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【本編完結】異世界男の娘【連載版】  作者: 物部K
成長~入学準備

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銀版視聴

Side とある商人


今日もよく働いた。うまいこと事が運んでよかったわい。

仕入れも卸値もバランスよく取れて、儲けもそこそこに入る。


俺もいつかは商会を持ってみたいものだな。

あの『黄金商会』には追いつけもしないだろうが。


突然現れた商会。それも背後には王家がついてるという噂だ。

そんな商会が本当に存在するのかと。

それに急に現れただけで、大したものも売れないのではないかと囁かれていた。

だが、あの商会はやり手だった。


どうやら強力な土魔法使いを雇っているのだろう。

地下に劇場を持ち、映写機なるものを使い、上映会を行った。

地上の方でも軽食などを販売しているのだが、これがまたうまいのだ。

上映中に食べきれて、かつ目線を外さずに食える。

これほど優秀な軽食もないだろう。



あの上映会が終わった後に購入した自宅用の映写機と記憶版の銀板。

俺に金版は高かった。

だが、銀板なら無理せずに買えるレベルだったので、こちらを選んだ。

もうじき第二回が上映されるらしいし、振り返るために見ようと思う。

追加映像があるらしいので楽しみだ。




Side 銀板の中の黄金の爪


「はあ、はあ、はあ、今どれくらい走ったと思う?」

「わからないけど、今までの魔獣討伐で走った分くらいは走ったと思うわ」

「どうやって、守ればいいんだ。立ち回りを変えるしかないのか…?」

「もう、疲れた」



俺たちは『ペットボトル』の水を飲みながら、休憩所で休んでいた。

今は休ませてほしいと切実に思いながら【鬼】が現れる箱を見つめる。

ほかの三人も同じように休んでいるだろう。




肩を叩かれた。なんだ?声もかけられないほどに疲れているのか?

振り返った先には全身真っ黒な【鬼】が立っていた。

俺は慌てて周囲を見る。なぜかほかの三人は休憩所から離れていた。


何が起こったかわからない俺を【鬼】は容赦なく引きずっていく。

そして、箱の前に連れていく。

小さなダモナーたちが現れて、俺は仰向けに寝かされる。

【鬼】は俺を見下ろすだけだ。



「そっちを抑えてほしいダモナー!」

「こっちは押さえたんダモナー!」

「な、なにをするんだ!?」



俺は暴れて、拘束を抜けようともがくが、ダモナーたちの力はかなりのものだ。

仕方なく【鬼】の胸に書かれている罰の内容を読む。

『お尻』

なんだ、尻がなんだ。なんなんだ!?


その答えは甲高い声でやってきた。

小さな【鬼】だった。


だが、服装が違う。尻の部分だけ破れているというか、尻が丸見えだ。

まさかとは思うが、そういうことか!?

小さな【鬼】たちが、俺の顔に尻を押し付ける。



「ぬうううう!」



と、これを三人分繰り返された。


小さな【鬼】たちのきゃっきゃと笑う声だけが響いて消える。

大した罰じゃない。だが、とても腹が立つ。

ダモナーたちも罰が終わったことで、拘束を解除してくれる。


俺は仲間に何が起こったのかと、説明を求めることにした。

気まずそうに視線を逸らす仲間たち。

俺は怒らないから言ってみろと、怒るつもりで優しく問いかける。




「お、怒らない?ホントね?

あ、あのね?私が見ていた方向から【鬼】が現れたの」

「静かに移動して来るものだから、俺たちもゆっくりとその場を離れたんだ」

「つまり、リーダーを見捨てた」

「お前らああああ!!」




「言えよ!?俺だって、逃げたいわ!

なに、自分たちだけ助かろうとしているんだよ!」

「ご、ごめんって。あの【鬼】だって悪いのよ?

わざわざ私たちに静かにしていろって、指示を無言で出してきたんだから」

「そうだな。あんなことをされれば、俺たちも従うしかない」

「次からは気を付ける」




くそっ、信用できねえ!

こいつら、罰から逃げるためなら、平気で人を蹴落としてきやがる!

まあ、大した罰じゃなかったんだ。

体力も削られなかったから、今回はよしとしてやる。



『ぷしゅー!』



くそっ、今度は正攻法できやがったか!

今度の罰はなんだ!?

『お尻』

ま、た、か!?

