年末特別上映会
早く眼治らないかなあ?見づらくて、1話書くだけで疲れ切っちゃう。
書いては寝て、書いては寝てを繰り返してます。
全体の流れとネタも少し書き溜めて、次の話の用意してます。
小説書くのって大変だね、かなり舐めてたわ。
年末特別上映会が行われた。
事前告知も盛大にやったおかげか、午前と午後の部と二回上映することになった。
入場券も立ち席券を少しだけ用意して、少々無理をして人を入れることにした。
今年は年末の笑い収めってことで、多くのお客さんが来てくれた。
物販も今までで最高記録をたたき出した。
上映時間も特別とあって、いつもより少し長い特別編集の三時間だ。
まあ、笑い疲れるギリギリのラインだろう。
アンナ曰く
「草原の鈴と共に考えた数々の企画、笑い疲れさせてやる…」
と何やら黒い笑顔を見せていた。
草原の鈴の皆さんは
「ようやく俺たちの復讐がなされる。
新しい企画とあって考えるのが難しかったが、面白いとは思うぜ!」
だそうだ。
今回挑む冒険者パーティはAランクの夜風の月。
依頼達成率もよく、草原の鈴とは昔からの付き合いのある仲だそうで、
「期待してる」
と爽やかに笑っていた。
面接風景も上映されており、草原の鈴が黒い笑顔を顔に浮かべていたのは、上映会に携わった人たちだけの秘密だ。
Side Aランクパーティ夜風の月
俺はAランクパーティ夜風の月のリーダーのカイだ。
斥候のベル。
弓使いのウェイス。
魔法使いのビビ。
「はー、すっげえ建物だな。これ、全部貸し切りだってよ」
「今回の報酬金はやばいにゃ!今までの中で、一位だにゃ!」
「その分、すっげー嫌な予感がするんだよなー」
「大丈夫だって!戦闘もないって、事前に説明されてるんだからさ!」
「ん?ここで待て、だってさ」
「命令形で気分がよくないにゃ」
「まあ、指示には従えとは言われてるから、待つしかねえな」
「お、何か来たよー」
「おはようなんダモナー!」
「お、おう」
「可愛いけど、これが噂の案内人?」
「だと思うぜ、語尾が特徴的だろ?」
「不思議な生き物だー!解剖したいー!」
「解剖はやめるんダモナー!今回、この旅館を案内するダモナーなんダモナー!」
「案内してくれるのは助かるな。こんないい施設で粗相したくないしな」
「旅館だってさ、噂に聞く温泉には入れるのかにゃ?」
「とりあえず、荷物を無駄に持ってきちまったから、早くゆっくりしたいぜ」
「ちぇ~」
「この旅館内でのルールを説明するんダモナー!
絶対に笑ったらダメなんダモナー!笑うたびに罰を受けてもらうんダモナー!」
「は?それだけか?」
「随分と簡単なルールにゃ」
「うわあ、嫌な予感がビンビンだぜ」
「笑わなきゃいいんだってさ!楽勝だね!」
「じゃあ、さっそく旅館の中に入るんダモナー!
中に入ったらゲーム開始なんダモナー!」
「よし、気合入れていくぞ!」
「そんな気合入れる必要があるのかにゃ?」
「不安だぜ…」
「いこー!いこー!」
俺たちは案内人に連れられて、旅館内に入る。
もう笑ってはいけないらしい。
物珍しいから、どうしてもあちこち見てしまう。
案内人が土産物屋を紹介してくれる。
「ここがお土産コーナーダモナー!帰りにでも寄っていって欲しいんダモナー!」
「おう、なんかわからんがうまそうなのが揃ってるな」
「ぐっ…」
「どうしたんだよ、ベル?」
「試食もできるんだって!食べてもいい?」
このとき、ベルの異変に気付けなかった俺たちは、まだ危機察知が甘いらしい。
案内人に指さされた先の告知を見て、俺たちは笑ってしまったのだ。
「ついでに、祭りも紹介するんダモナー!
