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【本編完結】異世界男の娘【連載版】  作者: 物部K
成長~入学準備

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スラム街の顔役との顔合わせ

しばらくの間は問題が発生していないかと毎日のようにあの建物に向かった。

スラム街の住人の様子を見るためだ。

アレクは、文官のユースの仕事の山を一緒になって崩しているようだ。



商人ギルドから来た人員はかなり優秀なようで、しっかりと仕事をしてくれる。

今の体制じゃダメだと、ダメ出しもしてくれた。

書類の分類整理の仕方から管理まで、魔石の管理方法などを提案してくれる。


彼ら曰く「よくこの体制で今まで仕事が回っていましたね」とのことだ。

本当にすまん。

彼らも待遇のよい職場だからこそ、この状態は見過ごせないようだ。



警備部隊は、新たに加わった黄金の爪のメンバーを中心に動いているようだ。

休みの順番もしっかりとして、万全の体制で警備を行っている。

警備する者、建物の中で休む者、自宅で休む者と分かれているそうだ。


第二陣の上映会が行われ、その冒険者たちも今はこの警備に加わっている。

黄金の爪のリーダーのジョニーが、俺に声をかけて相談してきたのだ。

俺はすぐに許可を出した。

いがみ合わなければ問題ないとも伝えた。遺恨がなければいいのだ。



魔石班は、休憩時間をしっかりと設け、疲れたら休憩するようにしている。

もちろん、体調が悪い者には休みを与え、休息をとってもらっている。


人数も増えてきたため、一部の者にはスラム街の掃除をするように言っている。

彼らには誰でも使える生活魔法の浄化の魔法を教えている。

人海戦術でスラム街を掃除してもらう。



スラム街の綺麗になったところから、建物の不備を確認し始めた。

そこに住んでいる住民の許可を取り、大工たちに修理してもらう。

費用は『黄金商会』から出ている。


俺も出そうとはするのだが、アカネが固辞するのだ。

「アンタはしばらく運営に集中しなさい、お金のことはいいから」と。

正直助かるが、あとが怖いなと思っている。




今は大工たちと老朽化が激しい家の前でどう修繕するかを話している。

すると、この世界で初めて見る獣人の男がやってくる。

かなり威圧的な雰囲気を放って、大工たちが怯えて、俺の後ろに隠れる。


おいおい、お前ら。

こんな女の子の後ろに隠れるなんて情けなくはないのか?

と思っていると、獣人の男が鼻で笑う。



「ふん、腰抜けどもが。そんな女児の後ろに隠れて恥ずかしくないのか?」


「なんだと、てめえ!」


「なんのようだ!」


「お前たちこそ、こんなところに何の用だ。

まさか慈善事業ってわけでもないんだろ?ええ?」


「なっ!俺たちは依頼されて建物を修繕しているんだぞ!」


「ふん、勝手なことを。

今まで見向きもしなかったくせに、金を貰ったら動く。金の亡者め」


「なんだと、この野郎!」


「事実だろう?」



こいつ、もしかして、このスラム街の顔役って奴か?

じゃあ、ちゃんと挨拶しないとな。俺の印象は最悪だろうしな。



「お待ちなさい」


「なんだア?」


「お嬢様?」




「あなたはこのスラム街の顔役ですわね?

私はディーネ。このスラム街の運営を引き受けた者よ」


「ははっ、この国もついに焼きが回ったか!

こんな小さなお嬢ちゃんにスラム街を任せるなんてな!」


「私は名乗ったわ。あなたも名乗るべきじゃないかしら?」


「悪いがな。俺にもメンツってもんがあるんだわ。

お嬢ちゃんみたいな者に簡単に頭を下げるわけにはいかないんだ。

すまんな」


「なるほど?犬らしく屈服でもさせればいいのかしら?」


「ほお?その挑発を受けてもいいが、あとで泣いても知らんぞ?」


「野良犬に私が負けるとでも?そんな軟弱な鍛え方はしていないわよ?」


「いいだろう。力を示して見せな!それがここの流儀だ!!」


「いくわよ!!」



護衛であるヤンが叫び、俺は黙って見ていろと叫ぶ。


「ちょ、お嬢様!?いきなり何をする気っすか!!」

「あなたたちは黙って見ていなさい!」


獣人の彼は余裕があるのか、初手は譲ってくれた。

その考えが甘いことを身体に教えてやるぜ!



「ほら、来いよ」

「舐めないで頂戴!」


「ぐっ!なんて力だ!?だが、この程度っ!」

「甘いですわ!ライト!」



俺は輝度の高い光球を相手の目の前で放つ。

これで、『まずは』目を潰した。

こいつは獣人だ。臭いでまだ動けるだろう。

なら、それも封じる!



「うぐっ、眩しっ!」

「あんまり使いたくはないけど、ポイズンブレス!」


「くっ、臭ぁっ!」

「これで視覚と嗅覚を封じたわ。次は聴覚かしらね?」


「くそっ!」

「サウンドボム!」



俺はこいつの耳元に音響爆弾を投げる。

これで、聴覚も一時的にだが、使い物にはならないだろう。



「誇り高き白狼族を舐めるなあ!!」

「へえ、まだやる気?でも、もうおしまいよ。パラライズ!」


「なんだ、身体が、ぐっ」

「麻痺魔法よ、筋肉が痙攣していると思うわ。無理に動かそうとしても無駄よ」




「俺は、負けるわけには、いかないんだ!!」



へえ、まだ動く気?