あの程度の罰なら、と余裕を見せたのが悪かったのか、俺はまた捕まった。



「リーダー、今度は私たち悪くないからねー」

「走りが甘かったみたいだからな」

「自然と捕まっていた」

「うるせえ!これくらいの罰なら何度だって受けてやる!!」



さっきと同じように仰向けに寝かされ、ダモナーたちに拘束される。

【鬼】が俺を見下ろしてくる。

だが、さっきと違う気配を醸し出す。


(こいつ、今、笑ったのか…?)


その様子に恐怖を感じた俺。

先ほどと同じ甲高い声が聞こえてきた。

キャッキャと笑いながら、尻を全開にした小さな【鬼】が『二人』やってくる。



「ぬうううう!」



ここで、尻を押し付けられながら、俺は考える。

さっきは『三人』じゃなかったか?なんで『二人』になっているんだ?

その答えはすぐにやってきた。



重い足音、野太い声で「わ~い!」などという声が聞こえてきた。

まさか、そんな、嘘だろ…?


俺は向かってくる足音に視線を向ける。

今までの黒い【鬼】じゃない。

明らかに脂ぎったおっさんが顔を晒し、尻を晒してこちらに向かってくる。



「や、やめろ、わ、悪かった!

手を抜いて走ったのは謝るから、そ、それだけは、ああああああああ!」






「リーダー?だ、大丈夫?

ダモナーちゃんが濡れた布を置いていってくれたわよ?」

「戻ってこい!傷は浅いぞ!!」

「生きて」




俺は虚ろな視線で濡れた布を顔に押し当てる。

みんなが優しい。

「水飲む?」とか言ってくれる。




しばらくの間、俺は真っ白になっていた。




「よし、二度と甘い走りはしない!絶対にだ!!」

「あ、復活したのね」

「その意気だぞ。今ならあいつらに追いつかれることはないだろう」

「がんばれ」




みんなが優しい。さあ、どっからでもかかってこい!



『ぷしゅー!』



来たな!絶対に逃げ切ってやる!

今度の【鬼】はなんだ!?

『お、し、り』

またかよ!?

全力で走った。俺たちは全力で走った。



捕まったのはジュリーだった。

俺は勝ったんだ、生き残ったんだ!

うおおおお!と、つい勝利の雄たけびをあげてしまう。


それが悪かったのかもしれない。

ジュリーが胸元からカードのような板を取り出す。

なんだ、あれは?と思ってるとジュリーは叫んだ。


「罰変更!ジョニー!!」

「なんだ?何を言っている?」

「?」

「ここで使うのは正しい」



【鬼】がジュリーを解放し、俺の方にゆっくり向かってくる。

俺の足はなぜか動かない。

動け、動いてくれ。頼む、今だけでいいんだ。動いてくれええええ!


俺の思いも虚しく、【鬼】は箱の前まで俺を連れていく。

同じようにダモナーが拘束する。


【鬼】がやれやれとでもいうかのように、肩をすくめて俺を見下ろす。


罰が始まる。

今度は最初から野太い「わ~い!」という声とドスドスと重い足音が聞こえる。

さっきと似たようなハゲおやじが三人。その尻を全開にして俺に向かってくる。




俺の目の前が、物理的に真っ黒に染まる。




「はっ!何か悪い夢を見ていた気がする。」

「リーダー、おはよう。大丈夫?濡れた布で顔は拭いてあげたわよ?」

「もう少し休んでいろ。俺たちが警戒しておく」

「はい、お水」




みんなが優しい。

なんでだろ。乾いた笑いと涙が出てくる。

夢を見ていたんだ。

そう、俺は夢を見ていただけだ。

俺はしばらくブツブツとそう呟きながら、膝を抱えた。






Side とある商人


え、えぐい。

この罰を考えた、あの商会えぐい。

ところで、あのとき胸元から出した板はなんだったんだ?

俺は銀板の箱を確認する。説明書のようなものを確認する。


『金版にて、黄金の爪メンバーのジュリーさんとデンさんの入浴映像を確保!

※代わりに罰変更カードを渡しています』


へー、罰変更カードだったのか、って、入浴映像!?

金版だけなのか!?

くそっ、やられた!!


知り合いの商人が

「なんだ、お前?ケチって銀版なんて買って。男なら金版買えよ」

ってニヤニヤしながら言ってきたのは、これのことか!!


あいつにお願いして見せてもらえないかな?

でも、法律で二次上映は禁止されているんだよな。

重罪扱いらしいから、あいつも見せてはくれないだろう。



はあ、金稼いで、次は金版を買おう。

うまい商売しやがるな、『黄金商会』め!

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