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【本編完結】異世界男の娘【連載版】  作者: 物部K
成長~入学準備

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弟と乳母との交流、アレクの相談

真面目な話を書くと、ふざけた話を書きたくなる。

話が進まないので抑えてはいるけど、いずれ決壊すると思います。

今日は色々と落ち着き、俺がするべき仕事も勉強もない。

ようやく兄弟の交流ができると思い、コルネリウスが寝ている部屋に向かう。


母上の私室では、王妃教育ということでティナ嬢が学びに来ている。

どうやら簡単な仕事からだが、そちらも手伝わされているようだ。

大変だろうが、アレクのためにぜひ頑張ってほしい。

そういうわけで、コルネリウス専用の部屋に移動する。




コルネリウスの部屋を静かにノックをする。

乳母であるメルスが対応してくれるが、口元に指を当てて注意を促す。


「そろそろ起きるでしょうが、静かにしてくださいませ?」

「わかりましたわ」


コルネリウスの下に向かう前に、自身に浄化の魔法を使っておく。

外からの菌に赤ん坊は弱いのだ。魔法を使って殺菌することは大事だ。


ただ、少々魔力がドパッと出てしまい、部屋中を殺菌してしまったようだ。

ちゃんと意識しないと、俺にはまだ繊細な魔力操作はできそうにない。

部屋中に魔力が飛び、メルスがジト目を向けてくる。ご、ごめんて。


「本当に注意してくださいませ?」とメルスに言われながらも、

ゆっくりとベッドに近づいた。

コルネリウスはまだすやすやと寝ているようだった。

俺がホッとしたのも束の間、気配に気づいたようだ。

コルネリウスが目をパチリと覚ます。


宝石を見つけたかのような天使の笑顔を浮かべるコルネリウス。

俺も赤ん坊には弱いようだ。

だが、言葉が通じない赤ん坊は、時に乱暴な一面も見せる。

ベッドを上から覗いていた俺の髪を鷲掴みにして引っ張ったのだ。



「あーだだだだ!!」

「ディーネ様!?」

「きゃっきゃっ♪」



コルネリウスは喜んでいるようだが、俺はとても痛い!

その手を放してくれませんかねえ!?

メルスの手により、俺の髪は救われた。禿げるかと思ったぞ。


その後、上から覗く際の注意をされ、メルスの手により髪を結われた。

この程度のことで、俺は弟との交流を諦めない。




本格的に目覚めたコルネリウスを抱くことに成功する。

地べたに置くのはよくないので、クッションの上に乗せ、俺と手をつなぐ。

以前から考えていた魔力トレーニングを施すのだ。魔力の英才教育だ。


コルネリウスは最初はニコニコと笑っていた。

だが、俺からの魔力を感じると不思議そうな顔をする。

どうやらくすぐったいようで、きゃっきゃと笑っている。

練習した俺の繊細な魔力操作で未来の英雄を作りだすのだ!


しばらくきゃっきゃと笑っていたコルネリウスだった。

笑い疲れたのか、飽きたのか不貞腐れた顔をしだした。

ここまでのようだなと判断し、魔力トレーニングをやめる。



抱き上げて、ベッドに戻す。

不安そうな顔をするコルネリウスのためにガラガラを取り出し、振ってあげる。

音に反応して顔を左右に動かすのが可愛い。


そして、うつらうつらとし始めて、ガラガラの音を嫌がりだす。

メルスがコルネリウスを抱き上げ、上下左右に揺らし、寝かしつける。

その手際は流石乳母の物だと感心した。

今日はもう退室することを身振りで伝え、コルネリウスが眠る部屋を出る。






まだ今日は時間に余裕があるなーなんて考えていると、アレクと出くわす。

アレクは訓練所に向かうところだったらしい。


アレクは何やら浮かない顔をして、

「一緒に訓練しないか?」

と声をかけてきた。


仕方がないので、アレクの訓練に付き合うことにする。




今日のアレクは荒れていた。

俺が土魔法で作る的にひたすらに魔法を当てるだけの訓練をする。

アレクが肩で息をし始めたので、一旦休憩にしようと提案する。




「はあ、はあ、ディーネはすごいね。

これだけの的を作っても、まったく疲れていないだなんて」


「私は地面の土を利用して的を作っているからですわ。

お兄様は無から有を生み出すように、魔法を使うから疲れるのです」


「そういうことか」


「そうですわね。お兄様?空気中の水分を扱ってみてくださいませ」


「空気中?」


「ええ。空気にはたくさんの成分が含まれています。

燃やす力である酸素などですわね。

私も詳しくないので全部の要素は言えませんが、参考になると思います。

空気中に含まれる水分子。いえ、極小の水の塊ですね。

それを集めてみてくださいませ」


「うーむ、想像しづらいぞ?」


「そうですね。

ポットのお茶を放置すると、蓋に水がつくのを見たことがありますか?」


「ああ、昔に悪戯心でポットの蓋を開いて怒られたな。

たしかに、あのときに手が濡れたな」


「お茶が気化、蒸気となり、その水分が空気より軽いために蓋に付着するのです。

正確には違うと言われそうですが、そのようなものだと思ってくださいまし。

私も詳しくありません」


「なるほど、空気中の極小の水…」




地面に座っているアレクが、手のひらを上に向け集中し始める。

俺のなんちゃって科学話で理解できたのかなと、とても不安である。

だが、空気中に水があると理解できればいいだろう。


アレクが周囲に渦巻くようにして、魔力を動かしているのがわかる。

しばらく見守っていると、魔力の渦の中心である手の上に水球ができる。



「ふう、まだ水を集める工程の見直しの必要はあるが、水球はできたな」

「おめでとうございます、お兄様」

「ありがとう、ディーネ」



新しい技術を学び、喜んでいたアレクだったが、それでも浮かない顔をする。

これは本格的に相談に乗るべきだなと判断し、声をかける。



「お兄様?今日はどうしたのですか?

