感訓練機の新型に行き詰っているんだ。
そのせいで特別顧問なんて位をもらっちまって、城に呼ばれているんだ」
「なるほど、録音機の方はどうですの?」
「録音機はすでに改良が終わっています。
より美麗な音楽や音声が流れ、記録容量も増えています」
「録音機の収録をまたしないといけませんわね。
音は複製すると劣化するでしょう?」
「そうですね、劣化します。というよりも、最新機が優秀過ぎるのです。
今まで綺麗だと思っていた音が、随分とひどいものに聞こえます」
「そうですか。
体感訓練機は何か資料を用意して対応してもらうとして…
録音機の方は急ぎ、収録した方がいいかしら?
それも出来れば新型の体感訓練機に合わせて。
前回は声優の募集をして、面接と収録を一度にしていましたが…
今回は少しは余裕があるかしらね」
「では、支部までご足労願えますか?
実際に見てもらわないと分からない点もあるでしょうから」
「いいわ、いきましょう。今日は予定は空いてるわよね?」
「はい、お嬢様。今日の予定はもうありません」
「では、いきましょうか?」
「はっ!」
護衛だけを引き連れ、第三魔術師支部に向かう。
ナンシーが行くとお掃除させてください。
って言うタイプの部屋かもしれないので置いてきたのだ。
まあ、それ以外の仕事もあるから、無理に連れ歩く必要はない。
ホントは連れ歩くべきなのだが、私についてくれる侍従が少ないのだ。
生い立ちが特殊なせいだろうとは思っているが、こちらも対応すべきだろう。
そんなことをつらつらと考えていると、到着したようだ。
どんなところだろう?と不安と期待が入り混じる。
「こちらです、お嬢様」
「あら、意外と綺麗」
「まあ、そういうイメージを持たれているよなあ」
もっとごちゃごちゃしているかと思ったが、意外にも整理整頓されている。
あれが行き詰っているという新型の試作機かな?
「こちらが試作機です。
ですが、パッと見で何が変わったのか?
と印象を持たれてしまうというところで悩んでいます」
「やはり購入者には一目で違うと思わせないと…
今のままでいいのではないか?って、思われちまうんだ」
「なるほど…
現行の分厚いカーテンで覆うっていうのをやめたいですわね」
「だが、今のとこは必須なんだ。
暗くしないと、画面が見えないっていうのが問題なんだ」
「…そうですわね。とある方に、少し協力してもらいましょう。
ただし、あなた方が再現できるとは思えないほどの先の技術です」
「そ、そんなものがあるんですか!?」
「ええ、それを参考資料として扱います。
あなた方がどこまで、それに近づけるかが課題です」
「わかりました。我々の総力をあげて近づけてみせましょう」
「では、呼びますね。
アカネ様、現在私がいる部屋に来ていただけますか?」
「呼ぶ?」
数分待つと、アカネがノックして部屋にやってきた。
直接入ってこないところを見るに、『扉』を見せたくないのだろう。
俺はアカネにゲームセンターにあったとある筐体機を置いてくれないかと頼む。
「いいわよ、それくらいなら。今は魔力も潤沢だからね。どこに置く?」
「体感訓練機の資料を置きたいのですが、どこに置きましょう?」
「では、こちらの隅にお願いします」
「じゃあ、はい!」
『おお!!』
とある筐体機、中身は俺がハマっていたガンシューティングだ。
このダンジョンコア製の体感型のガンシューティング、実は電力で動いていない。
どういう力が働いているのかわからないが、魔力なのではないかとみている。
そういう点でも彼らの刺激になるだろう。
「アカネ様、ついでに不壊のエンチャントもお願いします。
分解などされて壊されても困りますし」
「うーん、呼び名と言葉遣いに慣れない。はいはい、了解っと」
一連の流れを見ていた彼らがポカンとしている。
再起動してもらうために、手を叩く。
「はっ!あまりの常識外の行動に頭が停止していました」
「とりあえず、不壊のエンチャントをかけたから分解はできないわ。
どうせ中を見ても理解できないでしょうから、いいですね?」
「たしかに、これは現状の技術を置き去りにして、はるか先にありますね」
「嬢ちゃん、これはどのような力で動いとるんだ?」
「わからないわ。
呼び出した時点で、魔力で動くようになっているとしかわからないわ。
本来は電力というもので動いているの」
「ふむ。この形を最終形として目指すか」
「とりあえず、遊んでみてちょうだい。何か掴めるかもしれないわ。
あ、言語はこちらの物ではないから解説するわね」
「言語が違う?なんてワクワクするんだ!」
俺は遊び方を一通り説明する。
夢中で遊ぶ職員。
どうなっているのかと調べようとする職員。
何やら思案する職員、と行動が全員バラバラだ。
俺はゾロのおっちゃんの下に向かい、感想を聞く。
「おじさま、どう?参考になったかしら?」
「ああ。初期の体感訓練機はこういうのを目指していたんだなってのは理解した。
たしかにあの頃の俺では、これは無理だっただろう」
「まあね。これはいきすぎた技術だもの。扱いには注意してね?」
「そうだな。まずいと思ったら、ひっそりと回収していってくれ」
「だ、そうよ。アカネ様」
「うん、わかったわ」
「だが、可能性の塊だな、こいつは。
現時点で見る限り、まったくの系統違いの力で動く。それを魔力で再現する。
とても楽しいじゃないか」
「ふふっ、おじさまったら、子供みたい」
「モノづくりする奴で、これを見てワクワクしない奴はいないじゃろうて」
「それで?
実際のところ、どこまで再現できそうなのかしら?」
「今は売れるものとして…
現行機との違いを一目でわかる、あの光る画面に挑戦しようと思う。
それ以上は最初から仕様書などを作り直しだな」
「そう、まずは光る画面ね?
触ればわかると思うけど、ガラスの板に映しているのよね。
板に光を当てて、それを板の上に維持する。
言っていることは簡単に聞こえるけど、とても難しい技術よ。
魔法の力に期待しているわ」
「ああ。それと外部に漏れても問題のない範囲の仕様書を送ってね?
新しい録音機とそれを使った今までと違うゲーム内容を考えてみるわ」
「ふう、光る板の次は内容か。しばらくは光る板にかかるんじゃぞ?」
「期待しているわ、おじさま。頑張ってね」
「まったく、やるだけやってみるわい」
俺は第三魔術師支部の部屋を出て、自室に帰る。
護衛たちが残念そうな顔をしている。
もしかして、遊びたかったの?残念、また今度ね。