この周辺で有名な狩り職人さんによる解体ショーなんダモナー!」
「ぶはっ!はははっ!」
「んぐっ!」
「はははっ、こんなん卑怯だろ!」
「ぶふぅっ!食べてる最中にダメだってば、こんなの!」
『デデドン!カイ・ウェイス・ビビ、罰ゲーム!』
「ベル以外が笑ってしまったのか…」
「んふっ」
「おい、ベルも笑ってんぞ!」
「もう判定外みたい。でも、罰って何されるんだろう?」
笑ってしまった俺たちの下に現れたのは、黒い【鬼】だった。
こいつが噂の…
だが、聞いていた話と違う。胸元に罰の内容が書かれていない。
奴の手元には、少し長めの乗馬鞭の先に幅広の一見柔らかそうな板がついていた。
俺たちは【鬼】たちに四つん這いにされた。
おい、まさか…
旅館に響き渡る鞭の音。
うっすらと聞こえる笑い声、この声は草原の鈴たちか?
「いってええええ!」
「んぐっ、ふぅ…」
「ちょっ、当たっちゃダメなとこに当たった…」
「んひいいいいん!」
「どうしたんダモナー?まだ入り口近くなんダモナー?」
「どうしたもこうしたもねえよ!なんだあの変な恰好したギルマスの告知!」
「んぶふっ」
「真面目な顔が逆に笑えてくる…」
「ちょっとー!ベルだけ見逃しすぎじゃない!?」
俺たちは文句を言いながらも戦慄した。
まだ旅館に入って間もないのだ、なんならほぼ入り口である。
この調子で笑っちゃいけないとか無理だろ。
尻が壊れる。
その後は特に何もなく、部屋に案内された。
荷物も降ろし、リラックスした格好の『浴衣』に着替える。
これいいな、持ち帰れないかな?
部屋でくつろいでいると、温泉の前に一汗流しませんか?
と機械人形のドールさんが案内をしてくれる。
荷物は持たなくてもいいが、小銭は持って欲しいと言われた。
不思議な顔をしつつ、案内に従い、ついていく。
俺たちが連れてこられたのは、旅館内にある『ゲームコーナー』という場所だ。
ふむ、身体を動かす遊び場みたいなもんかな?
先ほどのような罠がないかと、あちこちを確認していると…
小さな女の子が腰にぶつかってくる。
「おにいちゃん、わたしとあそんで?」
「お、おう?なにであそびたいんだ?」
俺は年下には弱い。特に女の子には、だ。泣かれるとなると最悪だ。
女の子は指を差し、遊ぶものを指定してくる。
「あれしよ、あれ!『エアホッケー』!」
「兄ちゃん、初めてだからルールを説明してくれるか?」
「あのね、お金を入れると出てくる丸い薄い板をね!
このパッドで弾いて、相手の陣地にあるこの穴の中に入れるの!
十五点入れたら勝ちなの!」
少女のつたない説明に笑いながら、勝負ごととあって俺は真剣に遊ぶことにした。
相手の少女の正面に立ち、銅貨一枚を入れる。
ここで悲壮感漂う音楽が流れる。
な、なんだ!?
少女に光が上から照らされ、少女が俯いているせいで顔が暗く見えてしまう。
少女のつぶやきがこの場にいる俺たち全員に響いて聞こえる。
『日帰りだけど、旅行に行こうかって言ってくれたお母さん。
きっと無理をしている。わかるんだ…
お母さん、朝早くに出て、いつも夜遅くに帰ってくるんだもん。
いつも家に独りぼっちなわたしのために、この旅行を計画してくれたんだ。
だから、お母さんのお手伝いをこの日のために毎日したんだ。
頑張って貯めた銅貨だから、いっぱい楽しみたいな…』
少女のつぶやきが終わり、音楽も変な光も消える。
すっげえやりづらい…
仲間からの視線も厳しい。
だが、俺は決めたんだ。真剣に戦うと。
少女に先ほどの雰囲気はなく、元気よく、いくよー!
と掛け声が聞こえ、板を弾いてくる。
板の速度は遅い…
これくらいならっ!
「ふんっ!」
「きゃっ」
「すまんな、嬢ちゃん。勝負の世界は非情なんだ」
このとき、後ろの仲間たちの声が急に途切れたことに、違和感を感じなかった俺は冒険者失格なんだろう。
「うぅ~、まだ頑張れるもん」
「さあ、来な!」
零対八と俺が優勢。
少女は涙目だ。
ここで先ほどの音楽が流れ、光が少女を照らす。
先ほどと同じく、少女の顔は俯いていて、よく見えない。
またつぶやきが響く…
『お母さんが一生懸命働いたお金を、お手伝いなんて言葉でもらうわたし。
いっぱい遊んできなさいって笑って送り出してくれたお母さん。
銅貨一枚じゃ、遊べる程度もわかっているはずなのに、『いっぱい』って。
なんて言って帰ればいいんだろう…
このまま負けて、『楽しかったよ!』ってお母さんに嘘をつくの?