いつものお兄様らしくないというか…

何か不安や焦りを感じているように見えるのですが?」


「不安や焦り、か。たしかにそうかもしれない」


「私でよければ相談に乗りますよ?

前世も合わせれば、お兄様よりも年上なんですよ?」


「ふふっ、そうだな。年上のディーネに相談しようかな?」



話してくれた内容は、アレクよりも魔力操作がうまいと思われるティナ嬢が婚約者候補になったことだ。

アレクは女性に守られる自分が許せないようだ。

そして、魔法学園の成績でティナ嬢に負けてしまうのではないかと不安になって、焦りのままに新しい力を求めた。


アレクが男尊女卑の思考を持っていることに驚いた。

その思考はとても危険なものなので、早々に崩そうと思う。

ティナ嬢との仲を取り持つように、俺はアレクを叱咤する。



「お兄様?私の意見を言わせてもらえば、まず、今のお兄様は嫌いです」


「ディーネ?」


「ティナ様に力で守られるからどうというのですか?

ティナ様に成績で負けるからどうというのですか?」


「だが、男たるもの…」


「男だろうが女だろうが関係ありません!

自分にはこんないい女がいるんだぞ、と自慢する気持ちでいればよいのです!


それにお兄様だって、ただ守られているだけの男ではないでしょう?

力はたとえティナ様が上でも、権謀術数はお兄様のが上でしょう?」


「ディーネが僕をどう思っているのかが分かった気がするが…

たしかにその通りだ。

僕だって、ただ守られているわけじゃない。僕には僕なりの守り方がある。

彼女がその力を発揮できるように、場を整えることだってできるんだ」


「お兄様が今すべきことは歩み寄り、相互理解をすることです。

それに、お兄様が力で負けているとは言っても、ごくわずかだと思いますよ?

周囲に追随を許さないお二人に誰も文句なんて言えませんよ」


「そう、だな。僕の瞳が濁っていたようだ。

ありがとう、ディーネ。


今度、僕からティナ嬢にお茶をしないかと誘ってみるよ。

相互理解のために、歩み寄るために」



アレクの顔は先ほどまでの思い悩んでいたものではなかった。

自分なりの答えを出し、向き合うことを決めたようだ。


だが、意外とアレクは女性関係に弱いようだった。

ティナ嬢とのお茶会になぜか俺も同席している。



「ごきげんよう、ティナ様」


「ごきげんよう、ディーネ様。

アレク様?大丈夫ですか?身体が震えているようですが…」


「だ、大丈夫だ。心配してくれてありがとう、ティナ嬢」


「?」


「あー、ティナ様とのお茶会に緊張しているのですよ。

だから、私も同席することになっているのです」



苦笑いしながら、アレクの心境を暴露する。

アレクはまるで裏切られたかのような顔をこちらに向ける。

ティナ嬢も目を丸くしているが、落ち着いたようで、口を開く。



「わ、私も、婚約者となるアレク様とのお茶会には緊張しています。

手紙にも、相互理解と歩み寄りたいと書かれていたので」


「私の言葉、まんまじゃないですか、お兄様!

もっと雰囲気のある言葉を書けなかったのですか?」


「でぃ、ディーネ!なにもそこまで暴露しなくてもいいじゃないか!」


「私は昔から決めていたのですよ。いつかこのような時がきたらやり返すと」


「僕が何をしたというのだ!?」


「ふ、ふふっ。あ、失礼しました。お二人のやりとりが面白かったもので」


「お兄様、笑われていますよ?」


「誰のせいだ!誰の!」


「お二人とは末永くお付き合いしていきたいと、改めて思えましたわ。

ここなら素の自分でいられると確証をいただけました」


「よかったですわね、お兄様。お嫁さん確保ですわよ」


「ディーネ!からかうな!!」


「アレク様は、私では、ご不満ですか?」


「あーあ、泣かせたー。不安にさせたー。これはお母様に報告案件ですよ?」


「なっ!?私はティナ嬢に不満などない!

ティナ嬢となら、伴侶として!ともに歩める自信があるっ!!」


「あ、アレク様…」


「その意気ですよ、お兄様。そうですね、あとはお二人でごゆっくり。

せめて、互いに名前を呼び捨てできるようになるといいですわね」


「ディーネ様!?」


「そ、それくらいできるさ!」



俺はあとは若い者に任せる形で席を外す。

二人でいちゃいちゃしていればいいのだ。




仲睦まじい二人の姿を目に収め、俺は俺でこの世界での生き方を考える。

俺の知識はこの世界では異質だ。

子孫を残しても、子孫にその異質さはない。


周囲の期待を裏切ってしまう子孫のことを考える。

俺は子孫に恨まれるんだろうなと考え、いつこの国を離れようかと思案する。



アレクには、俺は予備だと言われた。

だが、今はコルネリウスがいる。

コルネリウスには悪いが俺の代わりになってもらおう。


父上や母上、それにアレクとコルネリウス。

未来のアレクのお嫁さんとなるティナ嬢。

みんなにはすまないと思うが、俺はいつか必ずこの国を出る。


その時には、アカネにでも匿ってもらおうかななんて甘い考えをする。

とりあえず、国には関わらないにしよう。なるべく仕事は任せてしまおう。

俺はそう心に決めて、自室に戻る。

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