そろそろ心を折らないとかな?あんまり無茶をされても困るし。



「そろそろ心を折ってあげるわ。これでどうかしらね、アイスミスト!」

「この程度の寒さで、俺が折れると、思うなよ!」


「まだよ。ブリーズ」

「くそっ、寒さで身体が思うように動かねえ…」


「麻痺に加えて、低体温症よ。

そろそろ負けを認めなければ、身体になんらかの障害が残るわよ?」




男は悩んだようだが、何かを諦めたように瞳を閉じて、負けを認めた。




「俺の、負けだ…」


「いいわ。キュア!ホットブリーズ!しばらくジッとしていなさい」


「俺は負けたんだな」


「ええ。あなたは負けたわ」


「ちくしょう…」


「とりあえず、回復したら、私たちの話を聞いてちょうだい。

あなたにも何か問題があるなら聞かせなさい。

解決できることは解決してあげるわ」


「わかった、俺の名はウーブだ。誇り高き白狼族の生き残りだ」


「白狼族っていうのはよくわからないけど、ウーブね?

あなたには期待しているわ」




こうして、スラム街の顔役ウーブとの顔合わせが終わった。

護衛たちにはものすごく怒られたけど。

その姿を見て、ウーブは困惑しながらも笑っていた。



「それでね、スラム街を縮小、撤去を目指しているの」


「そりゃあ、無理なんじゃないですかねえ、ディーネ様?」


「どうしても?」


「病気で弱っている者、四肢の一部を失った者、障害を抱えている者。

とにかく働くことが出来ない者が、このスラム街に爪弾きにされているのさ」


「なるほど。まずは病気で弱っている人たちの治療ね。

四肢を失ってる人も部位次第で出来る仕事もあるかもしれないわね。

障害を抱えてる人も同じね。出来る仕事があるかもしれない」


「なっ、アンタはこのスラム街のすべての住人を救うつもりか!?」


「なるべく、だけどね。さすがに助けられない人もいるかもしれないわ。

そんな人たちには余生をゆっくりと過ごしてもらうわ」


「現実はちゃんと見えているんだな?」


「ええ、助からない命はあると思っているわ。

それでも救えるのなら救うつもりよ」


「わかった。まずは病人の治療だな?アンタは治せるのか?」


「さっきの魔法を見ていたでしょ?回復魔法も使えるわ」


「よし、病人を集める。出来る限りでいい、治してやってくれ」


「ええ、任せて。病人を集めている間に、臨時の治療院を建てるわ。

それと、余生を過ごすための仮住まいも建てるわ。

そっちはすぐに撤去することになるとは思うけどね」


「土魔法も使えるのか。ああ、頼む。そういう奴らにも施しを与えてくれ」


「じゃあ、行動開始よ!」



ウーブは部下を集めて、病人を集める。

俺は簡易施設としての治療院を建てる。


余生を過ごしてもらう仮施設も建てるが、すぐに撤去することになる。

この施設で過ごす者たちには、地下ダンジョンで過ごしてもらうつもりだ。

アカネには悪いが、最後まで協力してもらおう。



施設を建てているうちに、病人がどんどん運び込まれる。

ウーブの部下に治療院に運ぶように告げ、診察と治療を行う。

ほとんどの人は回復した。

だが、一部の人は治療しても延命にしかならないことを告げる。


そんな彼らは自分の運命を呪わず、素直に受け入れていた。

俺は残りの余生を静かに過ごせるようにと仮施設への案内をした。

ウーブの部下たちが運ぶのも大変だろうと思って、アカネを呼んだ。

車いすを作ってもらい乗ってもらう。介護はドールさんたちだ。


彼らのことを地下に受け入れることがわかったのだろう。

アカネが「施設を作っておくね」と言ってくれた。



病人の治療は終わった。

彼らの仮住まいを適当に建て、住んでもらうことにする。

働ける人には働いてもらうつもりだ。彼らの適性もあとで面接しよう。




次に、四肢の一部を失った人たちを連れてきてもらう。

治療が必要な人には治療を施す。

彼らにも働けるようであれば働いてもらうつもりだ。



「こんな俺たちでも雇ってもらえるのか?」

「ええ。なるべく身体の負担にならないような仕事を考えるわ」

「ありがとう、ありが、とうっ」



彼らは揃って泣いていた。

もう働けないのだと、人生を諦めたように日々を過ごすのはつらかっただろう。

心のケアも必要かもしれないなと思った。

アニマルセラピーではないが、ダモナーたちにでも癒してもらおう。




そして、最後に障害のある者たちだ。

治療で治る人もいれば、心が壊れてしまっている人もいた。

事情を聞くと、胸糞悪い話ばかりだった。


彼らも余生を過ごす施設行きだ。

ダモナーたちやドールたちに彼らの面倒を見てもらうつもりだ。

少しでも笑顔が戻ればいいなと願いながら…




ウーブはすべての人を診てもらった俺に感謝していた。

だが、その表情はまだ暗い。まだ何かあるのかと尋ねる。


事情を聞くと、またしても胸糞悪い話だった。

だが、まだ間に合うかもしれない。

これは父上にも相談しなければならないだろう。



「ウーブ、私は一度城に戻るわ。

その件に関しては、お父様にも相談しなければならなそう」


「わかった、俺はなにをしていればいい?」


「そうね。

仮住まいの方と余生を過ごす施設に介護担当を派遣するわ。

妖精のダモナーと機械人形のドールたちよ。

彼らを出来るだけ手伝ってあげて。


もしかしたら、彼らに当たる人もいるかもしれない。

そういう人は必ず止めて、厳重注意しておいて。

彼らにも心はあるのだと説明してね。


あとは、働ける人達を面接しておいてちょうだい。

どんなことができるかをまとめておいてね。

仕事の割り振りも考えないとだから、忙しくなるわよ?」



俺は今出せる指示を出して、護衛たちを連れて城に向かう。

父上に相談して指示を仰がなければならない。


やるなら徹底的な一斉検挙だ!待っていろよ、奴隷商ども!!

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