無理だよ、絶対泣いちゃうよ…
信じて送り出してくれたお母さんが悲しむ姿を、わたしは見たくないよ…』
音楽が止まり、光も消えた。
この場に聞こえるのは、俺の仲間たちの罵声と少女のすすり泣く声だ。
や、やりづれえ…
「ちょっと!リーダーなにしてるにゃ!
そんな子供相手に、なに真剣にやってるにゃ!」
「さすがにそれはないと思うぜ~。
いくらなんでも、それは、ない!」
「可哀そうすぎるよ、ぐすっ」
このとき、俺から見えない位置で、案内人のダモナーが
「あなた方のリーダーが点数を入れるたびに、厳しい罰をあなたたちに与える」
という看板を持っていたのを俺は見落としていた。
俺は、勝負は真剣にと思っていたが、俺が間違っていたのか?
そうか…
なにも、こんなか弱い女の子に本気を出す必要なんてないよな?
と俺は考えていた。
「よし、嬢ちゃん!ハンデだ!
俺は利き手じゃない方の手で戦ってやるよ!」
「ほんと!?おにいちゃん!!」
「ああ、嘘はつかねえ」
まあ、上位冒険者になると、利き手なんて関係ないんだがなと思ってしまう。
先ほどよりいい勝負をするも、少女のミスで自陣の穴に入れてしまう。
「あちゃ~、自陣の穴に入れちまったか。大丈夫だ、次だ、次!」
「うぅっ、うぅっ…」
少女がついに本格的に泣き始める。
「こら~!リーダー!なに泣かせてるんだにゃ!」
「さすがにドン引きだぜ…」
「小さくても女性ですよ?
もっと優しくすることは出来ないのですか?」
仲間たちからの厳しい視線。
冷たい言葉を背中に受けて、俺はこの場に立つ。
た、頼む!代わってくれ!!
そんな気持ちも伝わらず、少女が板を弾いてくる。
「こんどこそ!」
「くっ!」
「やった、入った!」
「よく頑張ったにゃ、お嬢ちゃん!」
「まだ逆転できるぞ、頑張れ!」
「お嬢さん、最後まで諦めないで!」
ガコンっ!
と、いい音を立てて、俺の陣地の穴に板が落ちる。
これでようやく少女に初めて点が入り、一対九となった。
ちくしょう、好き勝手言いやがって、勝とうと思えば簡単に勝てる。
だが、仲間の視線や言葉は冷たいし、少女には悪い。
気分が大変よろしくない。
そんな中、ニヤニヤとした案内人のダモナーが看板を俺にだけ見えるように持つ。
書いている内容は…
『ゲーム終了後、あなたが点を入れられた数だけ厳しい罰を執行』
なんて野郎だ、これが噂の恐怖の案内人か。
俺の罰を減らすためには、点を入れて勝つしかない。
だが、そんなことをするとパーティ解散もあり得るほどの状況に陥る。
どうすればいいんだ?どうすればいいんだ?と焦り、混乱する頭。
このゲームは、十五点取った方が勝つ。
つまり、俺は十五回も罰を受けないといけない。
俺は、俺は…
『ビビーッ!カウント、十五対九!ゲーム終了!!』
機械音が聞こえる。俺は燃え尽きていた…
そんな俺に
「遊んでくれてありがとう、お兄ちゃん!」
とニヤニヤした少女が目の前にいた。
ああ、女はいくつであっても怖えな。
あれが全部『演技』なのか?どこからどこまでが『演技』だったんだ?
霞む目の前、俺は泣いているのだろうか?
そんな俺の前に、無慈悲に立つ筋力がありそうな大きな【鬼】。
手には東洋の練習剣『バンブーブレード』。
練習用だから当たっても痛くないとは聞く。
だが、いくらなんでもこの【鬼】に対して、その『バンブーブレード』は凶悪だ。
俺はきっちりと十五回分、尻を叩かれた。
「ああああああああ!」
「いやあ、リーダーが子供相手に大人げないことをするとは思わなかったにゃ」
「そうだよな。そのせいで無駄に俺たち九回もあの【鬼】に殴られたんだぜ?」
「さっさと負けてあげるべきだったんです」
そんな会話が陰でされているとは俺は思わなかった。
ちくしょう。
尻が、痛え!!




